第18話 斜陽に銀が差す

第一回イベント!『ダンジョン防衛戦』


 親愛なる魔物プレイヤー様がた、今回のお知らせはvariant rhetoricにおける、初のイベント、『ダンジョン防衛戦』についてのものでございます。

 話は変わりますが、現在魔物プレイヤー様がたの総人口は一万人を少し割る程度であります。それに対して人間プレイヤーは七万人近い軍勢、明らかな戦力の差があります。


 その戦力の差を埋めるために私達VR運営陣が考案したのは、『軍勢システム』です。


 イベント期間中につき、全魔物プレイヤーのレベルを恒常的に+5上昇させます。

 又、現在9657名のプレイヤーの中から上位15パーセントのプレイヤーには追加でSPを1入手し、プレイヤーネームの前に『小隊長』が付きます。

 上位5パーセントのプレイヤーはSPを2入手し、プレイヤーネームの前に『中隊長』が付きます。

 そして、栄えあるプレイヤーの上位16名はSPを3入手し、プレイヤーネームの前に『大隊長』が付きます。


 上昇した分のステータスポイント、SPは各自好きなようにお使いください。

 イベント終了後にステータスはイベント前に戻されます。


 さて、プレイヤー様がたが気にしていらっしゃるであろうイベント内容について説明させていただきます。


 イベントは今から三日後の十月三十日午後九時から午前零時まで執り行われます。

 当日午後九時にログインしていることで、参加条件を満たしたとみなし、イベントステージに移動します。

 なお、イベントに不参加を表明する場合、お手数ですが午後九時過ぎにログインすることでイベント参加権を棄却することができます。その場合、参加報酬や各種部門の上位報酬を受け取ることは出来ません。


 イベントステージは始まりの地「ロドリオン」近くに突如出現した特異ダンジョン「マトリオ」です。

 全部で五層に分かれており、人間プレイヤーは広大な第一層にそれぞれパーティー単位でバラバラにポップします。階層は下は行くごとに狭くなっていき、その分野良の魔物の密度が高くなります。


 人間、魔物共にイベント中にリスポーンできる回数は三回までです。四度目の死を迎えた瞬間、次のリスポーンはイベントエリア外のリスポーン地点になります。

 人間、魔物プレイヤー共にイベントエリア内にいる場合は外部からのメールを受け取れません。イベントエリア内でログアウトした場合は即座に棄権とみなしますのでご注意下さい。


 魔物プレイヤー様がたに担当していただくのは二層から最終層である五層でございます。

 人間プレイヤーの勝利条件は三時間以内にダンジョンの最終層のコアを破壊すること。もしくは大隊長の殲滅、全魔物プレイヤーの討伐です。


 魔物プレイヤーの勝利条件は三時間の間、ダンジョンコアを守り抜くこと。加えて大隊長が五体以上生存していること、さらに加えて一人でも魔物プレイヤーが残っていることです。


 人間プレイヤーは魔物の討伐数、イベントポイント、そしてコアへのダメージの三つのランキングをクランで争います。

 そして、魔物に与えた総ダメージ数、魔物に与えられた総ダメージ数、人間への回復量を個人で争います。


 魔物プレイヤーは人間の討伐数、イベントポイント、人間に与えた総ダメージ数、人間に与えられた総ダメージ数、魔物への回復量を個人で争います。

 それとは別に、魔物プレイヤー全体の目標として、ダンジョンの攻略度と野良の魔物を含めた全魔物の損傷率をそれぞれ五段階評価し、全体報酬を受け取ることができます。


 ランキング上位者には勿論のことですが報酬があります。そのほかにも、防衛成功でも全体報酬が発生します。

 人間プレイヤーはダンジョンの宝箱かネームドの魔物を討伐すること、もしくは小隊長以上のプレイヤーを討伐することでイベントポイントが入手でき、魔物プレイヤーは人間プレイヤーを討伐する他、三十分毎にダンジョンコアから全体にポイントが配られます。


 ポイントはランキングで競われる他、イベント後に使用する事でイベントアイテムやスキル、SPやステータスポイント、消耗品、装備に交換する事ができます。


 また、イベント前、イベント中は魔物、人間プレイヤー専用のイベント掲示板が作成されます。意思疎通にご利用ください。




























 ――勝利の天秤が傾くのは人間か、魔物か。あるいは……


 人間の勝利が、世界に何をもたらすのか。

 魔物の勝利が、人間に何をもたらすのか。


 この戦いに、答えなどあるのだろうか。



――――――――



「いや、何だよ最後の一文」


 帰り道で一人、イベントに関する予習をしようとしたが、最後の一文で全て消し飛んだ。色々と考えることはあったさ。魔物プレイヤー全員の協力が必要だとか、まずは進化だな、とか、多分大隊長にされるだろうから色々考えないとな、とか。


 だがしかし……このラストで全てを持っていかれた。やばいな、何だこれ。確実に第三者の存在をほのめかしつつ、次のイベントへの伏線を張っているようにも見える。


「また、変なギミックがあるのか……?」


 イベントの意味、そもそもダンジョンとは何か、魔物とは何か。

 考察スレがたった五日であそこまで煮立つ理由もわからなくない。それだけの謎がこのゲームにはある。しかし、今はそれよりもイベントの事を考えねばなるまい。開始まであと五日ほどしかない。


 それまでに装備を全部集めて戦力を増強させねば。


「時間がねえなぁ……」


 夏至はとっくのとうに過ぎ、短くなった夕暮れの斜陽に打たれながら、そっとぼやいた。


――――――


 瞳を開くと、ロードが居た。妙に顔が近い。瑞々しい空に、銀色の髪をしたロードはよく映える。後頭部には優しい感触がある。


 ……ん?


「膝……枕……?」


「え、ぁ、えぇーっと……これは、いや、下心があったとか、そういう訳ではないんですよ!? その……恩人を地面に寝かせるのはどうなのかな、と思ったんです……」


「……」


 脳の理性的な面が状況と、その原因を極めて論理的に判断する。

 たしかに、恩人をそこらにほっぽり出して床で伸ばしている、というのは恩を仇で返している、と思われてもおかしくない。そう考えると、ロードの膝枕という行為は非常に道徳的には良く出来た行為であり、根本的には善意から来た世間一般的に優しい、とされる行為なのだろう。


 念仏を唱えるように脳を激しく回しながら、ゆっくり上体を起こす。体に別段おかしな所はない。それどころか気分が良いとも取れる。


 振り返って見たロードの姿は、直したのであろういつものローブをまとって正座をしており、俯いている顔からは表情を伺えない。

 が、かえってそれが良かった。

 多分俺も真っ正面からロードの顔は見れない。


 顔が赤くならないシャドウスピリットという種族にひどく感謝しながら、どうにか一言絞り出す。


「……ありがとな」


「……あ、はい」


 致命的に気まずい空気が発生した。言おうとしてた事が綺麗さっぱり消え去っている。

 何がありがとうだ、と自分を心の中で盛大になじりつつ、多少落ち着いた思考でステータスを開く。


ーーーーーーーーー

ライチ 男

シャドウスピリット族(進化可能) 種族Lv15 呪術騎士(転職可能) 職業Lv14

HP 355/355 MP 605/605


STR 1

VIT 195

AGI 1

DEX 10

MAG 270

MAGD 235


ステータスポイント110


【スキル】 SP4

「初級盾術9」「初級呪術8」「見切り6」「持久8」「詠唱加速3」「詠唱保持-」「体幹強化6」「鑑定4」「呪術理解3」「状態異常効果上昇:中」『生存本能』


【固有スキル】【種族特性】

「物理半無効」「魔法耐性脆弱:致命」「詠唱成功率最高」「浄化耐性脆弱:大」「魔法威力上昇:中」「MP回復速度上昇:大」「HP自動回復:中」「中級闇魔法3」「変形」「精神体」「影に生きるもの」


【装備】

左手

右手


ーーーーーーーーー


 凄まじいスキルの伸びだ。ついでにステータスポイントとSPがえげつないぐらいあるな……。本当に強い組み合わせだわ、シャドウスピリットタンク。


 是非とも誰かに勧めたいぐらい強い。スキルも種族特性も流石の強さだ。レイド戦のような単体相手は中々強いだろう。PSなくても強いのはありがたい。

 さて、順番に見ていくか。


 こういう戦闘後のリザルト画面みたいな雰囲気は中々好きだ。あれだけ苦労させられたのだから、それ相応の対価は受け取りたい所である。


 盾術が上がって覚えたのが『シールズプライド』と『ライトパリィ』。

 『シールズプライド』の方はパッシブ型で、両手で盾を構えていると、盾が弾かれにくくなるようだ。『ライトパリィ』は、名前の通り優しいパリィって感じで、相手の攻撃を「逸らす」行動に対して補正が入るとのことだ。


 上位らしき『ハードパリィ』は綺麗に相手の武器を弾くのだろうか。


 呪術が上がって覚えたのが『強酸アシッド』と『幻聴ウィスプ』。強酸は相手の武器や防具を溶かす酸を放つ呪術で、幻聴は文字通り幻聴を聞かせるだけのようだ。どっちも寂しい内容だが、強酸は中々使えるかもしれない。


 それにしても、呪術は今回あんまり使ってない筈なんだが、メルエスに一回かけたのが大分経験値になったのか?


 見切り、持久、詠唱加速、体幹強化の強化は素直に嬉しいな。鑑定は……敵が魔法を使うか否かがわかるようになる……しょぼいな。いや、結構使えるのか?


 呪術理解は……おぉ!対象が二人に増える『二重捕捉ダブルロック』が追加されてる!この調子で三重捕捉、四重捕捉と増えていってほしい所だ。


 中級闇魔法がレベル3になった事で覚えたのは『血染めの一閃ブラッディスタブ』。MP120で与えたダメージの5パーセント回復。魔法の詠唱が少し長く、タイムラグが発生するが、威力によっては十分使えるだろう。ある程度自己完結できるな……。


 二重捕捉で二人の相手の体力を吸収しつつ、血染めの一閃で回復。盾を構えながらMPとHPの自然回復を待ち、状態異常を掛ける……完璧だ。さて、スキルはこんな感じか……ステータスポイントは……VITに60振ってMAGとMAGDに半分ずつ振るとしよう。


 他のステータスが物悲しい目でこちらを見てくるが、一切無視だ。スキルは……また後で考えよう。


 次はダンジョン突破報酬とユニーククエストクリア報酬という豪華極まりない二つだ。ワクワクを隠そうともせずタスクを開こうとした時、いつもの電子音とともに通知が来た。


【あっぱらっちゃ様、フルメタ様、黒剣士様、PPP様、RTA様のパーティ『伝説級の木こり達』が回る緑の狂騒域のエリアボス『エルダートレント』を討伐しました】


【エルフの里『フラウトリット』への道のりが解禁されました】


【以降、『エルダートレント』が弱体化します】


【住民の態度が軟化しました】


「晴人……遂にやったか」


 西のエリアボスが落ちたか。これでプレイヤーの攻略は西を起点に大幅に加速するだろう。それに対して魔物陣営は、別段大きな変化もなく停滞している。

 友人の活躍は素直に喜ばしいが、イベントのことを考えると、最悪の一報といってもおかしくない。


 プレイヤーの全体的な強化が見込まれるな……明日ネチネチ責めてやる。


 下唇を噛みながらダンジョン突破報酬を確認する。


 墓守装備一式とSP1、ステータスポイント20、墓守の眠る場所への入場権限、リスポーン権限、百二十万エヒト……これは恐らく通貨だろう。


 都合よく金と装備が手に入った。墓守装備は近接用と遠距離用で分かれており、更に女性と男性用で分かれているようだ。

 ステータスポイントをMAGに振りながら、近接、男性用の墓守装備を出してみる。


「えーと? ……お? ……格好良い!」


 白を基調とした鎧に赤で血のアクセントが付いている。腰当てや籠手にはクロスした鎌の紋章が刻まれ、鎧の背中には天秤の装飾がなされている。白い兜からは赤い房が後ろに伸びており、非常に心をくすぐる。


「なぁ、ロード……これって本当にもらっていいやつ?」


「僕みたいに魔法で戦わずに、剣と盾で戦う墓守用の鎧ですね。……多分、大丈夫だと思います」


「多分……?」


「何処かから引っ張って来たという事でなければ、墓守の怒りを買うことは無いと思いますよ」


 何処か不安を煽るようなことを言われたが、目の前の装備はとてつもなく魅力的だ。特に目立たず、控えめな鮮やかさを放つ血の跡が良い。

 鑑定するとそれぞれの部位に何らかの付与がなされているようだった。


「兜が自然治癒速度上昇、鎧が魔法軽減、腰当てが物理軽減、足甲が持久力上昇、籠手がDEX上昇、盾が全属性耐性:小、剣がアンデッド特攻……」


「正式な墓守の装備ですし、そのくらいあってもおかしくないです。僕のローブは魔力が三倍になりますし」


「え、そっちの方がやばくないか」


 あのえげつない威力の光線の秘密の一端はローブか。何でもないように言ったロードは、俺と目が合うと何故だか軽く目を逸らす。まださっきの気まずさがあるのかもしれない。

 取り敢えず気まずさを振り払うために鎧に近づき、取り憑く。


 鎧にとりつく度に信じられないほど厚着をしているような違和感を覚えるが、これは慣れだろう。立ち上がり周りを見渡すと、いつもより視界が高い。

 鎧自体が大きいのか。まあ、盾を構えて敵の攻撃を真っ直ぐ受け止める前衛なら、これくらいの体格は必要だろうな。

 相変わらず持てない剣を無理やり剣帯に装着する。


 そろそろ剣術を取ろうかと一瞬思ったが、ステータス的にほぼダメージを出せそうになかったので諦める。MAGタンクに物理は要らないのだ。


「……テンション上がるな」


「喜んでもらえて嬉しいです」


 こちらを見上げながら言うロードの目には、嘘偽りのない喜色が浮かんでいた。

 やはり改めてみると、完成された造形美を感じる。妙にポンコツなあたりも拍車をかけて可愛い。……落ち着け俺、変な方向に走るな。ユニーククエストクリア報酬は……おぉ!? ……ん?


 表示された報酬は三つ。『特殊な進化ルートの解放』、指装備『白磁の指輪』。ここまでは良い。これから進化する身としてはルートの解放は千金にも値するからな。取得がだるそうな指輪を、効果は知らずとも入手出来たこともなかなか嬉しい。


 だが、三つ目の報酬。……これは。どう反応したらいいのか分からない。


「報酬『ロード・トラヴィスタナ』ってなんだよ……なんかすごいもの報酬に書かれてるよ」


 曖昧な感情そのままにロードの方を見ると、なにやら覚悟を決めた表情でロードがこちらを見つめ返して来た。


「ライチさんには、返しきれない恩があります。あなたが居なかったら、僕は今頃どうしていたか、さっぱりわかりません。だからせめて、僕の全部で、ライチさんに恩を返したいんです」


「…………」


 何も、そこまで気張って構えなくても良いのにな。別にして欲しいことや、欲しい物は特にない。強さとかそういうものは欲しいが、ロード自身を欲しいとは思わない。

 一瞬……本当に一瞬だけよこしまな考えが浮かびかけた自分を激しく律しながら、その旨を伝える。


「いや――」


 それは要らない。それほど大きな事はしていない。と言おうとしたが、これは実質ロードをおとしめる言葉にならないだろうか、と礼儀と言葉にうるさい俺の脳が忠告をして来た。

 さらに言えば、きっとロードはこれからこの墓地を取り戻すために色々と忙しくなるだろう。そんな一番大切な時期に、ロードの手を借りるという事は、流石の俺でも遠慮したい。


 こういう面倒な時に便利な言葉を、俺はよく晴人から聞いている。少し悩む仕草をして、ロードの金の瞳を見つめる。


「それじゃあ、貸し一つって事で……な?」


「か、貸し……ですか?」


「そう、貸し一つ。あとで必ず返してもらうから、忘れないでくれよ」


 ロードはひどく困惑した様子を見せた。何をどう困っているのかよくわからないが、これが俺の答えだ。

 しばらくあたふたとしていたロードは自らを落ち着かせるように深呼吸を一つした。


「ライチさん」


「おう」


「……また、ここに……来てくれますか?」


「……もちろん。何度だって来るさ。俺が死んだ時も、死んでない時もな」


「えへへ……それじゃあ、尚更外を綺麗にしなくちゃですね」


「盾が必要になったら呼んでくれ。飛んで来るから」


 その場合は文字通り天国経由で飛んでくる事になるが、今の俺はデスペナ半減だ。涼しい顔して飛んで行ってやろう。

 ロードは軽く口を開いて、軽く瞬きをした後、口を閉じて優しく微笑んだ。


「どうした? なんか言いたそうだったけど」


「いえ、何でもないですよ。本当に」


「……? そういう事言う奴って大体後々のちのち面倒になるんだが……」


「……話は変わりますけど、これからライチさんはどうします?」


「本当に話変わったな……うーん、取り敢えずこれから進化して……あ、そうだ」


 ゆらり、と宿敵の姿が脳裏に浮かぶ。かの天敵、グレーターゾンビの姿だ。始めて一日目で奴に殴り殺された事は俺の中で真新しい記憶だ。

 それとともに吐いた断末魔の一言も、記憶に新しい。


「……グレーターゾンビを倒したいかな。いつか絶対倒すって言ったし、自分の仇を取る感じだな」


「一回倒されてたんですね……」


「こう……ぺしゃんこに」


 指で人を作って握りこぶしを上から叩きつけるジェスチャーをすると、ロードは面白おかしく笑った。

 その笑顔に心をくすぐられるような気分になりつつ、咳払いをしてロードに宣言する。


「えぇと……俺、進化出来るみたいなんだが」


「あ、はい……目とか瞑っていた方がいいですか?」


「多分……大丈夫。とてつもない閃光を放ちつつ進化とかしない限りは」


 おそらく進化先も影関連だから、大丈夫だとは思う。ステータスを開き、種族の『進化可能』の文字をタップする。すると、電子音とともに進化先を記した画面が現れた。


「……これは中々」


 ロマンあふれるシステムだ。表示されたのは次の三つ。


『ダークフェアリー』

『アークスピリット』

『シェイプオブライフ』《ユニーク種族》


 上から順に、日本語に直訳すれば『闇の精霊』『高位精神体』『命の形』の三つだ。


 説明を読んでみると、影が深まって闇に昇華し、存在が精霊化したのがダークフェアリー。

 影を捨て去り、純粋な魔力の塊と化し、より高次元の存在となったのがアークスピリット。


 そしてユニーククエストの報酬、特殊な進化ルートの解放で選択できるようになったであろう《ユニーク種族》とやら。シェイプオブライフ。



ユニーク種族『シェイプオブライフ』

説明:限りない生と死を繰り返し、数え切れないほど生と死を見つめ、生命の本質を理解した精神体の行き着く果て。本来は存在し得ない特異個体ユニーク

 彼らはより生きる事、より死を近づける事に長けている。

 彼らは何を見て、何を知り、どこへ向かうのだろうか。



 説明見ても凄い生存力あることしかわからん……。取り敢えずハズレではなさそうだが、物珍しさにめっちゃ狙われそうだ。


「ロード、シェイプオブライフって種族聞いたことあるか?」


「シェイプオブライフ、ですか……?確か昔、お母さんが話してくれたお話に出てきたような……戦場の真ん中に偶然生まれた精霊が、死んでいく兵士たちの魂のかけらを集めて成長した姿、と聞いています」


「なるほど……ありがとう」


 子供に聞かせるおとぎ話の種族なのか、シェイプオブライフ。それくらい珍しい、というか説明で本来生まれないって書いてあるもんな。まあ、取り敢えず進化先はこれに決めとくか。

 画面のシェイプオブライフをタッチすると、おきまりの『シェイプオブライフに進化します、よろしいですか?』という表示が現れた。


 特に断る理由もなかったのではいを選択する。途端に視界が暗転し、一瞬意識が飛んだ。ようやく、第一回目の進化だ。

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