第21話 本当に来たんですね

「本当に来たんですね」

 恵比寿家のドアが開くと、顔を覗かせてきたみゆりはぽつりと口にした。ポニーテールの髪を下ろしており、今日はずっと引きこもる気満々なんだなと思わせる。

「昼は食べたのか?」

「適当に済ませたよ」

 みゆりは答えると、ドアを開けて、直人や僕を中へ招き入れる。

 上はパーカーに下はショートパンツという姿のみゆり。ついているフードは被っていなかった。直人が靴を脱ぐ間に見ていると、みゆりはじろりと視線を動かしてくる。

「何ですか?」

「いや、その、家ではそういう格好なんだなって」

「何か文句でもあるんですか?」

「いや、何でもないけど」

「そうですか」

 みゆりは声をこぼすと、奥にあるリビングの方へ足を進ませていく。

 直人が脱ぎ終え、僕が同じことをしようとすると、「珍しいな」と直人が口にする。

「何が?」

「わざわざ出迎えることがさ」

「そういえば、前は部屋にいたままだったね」

「ああ、先週早退した時か。あれはしょうがないだろうな。完全に寝込んでたみたいだしさ。けどさ、今日みたいに学校を休んでる時でも、起きてても、部屋に引きこもってるはずなんだけどな」

「なるほど」

「よほど、透に会いたかったのかもな」

「いや、それは……」

「冗談だ」

 直人は笑みをこぼすと、みゆりの後を追うように、奥へ進んでいく。

 僕は通学靴を脱ぐと、遅れてリビングへ向かった。

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