第二話 非常識の始まり
アクアの借金事件の翌日、ゆんゆんが家に遊びにきてダクネスは用事があると言って出かけて行ったのだが。
………うるさい。うるさすぎる。うるさいより上の言葉がないのが悔しいぐらいにうるさい。
…セイクリッドうるさい。
すると今まで珍しく黙っていたアクアが。
「あんた達うるさいわよ。二人がライバルなのは分かるし、ケンカするなとは言わないから外でやってきて!」
いや、そもそもけんかすること自体を止めろよ。
「何ですかカズマまるで私たちの事をセイクリッドうるさいとでも言いたいかのようですね」
さすがは知力が高い紅魔族、ドンピシャだ。
でも分かってるなら止めて欲しい。
すると玄関のドアが開いた。ダクネスが帰ってきたようだ。
「なんだ、うるさいぞ。またカズマとアクアがケンカしてるのか?」
「これはこれはダクネスさん。今回は俺達では無く正面に見えますのが、ケンカの名所の紅魔族の痴話げんかです」
俺の空気を読んだのかその言葉にアクアが畳み掛ける。
「そうよダクネス!いつも私達がケンカしててこの前ダクネスが大事にしてた花瓶を割っちゃったからって何でもかんでも私達のせいにするのは止めてちょうだい!」
「そうか、それは悪かっ…おい!今何と言った⁉」
「おい、空気を読んでくれるのはいいが余計なことまで喋るなよ!」
「余計なこと!?おいカズマ、アクアは今何て言ったのだ!花瓶と聞こえたがまさか割ったんじゃないだろうな⁉あれはお父様からもらった大事な…おいカズマ!目を逸らすな!」
慌てて花瓶があった場所に行ったダクネスをほって俺はめぐみんの方に向き直る。
「彼方は友達が少ないから、かわりにペットをくれるって言ってたじゃない!」
「ええ、友達がいないからあげると言いましたね」
「だからって、あのモンスターを紹介するなんて!私たち前にトラウマになったよね⁉あの兎は肉食で、群れで狼を貪ってたところ見ちゃったよね⁉」
兎が群れで狼をむさぼる⁉それはトラウマになるわ…。
「でもゆんゆんは最初、あのウサギが可愛いすぎて野菜スティックをあげようとしてたではないですか」
「それはそれ、これはこれよ!」
その反論にめぐみんは変な笑みを浮かべてこう言った。
「でもゆんゆんは昔、〔モンスターと友達になる方法〕という本を読んでいたじゃないで」
「あああああああ‼ななな何のことかしらあああああ‼」
今まで黙って聞いていたが、この2人の間には色々ありすぎていかに俺の頭でもうるさいという事しか残っていなかった。
「お前ら、うるせーんだよ‼そろそろ黙らないと剝くぞ!俺がガチめに剝くからな」
その言葉を聞き、死んだ魚を見る目でひいていくアクアとゆんゆん。
……しょうがないじゃん。
だってこいつらがうるさいんだもん。
それを聞いためぐみんは、鼻でフッと笑い。
「いいですよ。カズマにそんなことができるならやってみるがいいで…」
「『スティール』」
俺の魔法がめぐみんのパンツを奪う。
アクア達の目が、死んだ魚から腐った魚を見る目に代わっていった。
「そ、そういえばカズマは平気で人のパンツを取っちゃう人でしたね。だがしかし、そんなゲスマに負ける私ではありませ…」
「『スティール』『スティール』」
俺の魔法が今度は、めぐみんのブラとタイツを奪い取った。
「負けました私が悪かったです」
俺の優しい指導にとうとう納得したようだ。
「危なかったな、負けを認めなければコレを俺の家宝にするか、そこら辺の冒険者のおっさんに高値で売り飛ばしてくるところだったよ」
「本当にすみませんでしたカズマ様。それだけはやめて下さい本当に」
めぐみんが半泣きで言ってくる。
「どうして解決した雰囲気になっている!おいアクア、どうして私の花瓶がトイレの花瓶に入れ代わっている!」
そういえばこいつがいたんだった。
「アクア、お前まさか本当に⁉あれはお父様からもらった大事なっ───!」
『緊急クエスト!緊急クエスト!冒険者各員は至急レンコン態勢にはいり、建物の外に出てきてください!民間人の方は、直ちに建物の中に避難を‼』
唐突にそんなアナウンスが、街に響き渡った。
「レンコン態勢?戦闘態勢の言い間違いか?珍しいこともあるもんだな」
俺がのんきにそんなことを言うと、何故かめぐみんとダクネスが可哀想な人でも見るかのような目で見つめてきた。
「レンコンとは、白色で縦長の穴が開いている野菜で食べ物だ」
「そんなこと知っとるわ!俺が言いたいのは、ルナさんが間違えるなんて珍しいってことだよ!」
あれ、前にも少し似たようなことがあったような……?
「知らないのですか?レンコンとは雨や雪のように空から降ってくる気象のことです」
「だからそんなこと知って…今何て?」
続けてアクアも何の不思議もなくこんなことを告げる。
「あれ、レンコンって今年だっけ?これは借金を返すチャンスね!早く外に出るわよ!」
屋敷を出ながら俺は、アクアに状況を説明してもらう。
「なーに、カズマったらまだこの世界の事勉強してなかったの?しょうがないわね、このアクアさんがわかりやすく教えてあげるわよ!」
すぐ調子に乗るこいつをひっぱたいてやりたいが、話が先に進まないので止めておく。
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