第9話 今度の日曜さ、映画行かないか?

「今度の日曜さ、映画行かないか?」

 翌日の昼休み、直人はクリームパンを齧りつつ、聞いてきた。

 一方の僕は焼きそばパンを手にしている。

 今いる校舎の非常階段はそよ風が適度に当たり、心地いい。

「唐突だね」

「みゆりから言われてさ」

「えっ? だって、朝、一緒にいた時、そんなこと言ってたっけ?」

「後でSNSでメッセしてきた」

「恥ずかしがり屋?」

「いや、後でふと映画を観たくなったんだろうと思うけどな」

 直人は非常階段の手すりに寄りかかり、口にする。

 みゆりは朝、何事もなかったかのように僕と直人とともに、学校へ向かっていった。

「それで、何観に行きたいの、みゆりは」

「『天気の名は』」

「ああ、それって、今人気の」

「俺も興味あるからさ。で、どうだ?」

 直人は視線を向けてくるも、僕は即答ができず、「うーん」と悩ましい態度を示す。

「みゆりと一緒だからか?」

「いや、そういうわけじゃなくて、何で、アニメ映画何だろうって」

「そこ、悩むところか?」

「何となく」

「何となくなら、あまり気にしなくてもいいと思うけどな」

 直人の言葉に、僕はうなずきそうになるも、ただ黙るだけだった。

「不満か?」

「何が?」

「照り焼きチキンパンを奢ってもらえなかったことをさ」

「別に不満じゃないよ。というより、相変わらず人気だね」

「これはフライングしてでも行かないとダメだな」

 直人は最後に残っていたクリームパンを食べ終えた。で、別に買っておいた紙パックのコーヒー牛乳をストローで飲み始める。

「まあ、無理にとは言わないからさ」

「とりあえず、考えとく」

 僕は言うなり、スマホを取り出して、時間を潰す。といっても、ソシャゲをやるわけでもなく、ただ、ネットのまとめサイトを見るだけだ。

 みゆりは昨日みたいにまた早退をしないだろうか。僕は内心、気がかりだった。

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