第6話 帰ってもいいかな……
放課後。
僕は直人と並んで、学校を出るなり、通学路の住宅街を抜ける舗道を歩いていた。
「で、とりあえずは、俺の家に入って、みゆりと話をしてみるってことでいいんだな?」
「そう、だね」
首を縦に振る僕。
「ってことでさ、みゆりにはSNSで先に透が来ることを伝えておいた」
「えっ?」
「すぐ反応があってさ、『何で、透先輩が来るんですか?』って返事があった」
「やっぱり、そういう反応なんだ……」
想定をしていたとはいえ、実際になると、僕はがっくりと肩を落としたくなった。
「まあ、そう落ち込むなって」
「帰ってもいいかな……」
「さすがにそれは諦めるのは早すぎだろ」
直人は言うなり、僕の肩を軽く叩く。
「まあ、俺もいるからさ。何かしらのフォローはするしさ」
「何だか、僕頼みみたいな感じだね」
「実質それに近いからな。みゆりだってさ、なんだかんだで、透と話はするしな」
「変に期待されると、すごいプレッシャーだね、これ」
「何か悪いな」
「まあ、そう謝られても、うん。結局は僕がやるかどうかだから」
僕は足を止めると、場で深呼吸をしてみた。一度、落ち着いてみようということで。
「とりあえずは、みゆりのところへ向かうよ。帰るのは一旦なしで」
「今度、また何か奢るからさ」
「それなら、昼休みにすぐ売り切れになる購買部の照り焼きチキンパンがいいんだけど」
「あれか……。透は食べたことあるのか?」
「いや、ない。だって、授業終わってからダッシュしても、絶対に買えないんだよね、あれ。買えるのはフライングしないとダメそうだし」
「確かにな。何回かチャレンジしたことはあるけどさ、ダメだな。っていうより、いつも誰か買い占めてるんじゃないかって疑うくらいだしな」
「僕もそう思ってた」
「それを奢ってほしいっていうのは、結構ハードルが高いな」
「嫌なら、別のものにするけど?」
「いや、ここはあえてそれにするわ。それを奢るのをやめるのは、何だか不戦敗って気がして、嫌だしな」
「何だか、その、ごめん」
「別に、透が謝ることじゃないだろ? 俺の勝手な我がままみたいなものだしな」
「そっか。じゃあ、楽しみに待ってる」
「ああ。だからさ、これからみゆりと会うのもよろしくな」
「うん、そこは頑張るよ。多分」
僕は弱い語気で口にすると、みゆりがいる直人の家を目指す。
購買部の照り焼きチキンパンがいつ奢ってくれるかはわからないけど。
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