5月11日 8:13

久瀬亮平

ピンポーン


インターホンが鳴った。

さてどうしたものか。

思えばこの団地に来て誰かと接点をもったことがない。


やっぱり身内といえど勝手に転がりこんだらイカンのだろうか?


いやいやそれ以前に家主死んでるし。


んー、どう考えてもまずいな。

シカトだ。


「ピンポーン」


また鳴った。

シカトシカト。


「ピンポンピンポーン」


また。

え、どんだけしつけえの?

NHK?新聞?宗教?


……………いやはたまた警察か!?


とりあえず穴から覗いてみっか。


除き穴から見た先には派手目な年増女が立っていた。

どこがそうとは言えないが恐らく95パーの確率で水商売だろう。

そして恐らくシングルなのだろう。


ヤクザ歴は浅いが女のスレた表情とイラついた立ち格好とくたびれかたで分かる。


『すいませーん、また愛流お願いしたいんだけどー。』


あいる?

あいるって誰よ?

お願いって何よ?


とりあえず開けてみっか。


ガチャ


『わっ!』

女は後退る。


わ!じゃねーだろ朝っぱらから訪ねといて。


『なんすか?』


『いや、あの…おばーちゃん…』


『あー婆さんに用事ね。婆さん今寝てんのよ疲れて。』


『あー…今日ちょっと娘見ててほしかったんですよね~。私隣の日方なんですけどぉ。』


なんだ、あいるって娘か。

じゃあ何だ、娘預けててめーは遊びにでもいくってか。


すげーな、今の親。

お隣の婆さんに娘預けちゃうんだ?

団地の付き合いってそんなもん?


『いやー、わりーっすねえ。』

俺はやんわり断ることにした。


『なんとかなんないですかねえ?』

女は閉まりかけたドアに手をかける。


なんだこいつ?普通食い下がるか?

婆さんが疲れて寝てるっつったら普通「じゃあいいですー」じゃね?


『わりーけど、ごめんよっ。』

俺は半ば強引にドアを閉めた。


いやー、終わってんな。

娘大事に育ててんのかな?

大体シングルんちってママの彼氏に子供が殴られるって事件多いけど。


偏見じゃなくマジで。


俺もヤミ金やってた頃よく目の周りに痣出来たガキつれたママが来てたな。


普通に考えて転んだ時目ぇ打たないからね?人間。

ヤクザが気づくのに周りのゼンリョーな大人は気付かねえのかね。


「ピンポーン」


げ、またかよあの女しつこすぎだろ!


『すみませーん、お迎えにあがりましたー。ゆりのきデイサービスですー。』


あ!?デイサービス?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ワタシの死体~ミニマムストーリー3~ 大豆 @kkkksksk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ