第25話 大いなる西部



1958年のアメリカ映画です。


題名の通り、西部の途方もなく大きな大地が舞台になっている。物語のスケールも大きい、大作である。


この作品の根幹をなすテーマは、「真の男らしさとは何か」ということだと思う。


不思議にこの映画、ネットで調べるとストーリーはいくらでも出てくるのだが、そのテーマに触れたものが全く見当たらない。それこそが、この物語の面白さであるにもかかわらず、だ。


この大作のストーリーを長々と書いたところで、さして面白くないだろう。むしろ味気ないだけである。

そこでストーリーの紹介は簡単にして、この映画の面白さやクライマックスについて書こうと思う。


ストーリー


東部で船会社を営んでいたジム(グレゴリー・ペック)は、地元の有力者テリル少佐の1人娘パットと結婚するため、西部にやって来る。


ひそかにパットに思いを寄せている牧童頭のリーチ(チャールトン・ヘストン)は、ジムの到来を快く思わず、むしろ、パットの前で、“東部のやさ男”ジムを打ちのめし、自分の男らしさを誇示するチャンスを狙っている。


この地域一帯は、唯一の貴重な水源地「ビッグ・マディ」の利権を巡って、地元の大地主ルーファスが、テリル少佐と対立していた。


このビッグ・マディは町の女性教師でパットの親友でもあるジュリー(ジーン・シモンズ)が先祖より受け継いで所有していたが、彼女は争いを避けるため、テリル少佐にも、大地主ルーファスにもその利権を譲らず、双方が自由に水源を利用することを許していた。


それでもその水源地の利用を巡って、テリル少佐の勢力と、大地主ルーファスの勢力はしばしば争うのだった。


そんな事情を見て、ジムは両勢力の仲裁を考え、どちらの勢力にも平等に水を分け与えることを条件に、ジュリーと売買契約を交わす。


しかし両勢力の争いは、ジムをも巻き込み、激化していくのだ。


   *   *   *


さて、まずジムが東部からやってきた時、大地主ルーファスのドラ息子率いる一団が、馬車に乗っているジムの帽子を奪い取り、馬で馬車を取り巻いてジムを大いにからかう。


パットは仕返ししてやると怒るが、ジムは平然として、彼らに悪気はない、ちょっと手洗い歓迎をしただけだと取り合わない。


また、パットに想いを寄せる牧童頭のリーチは、事あるごとにパットの前で、ジムと拳を交えるチャンスを作ろうとするし、パットも自分のために男同士が一戦交えるのを悪く思っていないのだが、ジムは、

「ケンカは自分が納得すればいい。人に見せびらかすものではない」

と、リーチを相手にしない。

“男らしさ”を求めるパットは、そんなジムに段々失望を覚える。


逆にビッグ・マディの持ち主ジュリーとは、ジムは次第に気持ちが通い合っていく。


あるひと気のない夜、ジムは牧童頭のリーチの部屋を訪れ、決着をつけよう、と言う。


2人は西部の巨大な大地の中で、殴り合いを始める。簡単に相手を倒せると思っていたリーチは、苦戦するどころか、自分以上にケンカの強いジムに驚きを隠せない。

やがて、ひとしきり殴り合ったあと、

「もし君さえよければ、この辺で終わりにしたいんだがね」

と言うジムに、

「オレはかまわないぜ」

とリーチが応じる。

この頃からリーチも、ジムに一目置くことになる。



一方大地主ルーファスのドラ息子は、ある事から父親に、ビッグ・マディの持ち主ジュリーは、オレに気があるんだ、と言ってしまう。


喜んだルーファスは、ドラ息子にジュリーを我が家に招待するよう命じる。まだ、ビッグ・マディの所有権がジムに移ることを、彼らは知らないのだった。


そんなこんなで、ジュリーは大地主ルーファスの家の人質のようになってしまう。


ジュリーをすでに愛するようになっていたジムは、単身大地主ルーファスの土地へ、そしてその家へ、乗り込もうとする。

そこにいたテリル少佐は何と銃を抜き、勝手な真似はするな、行くと言うなら射殺するぞ、とジムに言う。


ところがジムは深呼吸した後、

「じゃあそうするしかないですねえ」

と、テリル少佐に言い、敵地に単身乗り込む。

テリル少佐が撃とうとするのをリーチが止める。


ジムは大地主ルーファスの土地に入り、見張りが沢山いる中を、ルーファスの家に到着する。

ルーファスが言う。

「これだけ沢山の敵に囲まれ、お前は撃ち殺されていたかもしれないんだぞ。なのになぜここへ来た⁈ なぜだ⁈」

と。

ここで無言のうちに、ジムのジュリーへの想いが示されるのだ。


そしてジュリーにドラ息子が手を上げたため、ドラ息子と取っ組み合いになったジムを見て、ルーファスは2人を止め、2人に決闘を命じる。


一発しか弾丸の入っていない、決闘用の銃をドラ息子とジムに渡し、お互い「1、2、3」の合図で撃つのだ。もし、3、と言う前に銃を発射した方は、自分が容赦なく撃ち殺す、と宣言した。


ドラ息子とジムは離れて向かい合い、互いに銃を構える。

ルーファスが「1、2、」と数える。と、その時、3、と言う前にドラ息子は恐怖に耐えられず発砲し、弾丸は辛くもジムの額をかすめる。

「3だ! 撃て!」とルーファスが叫ぶ。

ジムは落ち着いてドラ息子に狙いを定める。しかしドラ息子は恐怖のあまりその場を逃げ出し、馬車の陰に隠れてしまう。


ジムは銃を下に向け、地面に向かって発泡すると、ぽいと銃を捨てた。


ところがドラ息子は近くにいた手下の銃を奪い取り、ジムを撃とうとする。ついにルーファスは自分の実の息子に向けて銃を撃った。


ルーファスは、

「撃つと言っただろ! 3と言う前に撃ったら俺が撃ち殺すと言っただろ!」

と涙を流す。


ジムはこうしてジュリーを救い出すことに成功した。


2人の前には、広大な西部の土地が開けていた。

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