この素晴らしい短編集に祝福を!
Ryuu65
この反抗的な野菜に常識を!
第一話 この厄介神に通常を!
時刻は朝の六時を回り俺は珍しく早起きし、朝日に照らされながら朝食を摂っていた頃。
「カズマ様、紅茶入りましたよ~」
アクアが頼んでもいない紅茶をにんまりとした笑顔で持ってくる。
それに対して俺はアクアと同じく爽やかなにんまりとした笑顔で答える。
「おはよう
「借金です」
「そうか、おやすみアクア」
即答してくるアクアを尻目に俺は自分の部屋へと足を運ぶ。
「お願いカズマ~!少しだけでいいからお金貸してよ!返しても返しても利子の山で返しきれないのよ!」
朝っぱらから騒がしい。
「お前にはいつも小遣いやってるだろ!そんなにお前にやってたら俺が破産する!」
こいつにはもっと金のありがたみを教えてやりたい。
「貸してくれないならクエストを受けましょう!お願いよ!一回でいいから!私頑張るから!今回は本気で頑張るから!!」
今回はじゃなくて今回もにしてほしい。
でもまあ……。
「しょうがねえなあ、一回だけだぞ!」
というわけでめぐみんとダクネスを誘い、冒険者ギルドにやって来た。
「…で?どのクエストにするんだ?」
九割九分九里却下だが、一応こいつらの意見も聞いてみる。
「カズマ、カズマ!これにしましょう!ブラッティアントの三百匹討伐!大量のアリの中に撃ち込んで、スカッとするのです!」
「いいや、このパラライズファングの討伐だ!きっとこいつは、パラライズスライムの何十倍にもなる痺れだろう!……んんっ!想像しただけでワクワ…武者震いが止まらない!」
……今こいつ、ワクワクするって言おうとしなかったか?
「いいえ、そんな生ぬるい奴じゃなく、お金になるこの〈雷じ~さん〉にしましょう!」
…雷じ~さん?
「なあ、雷じ~さんってなんだ?名前からして、怒ると怖いじ~さんとしか思えないんだけど…」
俺の言葉に、めぐみんが説明する。
「雷じ~さんとは、国から高額賞金が懸けられている特別指定モンスターの一人です。別名、ゼウスとも呼ばれています」
……ゼウス⁉やば!多分俺の国でドラゴンの次ぐらいに知られてるやつですよそれ!
「どうしたカズマ?このクエストにするのか?私は一向にかまわないぞ!」
「バカか‼誰がこんなクエスト駆け出し冒険者の街でやるか!ドラゴン並にやばいわ‼」
冬将軍にも勝てない奴が、雷親父にケンカ売れるか!
「もうわかった、お前らにクエストは無理だ。アクア、やっぱりお前に金を貸してやる。代わりに俺のパシリになれ」
命を懸けるくらいなら金を貸した方が断然マシだ。
「う……。でも借金の為よ!任せてちょうだい!でもカズマさん、パシリ代は高めにね」
屋敷に帰り、俺はアクアにおつかいを頼む。
「えーっとじゃあシュワシュワ買ってきてもらおうかな。金は俺がだすよ。で、そのおつりがお前の給料だ」
「じゃあ何エリス持っていく?二万?それとも五万?あ、八万でもいいわよ?」
「バカか増えてんじゃねーか。シュワシュワ一本八百エリスだから…じゃあ二千エリスだな」
ちょっと多い気がするがアクアに喚かれる方がめんどくさい。
「了解!行ってくるわ!」
「あ、あとアクア、俺の事を様付けして尊重しろ」
「了解ですカズマ様。では行ってきます」
まあまあ時間が経ったころアクアが帰ってきた。
「おかえりー。遅かったな。では、おつかいの報告をしたまえ」
「カズマも結構ノリノリですね…」
「ああ、カズマはああいうのは得意だからな。いつか私にも……」
うるさい外野を尻目にアクアの報告を聞く。
「はい、シュワシュワはしっかり買ってきました。あとは帰りにエリス教会に石を投げてきたり、ツケで借金が少し増えたくらいです。あと、カズマ様について誤解している冒険者がいたので訂正しておきました」
こいつ、以外に出来るな。
「ほう、どんなだ?」
「はい、カズマ様のことを最強だのイケメンなんじゃとか言っていたので、クズマやカスマ、あとゲスマよと訂正しておきました。私の報告は以上です」
「以上じゃなくて異常じゃねえか‼数少ない俺の事を良く思ってくれてる人達に何てことしてんだ!しかもお前おつり全部使っちまったのか!このバカが!」
「カズマ様、そんなお
こいつ…………!
アクアを叱りながらシュワシュワの瓶を開けると……。
「は?」
素の声が出てしまった。
「なあアクア、この瓶の中が空なんだが…どういう事だ?」
ちょっとキレ気味に言う。
「エ、エー!ドウイウコトカシラー。カッテニシュワシュワガナクナルナンテキイタコトナイワ!」
まさに棒読みを文字どうりに表した喋り方だった。
「おい…そろそろ本気で怒るぞ…。ウィズみたいに金を減らすことしか出来ないなら、さっさと土木作業のバイトでもして来い‼」
「ごめんなさいカズマ様ー!ゆるしてください!バイトはいやー!」
そこには泣き崩れたアクアがいる。
それはもはや、こいつが元々何だったのかを忘れさせるには十分なものだった。
「ここでウィズの話を持ってくるなんて、さすがゲスマですね」
「ああ、まったくだ」
また外野がうるさい。
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