第4話 わたしとお兄ちゃんのやり取りを見てて、何か面白いんですか?

 翌日の朝。

 僕は直人とみゆりと並んで、通学路を歩いていた。

「お兄ちゃん、今日は補習ないよね?」

「ああ、ないない。だから、昨日みたいなことはない」

「本当に?」

「絶対だ」

「なら、いいけど」

 みゆりは納得してなさそうな表情をしつつも、追及をしなくなった。

 僕はそのような二人のやり取りをぼんやりと見ていたが。

「透先輩、何ですか?」

 案の定というか、みゆりが僕の方を睨みつけてきた。

「いや、ただ見ていただけなんだけど……」

「わたしのことをですか?」

「いや、みゆりじゃなくて、その、直人とのやり取りを」

「わたしとお兄ちゃんのやり取りを見てて、何か面白いんですか?」

「別に面白いとか、そういうわけじゃなくて」

「じゃあ、何だって言うんですか?」

「みゆり、それ以上きつく言うな」

 直人が言葉を挟むと、「でも、お兄ちゃん」と不満げな調子で声を漏らす。

 で、僕は、「いいよ、直人」と気にしない素振りをする。実際は色々と言いたいことはあったけど。

「悪いな、透」

「お兄ちゃん、透先輩に謝らなくていい」

「あのな、みゆり。透は優しいから、何も言わないけどさ、他の人だったら、普通に怒られるぞ」

「それなら、それで、わたしは別にいい」

 みゆりは言うなり、足早に前へ進んでいってしまう。

「みゆり」

 直人は妹の名を呼びかけつつ、追いかけていく。

「兄も大変だな……」

 僕はぽつりと口にして、直人とみゆりのやり取りがされている場へ入っていく。

 また、「透先輩、何ですか?」と睨まれるかもしれないけど。

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