隙だらけのビート
アリエッティ
職務放棄
風神と雷神。
二つの神は一心同体、風が吹けば雨が降り嵐を起こし雷を落とす。そうする事で天候を操ってきた。
だがしかし、雷神は頭を抱えていた。
「どうしたライ?」
「...いや、何でもない。」
悩みなど聞いたことが無い、悩む程高尚な事をしてきてないからだ。
「そろそろ時期だ、下界に嵐を起こして気圧を下げて悪しきものとか温暖を減らしてバランスを取るんだ。」
「その事なんだけどよ」「..何だ?」
いつになく神妙な面持ちで暗い顔をしている、まるでコイツが低気圧だ。
「もう辞めにしねぇか、嵐起こすの」
「何故だ?
これは我々の仕事だ。」
「そりゃあ、わかってるよ。けどよ、人間や他の生き物が何をしたよ。普通に生きてるだけだろ、嵐起こして雷落とす程邪じゃねぇと思うんだよ。」
「..まぁ、確かに困らせる道理は我々には無い。各々に個人的な
「だろ?」「……」
雷神は純粋過ぎた。
それ故に物理的な疑問を持ち、投げかけてくる。そんな男に言葉を何度言い返そうと野暮というものになる。
「しかしどうする、嵐を起こさなければ陽は照り続け大地は枯れる。そうなれば結局のところ下界は嘆くぞ?」
「...何を言われても無理だ。」
雷神が太鼓を置いた、それは即ち雷を捨て無機質な神に成り下がるという事
「何となくは判ってる。人々ってものがそれ程綺麗なものじゃないってな。でも俺はそれでも御免だ。汚い者を陥れる程汚れたくない。」
「……そうか」
返す言葉は無論無い。残されたのは、輪状の太鼓と、無の情念だけだ。
それから暫く、日照りがつづいた。笑顔が続けば皆呆れ果て疲弊する。街も国も世界も総て、そうなった。
『デンデンデンデン..』
そんな折、小さな太鼓の音と共に、風が吹き雨が降り、稲妻を多く落とした
「太鼓の音?」
「雷神様、復活なされたのですね!
暫しの御休息、お疲れ様でした。」
「...いや、俺じゃない。
それにこの音、なんだかぎこちない」
『デンデンデンデデン..』
下手では無い、かと言って上手くは無い。孤高の神が髪を濡らし一人頂にて叩き続ける。
「風よ吹け、雨よ降れ、刻を長く掛けて生み出された音色よ。大地に海に、さんざめく
「お前、風神か⁉︎」「……!」
足りないのなら補えばいい、不足なら養えばいい。
「邪が疑問なら、鬼になれば良い!」
「お前、俺の分を一人で...!」
二つの神は一心同体、風が吹けば雨が降り雷を落とす。そうする事で天候を操り支配していく。
「せいっ!」
覚束ない太鼓の音は、止むことなく天に流れ続けたという。
隙だらけのビート アリエッティ @56513
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます