第14話 とりあえずは、ネットで投稿とかしてみようかなって

「小説、どうだ?」

「まだ、何も」

「そうか。大変そうだな」

 昼休み、直人は言うなり、弁当のご飯を箸で口に運ぶ。

 教室にある僕の席で、直人は向かい合って座っていた。

「そういえばさ、みゆりがどういう本を読んでるのか、話してなかったな」

「何か好きなジャンルでも?」

「そうだな、どちらかと言えば、ラノベとかだな」

「そうなんだ」

「見た限りじゃ、異世界転生ものから学園ラブコメものまで、けっこう手広く読んでるっぽいな」

「って、直人、そういうの詳しいんだね」

「まあ、俺も読んでるからな」

「そうなの?」

 僕は意外な事実に驚き、掴んでいた卵焼きを箸から落としそうになった。

「何だ? そんなに意外か?」

「いや、直人がそういうの読んでるイメージなかったから」

「といっても最近だけどな。それに、自分が買ってるとかじゃなくてさ、みゆりのを借りたりしてさ」

「そういうことか……」

「みゆりはちょくちょく買ってるみたいだけどな」

 声をこぼす直人は唐揚げを箸でかじる。

「何なら、みゆりから借りてみるか?」

「えっ? そんなことできるの?」

「別に小説の参考とかって理由を言えば、文句言わずに貸してくれるだろ」

「そこは喜んでとかじゃないんだね」

「まあな。みゆりはもしかしたら、小説を書く趣味とかウソじゃないかとかうっすらと思ってるかもしれないしな」

「そうなんだ……」

「ああ。考えたらさ、趣味なのに、今まで書き上げた作品を出すとか、直人言わなかっただろ?」

「まあ、うん」

「そこらへんで、みゆりは疑ってるかもしれないしな。まあ、俺はそのあたりで、ウソだろうなって思ったけどな」

 直人の言葉に、僕は乾いた笑いをこぼすしかなかった。

「後さ、もしかしたら、みゆりは書いてるかもしれないな」

「小説を?」

「ああ。ジャンルとかはわからないけどさ。本人から直接聞いたわけじゃないけどな」

「何ていうか、僕はみゆりのことをあまり知らなかったんだな」

「そこは別に落ち込むことはないと思うけどな。俺だってさ、直人のことをすべて知ってるわけじゃないしさ」

「まあ、そうだね」

 僕は言うと、弁当の残りを食べ終える。空になった容器を包んでいた布でまとめ、席のそばに置いてある学校の鞄にしまう。

「とりあえずは、ネットで投稿とかしてみようかなって」

「投稿サイトか。あれは本当に色々あるよな。あの中でよければ、本になったりするしな」

「そうなんだ」

「とりあえずは何でもいいから書いてみればってところなんだろうな」

「だね」

「後でみゆりにSNSで聞いてみるわ。何かいい本ないかってさ」

「わかった」

「まあ、俺も少し興味あるからな。直人が書いた小説がどういうものになるかとかさ」

 直人は笑みを浮かべると、いつの間にか食べ終えていた弁当を手に、立ち上がる。

「まあ、何事も経験ってことだろうな」

「それは適当な言葉だよね」

「バレたか」

「バレバレだって」

 僕が突っ込むと、直人は「まあ、頑張れってことだ」と言い残し、場から去っていく。

「とりあえず、何か書いてみるか……」

 僕は言うと同時、スマホを取り出し、メモアプリで何か書いてみることにした。

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