魔獣使いレックスの愛情に満ちた早朝


「あいつらとどうやって合流する?」


 阿呆面でリグレットが尋ねる。


「ダリーの店に行こう。あいつらバカだからまだ仕事に取り掛かってないだろうしな。」


「おっけー。」


 街はまだ人通りも少なく小鳥のさえずる音だけが心地よく響き渡る、いつもの街へ着いたのはそんな朝のことだった。ついさっきまで得体のしれない恐怖に追われていたことなどはもうすっかりと忘れ去り仲間のもとへと向かう。




「ダリー、おきろよ、ダリー。」


 阿呆の様に口を開けズーズーと寝ている男の額を小突きながら名前を呼んでいるのはすでに完全武装のデルタだ。


「ん。。。起きた。。。よ。。。zzZ」


「ダリー、早くしないと転移門使えないよ。警備きちゃうよ。」


 額を小突く手に力を籠める。


「ん。。。おきたtttから。。。起きたって。。。」


「目開いてないよ。早く起きてよ。」


 なかなか目を開けないダリーの額を突く手はもはや貫手のそれだ。


「やめろ阿呆!」


 ダリーは叫びながら自分の額を突く手をはらう。


「起きたって言ってんだろうが、このど阿呆。痛ぇんだよ!」


「起きた起きたって、目開いてないじゃん。」


「起きてすぐなんて目開かねえだろうがよぉ、普通。」


 いつも通りに寝起きが悪いダリーに対しデルタもいつもの調子で話しかける。


「超再生あるんでしょ。目が開かないとか嘘じゃん。」


「普段は人並みで死ぬくらいのダメージで発動するの。」


 相変わらずに目を閉じたままでダリーは答える。


「嘘つくなよ。いつも切られた瞬間に治ってるじゃん。」


「それは意識的に再生力上げてるときだから。切られた瞬間って言うけど本気になったら切られる前に直すこともできるから。なめんなよ。」


「いいから起きてよ。まじで転移門使えなくなっちゃうよ。」


「わかったよ。うるせえな。」


 デルタに散々言われてやっとダリーはベッドから這い出る。


「お前、いつも一緒に寝てるの?」


 ベッドから出てきたダリーの腰に引っ付いている銀髪の幼女を見ながらデルタは問いかける。


「うちにいるときは大体一緒だよ。。。いい匂いするな。ミーティアも起きてんの?」


 目をこすりながらダリーが言う。


「うん、朝ご飯作ってるってさ。」


「やった!寝て起きると腹減るよな。」


 ダリーは腰に引っ付いているユイを引きはがしベッドへと放ると匂いのもとへと駆けて行く。 途中テーブルやドアに足をぶつけているが、もう再生力が上がっているのか意にも介さない。


「さっさと食べて、さっさと出かけよう。真面目にやらないとレイにどやされる。」


 ダリーの後に続きデルタはそうつぶやいた。




 仕切り役のレイが居なくとも建設チームの朝は早い。


「とりあえず木の根を全部掘りだして。地面は慣らさなくてもいいよ。そのうち石貼ると思うから。」


 寒空の下魔族たちの指揮を執るのはレックスだ。雑な扱いを受けつつもなんだかんだで頼りになる男である。


「おはよう~」


 フラッシュとギャップが城から出てきて挨拶をする。


「おはよ。魔獣捕まえてきてくれない?どうせやることないでしょ。」


「おっけーりょうかーい。」


 普段雑に扱っているせいか、レックスからの悪態を気にするメンバーは少ない。二人は言われるままに外へと向かってゆく。

 

 レックスは空を眺め、雪が積もるまでにするべきことを考える。


 昨日の早朝雪がちらついた。今日は気温が上がったため大丈夫そうではあるが、もう一月もすれば本格的な冬が来る。それまでには魔族たちの住処もしっかりと作っておかなければいけないと、少々の焦りを募らせ作業を手伝いに行くのであった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愉快犯 @takamatsuayachan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ