第三話   空から降ってくる野菜

────レンコン、それは白くて穴が開いていてコリコリする秋の野菜。

この世界のレンコンは、四年にに一度降ってくる雨のようなもの。

キャベツなどとは違い、モンスターではなくただの野菜。

そこまでは色々と疑問があるがまだ良い。

問題は、四年に一度なので…………。

量がキャベツの四倍だという事だ。

この世界に来たチート持ち達も、モンスターじゃなくて野菜に驚いたと思う。

そうじゃなきゃおかしい。

「カズマ、ボーっとしてないでください!上を見とかないよダメですよ!降ってくるレンコンの中にはたまにスピードが速い奴がいますからね!当たりどころによると死にますよ‼」

なんだよめぐみん、スピードの速いレンコンって……。

この世界の野菜は、本当に日本人をおちょくってやがる。

空飛ぶキャベツとレタス、畑で育つサンマ、空から降ってくるレンコン……………

なめんな。

そんな嫌な顔をした俺を見たアクアが妙なドヤ顔で行ってきた。

「大丈夫よカズマ!私は学んだわ!今まで私達がさんざんなめにあってきたのは、私がフラグを立てまくっていたからなの!」

こいつ…今更きずいたのか。

「つまり今日はまだ一度もフラグを立てていないから、安心安全に終わるってことよ!」

俺は分かっていた。

こいつは学ばないそして、いろんな意味で成長しないということを。

「アクア、ちょっと冒険者カードみせてくれ」

「別にいいけど…なんで?」

「こっちの話だ、気にするな」

…あれ、おかしいな、知力が下がってない。



俺は皆とざるを持ちレンコンという気象をとるのに励んでいたのだが、そこで俺はふと思いついた。

「思ったんだけど、死ぬリスクがあるなら家の中に閉じこもってて、地面に落ちた後のレンコンを拾えばよくないか?」

そんな質問をした俺にめぐみんが呆れた顔をして。

「知らないんですか?レンコンはとても繊細なんです!なので地面に落ちると、粉々になってしまうんです!」

すると続けてダクネスが。

「その様子じゃカズマは知らないんだろうが、ざるに落ちても大丈夫なのは、ザルには元から魔力が込められているからだ」

 俺達4人…じゃなくて5人は、ざるやバケツ、桶などを持ちながらレンコンを取っていた。

俺は持ち前の運の良さからスピードの速いレンコンを避け、ざる15個分のレンコンを集めていた。

しかし…首が痛い…。

だってずっと上を向いてたんだもん。

心の中でそんな愚痴をこぼしながらまた上を向くと。

あれ?確かにレンコンじゃない茶色くて細長い何かが……。

あかん、ゴボウや。

……ゴボウやん。

何でゴボウが降ってくんねん。

意味わからへん。

「カズマ!ぼーっとしてる場合じゃありませんよ!レンコンと一緒にゴボウが降ってくることはよくある事ですが、上を向いているので目に刺さると終わりますよ!」

「何やねんそれ!!」

あんなの、ステータスの低い俺が喰らったら頭へこみそう。

まあ運が良い俺には関係ないけど…。

「「?」」

おっと、考えてたナントカ弁が外に出ちまったか。

めぐみんとダクネスが不思議に見つめてくる。

アクアは…………そもそも話を聞いてなかったみたいだ。

「いたたたたたた!いったーい!」

案の定運の悪いアクアはレンコンやゴボウが直撃している。

ステータスの高いアクアは大丈夫なのか。

「野菜ごときが生意気な!ゴッドブロー!」

アクアの拳が野菜を粉砕する。

「おいアクア!食べ物は粗末にするな!」

ダクネスが注意するが…野菜に粗末にされてるんですけど。あと、

「ダクネスは何やってんの?」

そこには誰もが貴族だとは思わせない地面に大の字で寝転んだお嬢様がいた。

「お、お構いなくっ!この素早い野菜が私の敏感な所にっ!だが私は、野菜などに屈したりはしない‼だからカズマ、手を出さないでくれ」

この変態は、後で物置に閉まっておこう。

うん、それが良い。

…………あれ?それも喜ばれる気がするのは俺だけだろうか。


──二時間後──

「っ!この野菜はまだ止まないのか⁉もう十分だろ!どうやって止ませるんだ?」

野菜が止むというのも変な話だが。

「今ままでは、空に何発か爆発魔法や炸裂魔法を撃って、空にある程度の衝撃を与えれば良いのですが……今回は一発で済みそうですね…」

その言葉を残してめぐみんは物置にしまわれた。

 気象野菜も終わり、報酬で借金を返せたらしいアクアと皆でりたての野菜を注文し届くと……。

「何でこの料理が?」

テ―ブルにはまさしく普通の家庭なら誰もが食べたことがある料理、キンピラゴボウがあった。

「おっ!お客さんこの料理知ってるんですかい?この料理は遠い国から持ち込まれた四年に一度のゴボウの時期にしか食えないチンピラゴボウってんですよ」

「はいはい、よく知ってま………今何て?」

「チンピラゴボウってんです」

聞き間違いじゃなかったようだ。

「すいません、その料理はよく知りません。その料理の名前の由来って何ですかね?」

「名前の由来?何でも昔、チンピラがゴボウを武器にしてカツアゲとやらにに成功したからこの名前がついたとか…」

その料理とゴボウ以外に何の関係が?

チート持ち、この世界の連中で遊ぶなよ…。

でもこれが食ってみるとめちゃくちゃ美味かった。

「う、うますぎる!手が止まらねえ!」

父さん、母さん、今更二人には悪いけど、この異世界で今までで一番美味しいレンコンとゴボウを食べています。

…………ん?異世界でレンコン?異世界でゴボウ?…あれ?

俺は女神もどきに今までで一番美味しいレンコンとゴボウを食べにこの世界へ?

生態系のおかしい世界は、いつも通りでした。

…………ちなみに、野菜は生態系に入りますよ?

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