第二十二話 たかが物理的距離なんて②(志穂視点)
テストが始まるその瞬間までうちは教科書と単語帳をみていた。
ここ最近で一番緊張しているのがわかる。そしてテストが配られ、チャイムの音と同時にうちは問題を解き始めた。
一問目は圭が出ると予想していた問題だった。圭に後で死ぬほど感謝しないとね。続く二・三問目も順調に解けた。よしこの調子ならいける!
ところが四問目から八問目の問題が何一つ分からなかった。いつものあたしなら英語が苦手だからと割り切ってそんなに焦ることはなかっただろう。
でも今回のテストはしっかりと圭に教えてもらってテスト勉強を毎日頑張ってきた末の出来事だった。うちは頭が真っ白になった。
肩が震えているのが自分でも分かる。圭あんなに教えてくれたのにごめん。という気持ちが溢れてきた。
その時、後ろの方で勢いよく椅子が引かれる音と共に一番安心する声が聞こえた。
「先生。トイレ行ってきていいですか?」
「ま、まだ開始二十分しかたっていませんよ?
このまま退室したらもう解答終了になってしまいますよ?」
「構いません。」
そう答えると、うちの席の前にある扉まで近づいて、そこで靴紐を結び始めた。そして、私にだけ聞こえる声で呟いた。
「大丈夫だ。自分を信じろ。」
そう言うと靴紐を結び終え、圭は教室から出ていった。
ありきたりな言葉だなと思った。今まで世界で何回も使われてきた言葉だ。
だけど、
今のうちにとっては世界で一番頼もしい言葉だった。
彼女と圧倒的な運命力がある学校一のリア充から彼女を奪い取るまで 枯れ尾花 @nonokajt
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