第13話 モンパルナスの灯



1958年のフランス映画です。


画家モジリアーニの伝記映画で、モジリアーニをジェラール・フィリィップが演じた。

妻の役を「男と女」のアヌーク・エーメが演じたが、この頃のアヌーク・エーメは若くて本当に美しい。


1910年代のモンパルナスが主な舞台で、モジリアーニはすっかり自信を失い、酒におぼれる日々を送っていた。同じアパートに住む画商のスボロウスキーだけが、彼の才能を認めていた。


ある日、モジリアーニは自分が通う絵画の学校で、ジャンヌ(アヌーク・エーメ)を見かけ、好きになってしまう。ジャンヌも美貌のモジリアーニを好きになるが、厳格なジャンヌの父親は、2人の結婚を認めなかった。


再び酒におぼれ、極度に健康を害したモジリアーニを、スボロウスキーは南仏のニースで休養させる。ところがそこへ父親から逃れたジャンヌがやって来て、2人は結ばれる。


2人で海辺を歩き、愛を語るシーンは美しい。


しかしパリに戻って開いた個展は失敗し、彼の絵に興味を示しているというアメリカの多忙な画商を訪ねると、モジリアーニの絵を、商業ポスターに使うか、あるいは香水のラベルにしてもいいと話し、モジリアーニは深い落胆を味わう。

(そうじゃない。私の絵は芸術なんだ、と。※作者注)


妻との生活の糧を得るため、夜ごと町の酒場をさまようモジリアーニ。「画家のモジリアーニです。1枚〇〇フランです」と、自分のデッサンを売り歩くのだ。


そして倒れ、モジリアーニは死んだ。


実は死の商人とでも言うべき画商(リノ・バンチュラ)がいて、彼はモジリアーニは死後、初めて認められるであろう事を見抜いていた。その画商がジャンヌのもとを訪れる。彼女はまだモジリアーニの死を知らない。


画商は部屋に置いてあるモジリアーニの絵を次から次へと物色し、買い占める。

何も知らないジャンヌは「主人も喜びます」と、涙ながらに死の商人に感謝するのであった。


全編を通じてやや暗いが、古き良きパリの市井ムードは捨てがたい。


映画には描かれていないが、ジャンヌは余程モジリアーニを愛していたのだろう。こののち、モジリアーニの後を追って自殺したと聞く。


1人の芸術家の生き様を描いて、静かな感動を呼ぶ、愛すべき1編である。

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