Luminous

掌編 本編800文字縛り







光る星の流れるフィクション









7月7日といえば七夕。

俺が住む街では毎年、この時期に大々的なお祭りが行われる。7月に入ってからはよく通る商店街にも祭り特有の雰囲気が漂ってきている。あちこちに笹が置かれ、涼し気な装飾が施される。

「短冊、何書いた?」

と、ノリノリで置いてあった短冊にペンを走らせる恋人がこちらを向く。

「秘密。」

何も書かれていない紙を裏返した。

「えー、つまんないの。」

「そういうお前は?何書いたんだよ。」

「んー、秘密。」

「なんだそれ。」

「ふふ。これ、吊るしてくるねー。」

と言って離れていった。

遠くから親子連れに混ざって吊るしている様子を眺めて苦笑いが浮かぶ。

「7日は、来週かー。晴れるといいね。」

恋人はそう言って笑った。


1週間後の夜。上を見上げれば、星は煌々としていた。部屋のベランダの手摺に寄りかかって星空を眺める。

「きれーだねぇ。」

相変わらず俺の隣には1週間前と同じように恋人がいる。

一つ違うとすれば、恋人から婚約者になったことか。

ついこの間、思い切ってプロポーズをした。恋人は、恥ずかしそうに、でも満面の笑顔で受け入れてくれた。

この間渡したばかりのシルバーの指輪を付けた手を空に向かって掲げると、藍色の空に少しだけ光ったように見えた。

「あ、流れ星!」

ピン、と人差し指を伸ばして落ちていく光をさした。その方向を向くと、音もなく落ちていく光が見えた。

「凄いな。初めて見た。」

「こんなところで見られるなんてラッキーだね。…何かお願いした?」

嬉しそうに、俺を見上げる姿が可愛らしくて思わずキスをした。

「?」

「秘密。」

「ずーっと、教えてくれないんだね。」

「願いは口に出したら叶わなくなるからな。」

「そうなの?」

「そう。」

「案外、ロマンチストなんだねぇ。」

「別に。」

ニヤニヤと笑いながら俺を見上げている姿は俺が好きだったずっと前から変わっていなかった。

「綺麗だねぇ。」

「…ん。」

来年も一緒にいられますように。

今宵の星々は美しい。





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sampling 一颯 @eight8error

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