第2話

 【分身】。それは自分の身体と全く同じ分身を作り出すスキルで、単調な動きしかできず、本体分身共にステータスが大幅に下がる物なのだが……そこに【変幻自在】、【並列意思】を混ぜる事で劇的な変化が発生する。

 例えば……、


「わー、いいなぁっ!ルーくんその鳥さん触らせて!」

「んー、良いよ」


 俺の肩に留まり、空間魔法で周囲を警戒している鳥は俺の分身である。一応記憶は同期化されているのでこの森の全貌は俺も知っているのだが、実際に行った俺がいるとだいぶ頼もしく感じる。


《レベルが上がりました》


「おっ……」


 そして、実働部隊と言う名の敵抹殺組織。今までは精神的に来る物があるだろうと思って魔物であろうとも殺すのを控えていたのだが、そんな事も言ってられなくなったのでレベル上げ……ではなく、安全の確保に4体を使って勤しんでいる。


「ルーくんルーくん!敵でて来ないねー!」

「そうだねー……」


《レベルが上がりました》


 何が彼女を掻き立てるのか……と気になるレベルには敵を求めるミーちゃん、鳥の姿の俺をなで続けるイーちゃんにどう反応すればよいのか困りながらも、彼女等の求めるがままに進んでいく。


「んー……今何時?お腹空いてきちゃった!」

「お腹……」


 分身間でも共有されている空間庫内には街の食べ物などが沢山あるのだが……それをあげるわけにはいかないだろう。かと言って困っている幼女に何もしない訳にもいかず……、


「一回帰らない?ご飯食べにさ」

「んー……」

「お家で美味しいご飯を食べてからさ、また来ようよ」

「……分かった!イーちゃん、帰るよ!」

「うん」

「……で、どっち!?」

「え?」

「……俺が知ってるから帰ろっか」

「うん!」

「ん」


 想像以上の無計画さ、俺がいなかったらどうしたのかなど、色々と頭の中に湧き上がる危なっかしさにハラハラされながらも、一時村へと戻る事にした。勿論、分身達はレベ……今後の安全確保の為に半分はそのまま狩りを続け、もう半分は護衛という形でだが。


「……ってかこれで良いのか俺」

「ん?どうしたの?」

「いや、何でも無い」


 将来的に絶対に有名になり、面倒くさい事になる事間違いなしの勇者に聖女。将来の事を考えるなら絶対に関わるべきではない存在だ。神様の意図的な物を感じるが……こんな幼気ない美幼女二人を見捨てられる訳もないだろう。……成人、15歳になったら【変幻自在】を使って行方をくらますか。


「そういやルーくん、なんで今まで出てこなかったのー?」

「んー……なんでだろ?」


 分身達の職業が安定するまでそちらに意識を集中せざる負えなくなったり、分身の統括、情報伝達係でもある”彼女”の精神状態を安定させるのに時間がかかったり……まあ色々と理由があるが、言える様な物は何一つとして存在しないのではぐらかすしか無い。


 ミーちゃんに質問をされたが、俺は質問し返したい欲求を抑えるのに精一杯だった。木の棒を標準装備してんのは狙っているのか、本名何なのか、なんでワンピース姿で森に入ろうと思ったのか……後ろの2つはイーちゃんも同様なのだが……彼女等の話題には事欠かないだろう。


 ……っと、俺と鳥の空間把握能力内に相当数の人間の反応があるぞ?


「……あれ?」

「どうしたの?」

「何でも無い」

「そっか!」


 今にも泣きそうな雰囲気を出している数名、その中には俺の母親も……んん??現状、5歳児三人で魔物が出る森へ来ている事実は覆しようが無く、相当数の人々も森へと入りだしている。


「……ミーちゃん、土下座って知ってる?」

「どげざ?なんか座るやつ!」

「おー、知ってるのね」


 ミーちゃんとイーちゃんの両親には土下座すれば許してもらえるだろうか。俺の両親は甘々だが……事が事だけに怒られるのは間違いない様な気がする。

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