第13話 小説は順調そうですか?

「おはようございます。小説は順調そうですか?」

 翌日の朝、みゆりは会うなり、僕に声をかけてきた。今まではぶっきらぼうに挨拶をされるだけだったのに。

 通学路の住宅街を抜ける舗道を歩きつつ、僕は、「まあ、何とか」と答える。そばにいた直人は黙ったまま、僕の肩を軽く叩いてきた。

「そうですか。内容、楽しみにしています」

「みゆり。あまり、そういうこと言い過ぎるのはプレッシャーがかかるだろ?」

「いいんだよ、お兄ちゃん。これくらいのプレッシャーがあった方が」

 みゆりは場でくるりと体を回し、セーラー服のスカートをはためかせた。

「それに、お兄ちゃんも早く読みたいでしょ?」

「まあ、興味がないと言ったら、ウソになるけどな」

「というわけで、お兄ちゃんも楽しみにしてますので、よろしくお願いします」

 みゆりはお辞儀をすると、直人の横へ駆け寄り、昨日観た映画の話を始める。

 僕は恵比寿兄妹の中に入らず、小説をどうしようかという悩みで頭が一杯だった。

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