第12話 用心棒



1961年の日本映画です。


当時としては、これぞ娯楽大作、これぞ映画の楽しさ、これぞ映画の醍醐味、という感じではなかったかと想像する。


最初、犬が人の手首をくわえて歩いてくる場面や、主人公が宿場町に入り、あっという間に3人切り捨て、1人は腕がぶっ飛ぶ場面など、黒澤作品以降のもので育った私たちはそれほどショックではないが、当時初めてこの映画を観た観客は、度肝を抜かれたに違いない。


着物に袖を通さずに歩き、いざとなると豹のような見事な動きとアクションを披露する三船敏郎は、実に素晴らしいと思う。


映像も、ワンカットワンカットが考え抜かれていて、どこを切り取っても完璧な『写真』になっている。


そして何より物語が面白い。リメイクされたマカロニウエスタンを先に見ていた私などは極端には感動しなかったが、当時の観客はこの物語に夢中になったことだろう。


私は様々なテレビドラマに触れ、様々なアニメを見、そして色々新しい映画を観て、ある程度成長してから黒澤作品を観た。

だから残念なことに、そのずっと以前から存在した黒澤作品を本当に堪能することが難しい。


黒澤映画を外国からのもらいものだ、などと評する人もいるが、しかし黒澤作品が初めてやってみせたことというのは、実は数知れなくあると私は思う。皆が後から追随しただけなのだ。

現代の私たちは、この点を忘れてはならないと思う。


そしてこれだけ多くの傑作、しかも完成度の高い傑作を世に送り出した監督は、黒澤明をおいて他にいないのではないか。


今さらどんな賞を受賞したかとか、そんな記述は黒澤作品には意味がないだろう。


この「用心棒」も、日本が世界に誇る、黒澤明という巨人の、傑作のひとつである。

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