9.25.知識の共有
さて、情報収集を開始すると言ってはみたが、具体的な方法は決まっていない。
なんせ敵が未知数だからな。
どこに拠点を置いているのか分からないし、数も分からないときた。
ダークエルフと悪魔が敵の中にいることだけは分かるんだけど……それ以外はほとんど分からん。
なので。
『まずは人間に話を聞いてみるか』
『『『えっ?』』』
『なんだよ』
『『『人間が知っているとは思えませんが……』』』
『そう言い切ることはできないと思うぞ?』
確かに人間もダークエルフのことや蘇生魔法のことは知らないだろうな。
だが、人間は様々な場所に足を延ばす。
世界地図も作られているだろうし、未踏の地、というのはあまりないはずだ。
それに、俺たちみたいに今の世代だけで集めてきた情報より、人間が何代にも渡って受け継がれてきた知識や記されてきた本には必ず有益な情報が眠っているはずである。
調べてもらえれば、俺たちが欲しい情報が出てくるはず。
『ということでベリルのところに行こう。ガルザでもいいな』
どっちが近いかな?
ガルザの方が今は近いからそっちに行くか。
ベンツやヴェイルガには引き続き毒に侵された仲間の容態を見守ってもらうことにして、俺と三狐はガルザのところへと向かうことにした。
子供たちを守ってくれと言っておいたので、ガルザは周囲を警戒しつつ子供たちと遊んでいるようだ。
『ガルザ、今いいか?』
『なんでしょうか』
『ハバルは何処にいる? 話をしたいんだが』
『では通訳が必要ですね。子供たちは……』
『俺たちが帰ってきたからもういいぞ。というわけで頼む』
『分かりました』
最近こいつに任せることが多くなってる気がするなぁ。
頼ってもいいとは言っていたけど、ここまでしてもらっていていいものか。
ああー、これですよ元日本人。
何もしていないのはなんか違うっていう感覚のやつ。
まぁでも、今はこいつにしか頼れないから任せるか。
ガルザの案内の下、ハバルがいる場所へとやってきた。
うーーーーん、ギルド。
ベリルとセレナもいる。
はじめっからこっちに来ればよかった……。
『あれ、リーダー!』
『まぁ、いいか。何度もすまんな。ベリルとハバルを呼んできてくれ』
『あいーっ!』
セレナは指示を聞いた瞬間、ハバルのズボンを咥えて振り回す。
ベリルには既に話を通したようだが……。
会話ができないからってちょっと乱暴だぞ、セレナ。
なんだなんだとたたらを踏みながらこちらに引っ張られるハバルは、俺を見てなんとなく状況を理解したらしい。
だがセレナは引っ張るのを止めない。
なので顔を両手で包んで揉みまくってなんとか離してもらうことに成功した。
『むにゅぎゅぎゅ……』
「やめんかい……。てか力強いなこの子」
「エンリルの子供は大体そんな感じですよー」
「大人でこんなに引っ張られるんだ……。ベリル様はもっと大変なのでは?」
「振り回されます」
「手加減しろよお前ー」
『ぎゅむむむむ……』
触り心地が気に入ったのか、ハバルは未だにセレナの顔を揉み続けている。
いいなー、俺もやりたい。
だがやって欲しくはない。
ていうか話するぞ!
早く来いっ!
俺が一回吠えると、ようやく二人はこっちに歩いてきてくれた。
体がでかいから外じゃないと話せないんだよなぁ。
やっぱ不便だ。
『連れてきたー!』
『はいはい、ご苦労さん。ベリル、話は通してくれたか?』
「はい。皆さん受け入れてくれるそうです。まだ近隣住民の方には伝わり切っていないですが、しばらくすれば全員の耳に話は入るかと」
「大所帯になったな……」
『それは元からだ。で、本題だ。悪魔やダークエルフに関する資料とかないか?』
「「資料?」」
人間の世界になら、この二つの種族についてに記述があってもおかしくはないのだが……。
あ、そういえばこの世界の本って貴重品なのかな?
となると本はあんまり期待できないかも……。
いや、でも紙とか結構見たぞ?
どうなんだ?
「ハバルさん、何か知ってます?」
「ダークエルフについては分からんが、悪魔についてなら俺も一回戦ったことがある」
『住んでいる場所とか、何か情報があれば欲しいんだが』
「まずは俺が知っていることだけでもいいか?」
『構わんぞ』
戦ったことあるってすげぇな。
これは有益な情報が手に入るかも。
「俺が戦ったのは三本角の悪魔だった。まったく知らない闇魔法で攻撃してきて焦ったが、物理攻撃だったから魔法で何とか攻撃は防げたな。その時は確か……アンデッド討伐に向かった時だったか……」
「いつくらいの話なんですか?」
「二年以上前の話ですよ。ここがもっと荒れていた時のね」
昔は荒れてたって言ってたもんな。
浸食もされていた場所もあったんだっけ?
それだったらアンデッドが増えていてもおかしくはないよなぁ。
俺はまだ出会ったことないけど。
「確かアンデッドを従えていたなぁ……。あの悪魔より手下のアンデッドの方が厄介だった記憶がある……」
『悪魔自体はそんなに強くないのか?』
「俺が戦ったのは、だけどな。あとはそいつらの棲み処だっけ? 魔族領ってところがあるんだが、それがここから南東にずっと行った先にあるんだ。だが奴らは闇魔法のプロ。ワープゲートを使って移動できる個体もいるらしい……」
『なるほどな』
南東か。
場所が分かったのは大きいな。
魔王がいるとかあの不死持ち悪魔が言っていた気がするし、ちょっと今からぶっ飛ばしてこようか。
いや、でもまずはフスロワを何とかしないとな。
しっかし、ワープか。
俺たちの間では普通に使える物になってしまっているが、結構レアなんだな。
知らなかったよ。
てなると、どこから攻めてこられても不思議じゃない、か。
これはちょっと警戒を強めないといけなさそうだな。
『ふぅむ……アンデッドといい、毒といい……。厄介な奴らしか敵にならねぇな……。俺とメイラムしか毒には対抗できないし……』
『何卒お気をつけを』
『そうだな』
そこが心配だよな……今回は。
「あっ」
「ベリル様、どうしました?」
「レンおばさんなら何か知ってるかも」
『確かに』
「特級魔術師ですからね。早速聞きに行きましょう」
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