第5話 ローマの休日



1954年のアメリカ映画です。


これほど有名な名作を、私が語っていいのだろうか、と思う。どなたかファンの方からクレームでも来やしないか?

ちょっと心配だ。


さて、いつの頃からか、小説でも映画でも、なぜこの作品がこんなに売れるんだろうとか、なぜここまでヒットするのだろう、ハテナ?と思う事が増えてきた。

 そういう作品については何も語ることができない。どこがいいのか、よく分からないからである。


これはひとえに、私の感性が時代に追いついていないせいなのだろう。そこにある良さを、感じられなくなったのだろう。


その点、やっぱり『ローマの休日』などは、どこからどう見ても名作だし、ヒットして当たり前だと思ってしまう。

古い人間なんだな、私も。


というのも、世間に出たことのない王女がローマで1日の冒険に出る。これはいかにもありそうでいて、しかしそれまでなかった着想である。これがまず、この映画の第1番目の勝利だと思う。


次に王女にオードリー・ヘップバーンという女優を起用した。まさに王女さまにぴったりで、その純粋で清楚な印象に見る者全てが好感を持ってしまう。

ここに第2番目の勝利が生まれた。


そして相手役の新聞記者、ここに背の高いグレゴリー・ペックという紳士を抜擢した。この役も、彼にピッタリだった。

これが『ローマの休日』第3番目の勝利。


そして1日の王女の冒険の楽しさ。また、それをここぞとばかりにカメラマンの友人がフィルムにおさめたにもかかわらず、それを最後に王女に返し、3人には、特に王女と新聞記者の2人の間には、一度のキスだけで、淡い思いだけが残るというラストへのもっていき方。

これでこの作品は完全に勝利した。


これだけ全てが揃った作品が売れないわけがない。


現代のヒット作やベストセラーにも、何か、そうした勝利の要素があるはずだと思うのだけど、ここまでその要素が揃った作品というのは随分お目にかかっていない。

やはり私の感性が鈍ったのか。


でも、それはそれでいい。私にもこうした昔の名作に心底感動した年代もあったのだから。

それで充分さ。

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