9.27.悪魔について


「悪魔は自然と生まれ出る」

「「はえ?」」

「なにも可笑しなことは言っていないよ。悪魔は自然現象の一つ。浸食された森がある限り、そこから生まれるのさ」

「気持ち悪い話ですね……」

「まぁその根源は未だに誰も解決できちゃいないんだけどねぇ」


 悪魔の本をぽんぽんと叩きながら、レンは詰まらなさそうにそう言った。

 自然現象の一つとか怖すぎない?


 ……いや、妖怪と似たような感じなのか。

 あれも人間が考えた想像で生まれたものみたいな感じだしな。

 信じるから生まれる、みたいなね。

 いや、ややこいな!


「ま、簡単に言ったら浸食された森の主、って感じだね」

「ああー、だから俺が戦った悪魔はアンデットを従えていたのか……」

「それくらいで良かったね。力が強くなると森自体を動かしたりしてくるから相当強くないと生き残れないよ」

「……も、森は動かしてなかったな……」

「え、だとしたら今のテクシオ王国は……」

「そういうことだねぇ」


 悪魔と戦ってる最中ってところか。

 それなのによく援軍としてきてくれたな……。

 ほんとどれだけ気を遣ってくれているんだか……。


 てか二年戦ってるんだろ?

 テクシオ王国の悪魔って相当強いんじゃないのか?

 逆によく今まで生き残ってきたな……。


「で。魔王は浸食された土地をすべて消すと倒すことができる。直接叩いてもいいけどそれは無理だろうねぇ」

「なんでですか?」

「魔王の所に辿り着くまでに、数百数千数万の敵と戦うことになるだろうからね」

「無理だ……」


 ていうことは、それだけ浸食された土地が残ってるってことかぁ……。

 厄介だね。

 まぁそれは後回しでいいんですよ。

 ていうか雑学はいいんだよ!!


『結局、悪魔は団体行動はしないのか?』

「基本は一人行動だねぇ。自分の土地があるから、そこからはあまり離れたがらない。力が弱まるからね」


 お?

 だけどあの不死持ち悪魔、行動範囲めっちゃ広いよな。

 それでいて死なないんだろう?

 レンの言うことが正しいのであれば、不死の力が少しくらい失われていてもおかしくはないんだが……。


『ていうか三狐。お前ら一時期悪魔に憑りついていたんだろう? どうなんだよ』

『『『知りませんっ!!』』』

『あのなぁー……。何があったか知らねぇけど、お前らが教えてくれないとこっちだって対策が取れないんだよ。こいつの話聞いていても埒が明かなさそうだし、実際に戦ったハバルやしばらく一緒にいたお前たちからの方がいい話が聞けそうなんだ。だから早く話せ』


 お前たちの我儘に付き合っている暇はないんだ。

 頼むから早く話してくれ。

 一刻を争うかもしれないんだから。


 俺が少しきつめの口調でそういうと、三狐は耳を垂らしてしょんぼりしてしまった。

 そんなに言いたくないのだろうか。


『『『……オール様は、私たちがなぜ憑りつかなければ生きていけないか知っていますか?』』』

『え、知らん……』

『『『実体が無いからです』』』

『は?』


 ……えっ???

 いや、でも俺の背中に乗ってるっていう感触はしっかりするぞ?

 子供たちもしっかり転がして遊んでいたじゃないか。

 触れるのに実体がないってどういうことだよ。


 ……ちょっと待てよ。

 そういえばこいつらと出会った時って……。

 魔物の群れを倒した……直後だったな。


『いや待て、でもお前ら山の主になる為に云々とか言っていなかったか!?』

『『『主になれば山に憑りつくことができるようになるのです。魔力は貰えますから、自由に行動ができるのですよ』』』


 悪魔に憑りつきながら機会を見計らっていたってことなのかな……。

 もしかして、俺あの時三狐が憑りついていた悪魔殺しちゃった?

 やべぇ全然気づかなかったぞ。


『……じゃ、じゃあそれはいいや。実体が無いってどういうことだ』

『『『悪魔に盗られたんです』』』


 その次に三狐たちの口から語られるのは、想像もつかない程の地獄だった。

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