第41話 雨の訪問者

1970年のフランス映画です。


チャールズ・ブロンソンという俳優を初めて知ったのは、中学生の頃、「大脱走」を見た時だった。

渋く、男っぽい俳優が、トンネルの土が落ちてくるのを怖がるシーンは、何か不思議な印象とともに私の内に残っている。


次に見たのが「荒野の七人」。そして「さらば友よ」である。独特の、筋肉質で口ひげをはやし、何とも男臭い個性的な俳優だった。


そのブロンソンが、三船敏郎にバッタバッタと投げとばされる「レッド・サン」は、よくこのシーンをブロンソンがオーケーしたものだな、と思ったものだ。


さて、今回の「雨の訪問者」は、そんなブロンソンを初めから念頭において脚本が書かれたというから、なるほど、ブロンソンの魅力満開である。

繰り返すが実に男臭い。渋い。


それに加えて、マルレーヌ・ジョベールという女優さんが何とも可愛らしい。たぶん、ミニスカートが流行だった頃なのだろう。白いミニスカートが何とも男心をくすぐる。


音楽はフランシス・レイ。「男と女」「個人教授」「白い恋人たち」「ある愛の詩」などで有名な、フランス的に洗練された音楽を作ることでよく知られている。


そして監督は「禁じられた遊び」や「太陽がいっぱい」のルネ・クレマンだ。


役者は揃った。さて、どんな物語が展開するのか・・・?



それはそぼ降る雨の日のことだった。

赤いバッグを持った見慣れない男がバスから降り立った。

その男は何かちょっと不気味で、メリー(マルレーヌ・ジョベール)に目をつけているような、不審な印象なのだ。


その夜、パイロットの夫がいない間に、男はメリーをレイプする。

しかしそのあと、メリーはショットガンで男を撃ち殺し、証拠を焼き捨て、死体を海に捨てる。


翌日、友人の結婚式で、メリーはドブスという男(チャールズ・ブロンソン)と知り合う。ドブスはなぜかメリーに起こったこと、メリーが男を殺したことを知っているようで、不気味だ。


どうやらドブスは男が持っていた赤いバッグが目当てのようで、何かにつけメリーにつきまとい、色々問い詰めてくる。


これはサスペンス映画なのだが、なんとなく映画がアクセサリーをしたような、お洒落な感覚がある。くるみをガラスに当ててガラスが割れたら相手のことを愛している、などという遊びがある。

これは「さらば友よ」で、ブロンソンが水を張ったコップにコインを入れる、あの印象的なゲームに通じるものがある。


さらに言えば、私はこの映画を見ながら、話が進むにつれ、このメリーは本当に男にレイプされ、男を殺したのだろうか、あれはメリーの幻想だったのではないか、という不思議な感覚にとらわれた。


勿論事件は実際に起こっている。

最後にドブスはその証拠もつかむ。

しかしなぜかドブスはメリーをつかまえず、自由の身にしてやる。

なんで?と思っていると、ドブスの投げたクルミが、ガラスに当たって割れてしまう、というラストだった。

これは単なるアクセサリーでなく、物語の結末の意味として受け取っていいのではないか、と私は思った。


今回は、アメリッシュさまのリクエストでしたが、ずいぶん時間がかかってしまいまして、本当にごめんなさいでした。

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