弥生被日。
猫田
3.11
正午過ぎ
いつもとなんら変わりない日
普段通り平凡で退屈な日
何か起きないかと非日常を期待してた日
テレビから聞こえたあの速報
今でもはっきり覚えてます
今までに経験したことがないほどの
揺れを感じました
急すぎて、何も考えられなくて
家には私1人しか居なくて
当時21の私は怖いという感情しかなくて
泣きそうで、我慢して
でもどうしたら良いか分かんなくて
その時ふと思い出して
「津波が来る」
こんなことになるなんて思ってなかった
非常用のセットは用意してなくて
500mlの水だけを持って外に出た
塀が崩れてた
木造の家が倒れてた
ガラスが散乱してた
走って、走って、とにかく走った
津波の餌食にだけはなりたくなかった
こんな年で死にたくなかった
すると、色んな人の声が高台から聞こえた
「何してんだ!早ぐ登って来い!!!」
「早く!急いでーーーー!!」
「津波来でるぞーー!!走れ!全速力で走れ!飲み込まれるぞおおおお!!」
必死なのが伝わった
私が階段を登りきると、周りのおばあちゃん達が
「大丈夫?怪我はねぇ?」
「よぐ頑張ったね…えれぇね…怖がったね…」
「助がってよがった…」
と、心配してくれた
私はその言葉だけでホッとした
おばあちゃん達だって怖かったはず
その時
波の音が聞こえた
どんどん近づいてくる
私はすぐさま様子を見に行った
地獄絵図以外言い様がないほど
石巻は変わっていた
平和だった町が
一瞬にして波に包まれた
波が去った後も
次は炎が包み、これも地獄絵図だった
寒くて怖い夜を
1人で過ごすしかなかった
弥生被日。 猫田 @kantory-nekota
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。弥生被日。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます