休息

「今日は本当に疲れた……」



 リビングに置いてあるソファに体を預けて、深い息を吐きだす。


 プール掃除は肉体的にも精神的にもきつかった。

 途中からではあるが、担任のあれやこれやと言う指導が入ったため、少しの汚れもないようにしなければいけなかった。


 それに――例の痴女二名が、隙があれば喧嘩をしていた。

 俺が仲裁に入るのだが、その程度では収まらない。というか痴女プレイが悪化するだけだった。



「なんだってこんなことになったんだ……」



 そもそも、何故春香と名取が急に痴女になってしまったのかがあんまり分かっていない。二人共、そんなことはしないような性格だ。名取は高校からの付き合いだから深い所までは知らないが、春香は小さい頃からの付き合いなので、それが良く分かっている。


 彼女達が痴女にさえならなければ、俺は平穏な生活を送れていたかもしれないし、どちらかと恋愛関係になってたかもしれない。そう思えば少し悔しい気持ちになる。



「ねぇお兄ちゃん?」



 リビングのドアが開くと同時に、妹――杏里が姿を現す。



「どうしたんだぁ……」


「お、お兄ちゃんこそどうしたの?そんな生気のない顔して」


「どうしたんだろうな。はは……。自分でも分からないや」


「……本当に大丈夫なの?」



 心配そうな顔で「よしよし」と頭を撫でてくれる。小さな手が、小さなぬくもりが俺の心を包んでくれる。一生シスコンとして生きて行こうかな俺。



「ところで、どうしたんだ?」


「あっ、あのね。驚かないで聞いて欲しいんだけどさ?」


「内容による」


「……これ見て」



 そう言って、彼女は一通の封筒を手渡される。……なんだこれ、ハート柄のシール?も、もしかして、告白っ!?杏里がっ!?



「うーんと、なにか勘違いしてそう」


「な、なんだよ。これラブレターじゃないのか……?」


「そうだけど、そうじゃない。……裏見て」



 言われた通りに、その封筒をひっくり返す。と、右端に小さく文字が書かれてあった。


 ――八重佐紀――



「佐紀っ!?」


「やっぱりそうだよね。この人――お兄ちゃんの許嫁だよねっ?」


「あ、あぁ。まぁあれは父さん同志の戯言だからなんとも言えないけどな……」



 シールを剥がして封筒を開ける。すると、中には一枚の紙きれが入っていた。



「事情で転校することになりましたわ」



 俺はそっと静かに封筒の中に紙切れを戻して、こう呟いた。



「また荒れるなぁ……」











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

糖度高めのイチャイチャ系ラブコメを書きたかったのですが、どこかをミスったせいでヒロイン達が痴女になってしまいました。 しろき ようと。(くてん) @Siroki-Y

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ