この素晴らしいOPに物語を!
第四話 ぐうたらに運動を!
時刻は昼下がり。昼食を済ませた俺は暖炉の前のソファーでだらりとしていた。
まあ夏なので火はつけてないが。
「カズマ、最近ぐうたらしすぎですよ!運動しないと今に走れない体になちゃいますからね!」
寝かけていたところにそんな言葉が耳をついた。
「そしたら鍛冶スキルと大金を使って車いすを作るから大丈夫ー」
動かないまま様々なことができるならその方が良いじゃん。夜になったらサキュバスのお姉さんに抱っこしてもらえばもう最高。
「カズマ!私からも言うがお前は動かなすぎだ!簡単なクエストでも良いからせめて体を動かせ」
「そうよ!最近のカズマさんは動かなすぎよ!」
ダクネスが簡単なクエストでもなんていうのは珍しい。だがアクアは…。
「お前もたいして俺と変わらないだろ…」
俺の言葉にアクアは胸を張りドヤ顔で答えた。
「私は最近土木作業のアルバイトをしてるからカズマさんとは性能が全く違うんでしたー!…あ、元々の差がありすぎたかー…ごめーんね、カズマさん!」
言わせておけばこいつは……!
俺だって毎日ベットから起きてソファーまで歩いたりトイレ行ったりと動いてはいる。
「カズマさんは知らないと思うけど、この世界でずっと動かないでいると硬直っていう状態異常にかかって一生動けない体になるわよ」
最近じゃ夜はお姉さんたちの店まで歩いてるし…………え?
「おいそれは嘘だろ?いや、信用しては無いんだけどさ。それって何日ぐらい動いてないとなるの?」
体を起こした俺にめぐみんとダクネスが声を揃えて言った。
「「一週間くらい」」
「よしお前ら、ギルドに行くぞ!」
最近はめぐみんとの爆裂もダクネスに任せているので本当にまずい。
まずいのでギルドに向かったのだが、先程からアクアが騒がしい。
「いやーよ!私は動いてるって言ったでしょ!何で私までついて行かないといけないの⁉」
「………じゃあ帰って良いぞ」
しつこいアクアの手を放して片手でしっしっとやる。
予想外に素直な俺に驚いたのか最初は戸惑っていたもののギルドから離れていく。
俺はめぐみんとダクネスを手招きして耳を近づけさせる。
その耳に口を近づけるが何も喋らない。喋らないが俺たちはアクアの事をチラチラと見る。
その行動にアクアは耐えきれなくなったのか。
「何…皆、私に隠れて何するつもり…?ねえカズマさん、どーしてもっていうなら手伝ってあげてもいいわよ…?」
「帰って良いよ」
「わああああ!行くから何するか教えてええええ!」
ギルドに入ると、丁度ルナさんがあたら良いクエストの紙を貼っていた。
貼り紙をとると内容は黄金に輝くリンゴの見た目をしたようなフルーツを採ってくるだけとのこと。
「なあ、その場所の近くに生息するモンスターの中に爆裂岩ってのがいるんだけど……」
俺が知っているのは爆弾岩なんだが。
しかもそいつは自爆技を唱えてパーティメンバーを全滅させる。
俺もネトゲで対戦相手がそれを唱えてきて焦ったなあ…。まあ俺のレベルと防御力が高すぎて死ななかったけど。
「爆裂岩は名前の通り爆裂する岩ですが、私にとっては爆裂と言うより爆発程度ですね。衝撃を与えなければ爆発することもないので大丈夫でしょう」
「もしものことがあっても私が盾になってやるから安心しろ。むしろ盾にしてくれ」
ダクネスのを無視して向かおうとするところを呼ばれた。
「カズマさん、頑張ってくださいね。職員一同応援しています!」
そう言っていつの間にか集まっていた八人の職員は俺たちに向かって親指を立てた。
………本当に不安なんですけど。だけど親指を立てられたうえ断れない。
俺達は不安を募らせ街の外へ走った。
街を出た先は何もない草原と土だが綺麗に道ができている。
「こんな平原を見ると走りたくなるなー」
ダクネスの棒読みをめぐみんは逃さなかった。
「…らしいです。カズマ、走ってください。元々は運動不足のカズマがメインですから」
「はあ……しょうがねえなあ」
言われるがまま走ってみると意外にも風が気持ちよかった。
後ろから三人も走ってついて来て、気持ちよかったのかアクアは両手を上げて走っている。
そんなにはしゃいでると転ぶぞと言おうとした瞬間、何か硬いものが俺の足に引っかかった。
「ふわっ……!」
「え…わああああああああ!」
俺のすぐ後ろについていた三人は俺と共に盛大に転んだ。
皆に謝り再び走り出す。
「良いぞカズマ!、走るのが楽しくなってきたのではないか?」
「ああ!運動って久しぶりだと良いもんだな!」
そう言って俺たちは笑顔で走り出す。
……………。
………………あれ?何かもう疲れが………。
……………………。
……あ……もうだめだ……ダクネス以外の顔にも生気がない。
「あ……ダクネス、もう無理……ギブ…!」
俺は地面に四つん這いになった。
回りを見るとめぐみんは魔法を打った後のように倒れアクアはその場で吐いていた。
お前運動大丈夫なんじゃないのかよ。ステータスも高いくせに。
俺たち三人は街の方を向きしゃがみこんだ。
「俺…こんな距離も走れなくなったんだな」
「いくらダクネスとはいえ鎧を着てたのに私の背中をさする余裕があったわ…」
「私達って全然ですね……」
いじけている俺たちにダクネスが一つの提案をした。
「仲を深めるために円陣でも組まないか?」
いきなりそんなことを言い出したダクネスに俺たちは気味が悪くなる。
「どうしたんだよいきなり……何か気持ち悪いぞ」
「どーしてもっていうなら片手でエイエイオーでいいわよ」
「…ほらダクネス、自分から言い出したんだからいじけてないで、手出してください」
激高したダクネスがめぐみんのこめかみを襲った。
……手を出すとはそういう事じゃないのだが。
「「「「えいえい、おー…!」」」」
数キロ歩き疲れたので木陰で休憩する。
その間にアクアは持参したパンを食べていた。
「よし、じゃあ俺が今から見事な剣さばきを見せてやるよ」
片手で優雅に剣を振り回す。
最初は上手くできていたのだが、急に持っていた剣が消えた。
「あれ…剣は?」
どこに行ったのかと左右を見渡すと強い衝撃が頭にきた。
その瞬間食べていたパンを吹き出すアクア。
俺が呆然と立ち尽くしているとめぐみんが笑いながら肩をゆする。
ダクネスは俺を慰めてはいるが……あんまり効果はない。
「カズマさん…慣れないことはやらない方が良いわよ……『ヒール』…ぶっ!」
テンションが下がったまま歩き出す。
アクアはまだ笑っていて先頭を歩く。
「ほらほら速く!置いてくわよ」
そんなアクアを怒りもせず見ていると。
「……あ!アクアああああ‼」
生息リストにあった大ミミズが地面から突然出てきて頭から喰われた。
剣も抜かずに助けに走ったので俺もあっさり喰われた。
「こ……ごれはまずひ…めふみーん、だふねーす…ちょっとたふけて…⁉」
かろうじて目を開けると赤いものと黄色いものが見えた。
これってヤバくない?
俺とダクネスは動けない。爆裂は無理。アクアが死んだら蘇生も無理。
やばいやばいやばい!
剣が抜けないから………そうだった!
「『ティンダー』ッ!」
小さい火だが大ミミズには応えたようで俺達四人を吐き出した。
「はあ…はあ…危ねええ!」
「このような仕打ち……最高だっ!」
「ふわああああ!ふわあああ!」
大ミミズはいつの間にかその場を去っていった。
ゴールデンフルーツは大樹に生っている。その大樹は見つけることが出来た。
出来たのだが…………。
「どーしろってんだ!あんなもん絶対に無理じゃねえか‼」
ここから数メートルある大樹が何故か巨大亀の甲羅から生えていた。
倒せないし届かないしどうしようもない。
あちらこちらにいる爆裂岩に気を張りながら来たというのに……!
「カズマカズマ!良い方法を思いついたぞ!」
こいつらのだれでも自信満々で言ってくる事は、警戒すべきことだ。
「ほう、聞こうじゃないか」
「ここらへんには何かの跡地で鉄製のドアがあるだろう?それに乗ってだな…」
つまりダクネスの作戦はこうだ。
爆裂岩をたくさん集めてその上にドアを乗っける。その上に俺たちが乗り爆裂岩に強い衝撃を与え連鎖爆発。その爆発を活かし高く飛ぶという。
「頭が固いわりにはいい作戦じゃないか」
「そして私が空中で魔法をぶっ放し上昇気流を作り出すと…。いいでしょういいでしょう!やってやりますとも!空中での爆裂なんて初めてです!」
「私の羽衣は神器だから下から強い風を受けると大きく広がるからパラシュートにするってことね!任せて頂戴!」
今日のこいつらは本当に何なんだ。
毎回このくらい頭が回ってくれれば俺の苦労も減るというのに。
「でもあの木を登るのは大変なんじゃないか?」
俺の質問にアクアが何言ってんのとばかりに答える。
ダクネスはもう爆裂岩を集めに行ってしまった。
「そんなのカズマさんのパンツ泥棒魔法に決まってるじゃない」
「パンツ泥棒言うな!…でもスティールって対象の持ち物を一つ奪うっていう効果なんだが……フルーツはあの亀の持ち物に入るのか…?」
「入らなかったらもう無理ですし、諦めたらいいですよ」
うん、そうだな。そもそもあの亀を見た時点でムリゲーだったしな。
無理なものは無理。こういう時に諦めがいいのが俺の良いところなんだ。そもそも俺の運動不足解消のためだし、採れなくたって問題は………。
その瞬間、ギルド職員たちの親指が頭に浮かんだ。
「カズマ、準備が出来たぞ!」
…ここまで来たらやけくそだ…やってやるよ!
ダクネスの用意した爆弾ドア装置に乗るのだが、いきなり不安になってきた。
これってちゃんと真上に飛ぶよな?ドアが壊れて爆発で死なないよな?
「だだだ、大丈夫。私は強い魔法使い……」
めぐみんは自己暗示、アクアは息を殺してる。ダクネスは……やはり楽しそうだ。
「じゃあ行くぞ!行くからな‼」
ダクネスは思い切り下の爆裂岩を叩いた。
強い衝撃とともに、俺たちは一気に空中に放り出された。
何とか成功したのだが、超怖えええええ‼一瞬下を見たら泣きそうになった。
「アクアああ!背中から落ちてないで俺たちより下に行けええええ!」
「ふははははは最高だ────!」
「ダクネスは黙ってろ!…めぐみん、今だああ‼」
飛ばされる前に詠唱を終えていためぐみんが魔法を解き放つ。
「『エクスプロージョン』────ッッ!」
亀から少し離れた地面に打ち込み大爆裂し、上昇気流が発生した。
「うわあああああ!」
予定通り一番下にいたアクアが両手で羽衣を広げると本当にパラシュートのようになった。
「うぐっ!」
上昇気流と神器のクッションによりダメージはない。後は俺次第だ。
本当にフルーツは採れるのか?そもそもフルーツが採れるならあの大量にある葉もスティール圏内に入るんじゃないだろうか。
ここまで俺たちが作戦通りに行くのは自分で言うのもなんだが本当に珍しい。
そしてこいつらがこんなに頑張るのも活躍するのも本当に珍しい。
俺は黄金に輝く二つの実を千里眼スキルで見逃さなかった。
ここは俺の運を信じる時だ。
「『スティール』ッッッ!」
俺は渾身の魔力を込め、魔法を解き放った─────!
─────俺はいつもより重く感じるギルドの扉を開ける。
俺たちが帰ってきたのに気付いたルナさんとキースたち。
俺は左手で二つの実を見せつけ、ボロボロな俺たちはみんなに向かって親指を立てた。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」」」」
皆、俺たちの帰りを待っていてくれたようだ。
ギルドには顔を出すのは珍しいウィズが両手を組み喜び、恥ずかしがり屋のゆんゆんが柱からちょこんと顔を出していた。
「助手君、クエストは大成功だったね!」
「クリスか…。ねえ、この果物ってそんな貴重なものなのか?」
「うん。硬直っていう状態異常を治す薬に使われるの」
え?マジで?そんな状態異常本当にあったの?マジで⁉
「ウィズさんの昔の冒険者仲間の子供の女の子が病気にかかっちゃってね。二ヶ月間動けなくて硬直の状態異常になっちゃったんだよ。それで果物のクエストが出たって聞いて向かったんだけど…助手君たちが真っ先に受けたんだって?…最初は皆不安だったけど、貼ったばかりのクエストを受けるなんて優しいねっていう話になって皆で待ってたんだよ」
…どうしよう。
運動不足を解消するために選んだんですなんて今更言えない。
無理だったらあっさり諦めるつもりだってんですなんて言えるわけがない。
硬直の状態異常って一週間じゃねえじゃねえか。
俺たちがいつの間にかそんな重大なことをしていたとは………。
「カズマさん!本当にありがとうございました!これであの子も治ると思いますので今日はこれで失礼しますね」
「あ、待ってくださいウィズさん。私も手伝いますよ、紅魔の里で薬を作る授業やってましたから…!」
そう言ってウィズとゆんゆんはギルドを出て行った。
「カズマー!ほら飲むわよ、宴会よ!」
「やっぱやるときはやってくれるぜカズマさん!」
「ピンチな時こそカズマだよなあ!」
「ほらほら、ここの英雄さんのためにもっと料理運んでー!」
「ちょむすけー、元気にしてましたかー?」
「ダクネスもお疲れ様」
「ああ、ありがとう。まあ本当はカズマの……いや、やめておこうか」
ギルド内はすっかり出来上がり盛り上がっている。
「しょうがねえなあああ!今日も俺のおごりだああ!飲めええええ────‼」
今夜のギルドは、いつもより何倍もうるさかった。
あとがき
お久しぶりです。Ryuu65です!
今回はこのすば二期OPの絵を元に物語を書いてみました。
知らない方はこちらから→ https://www.youtube.com/watch?v=gJ5-0c6Qgbo
意外とスケールが大きかったですね。このお話はアニメ二期OPはもちろんのこと、【この仮面の悪魔に相談を!】を読んでいるともっと面白く思えるかと思います。
人気であればこのファンOPの物語を書こうとも思っておりますのでよろしくお願いいたします。
時間があれば皆さんの要望に合った物語も書きたいと思っています。
それではちょっとやってみたかったので失礼して…。
この物語を読んでいただいた皆様に、深く感謝を!
この素晴らしい短編集に祝福を! Ryuu65 @saikounasekai
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