9.24.当時の状況


 さて情報収集だ。

 今できることを考えてみよう。


 敵はダークエルフ。

 復活の手引きをしたのは不死持ちの悪魔なので、そいつも敵ということになるだろうな。

 あの時しっかり始末しておくべきだったか。

 いや、封印魔法とか覚えておいた方がいいかもな。


 そんなのがあるかどうか分からないが……。

 リューサー辺りなら知っていそうだ。

 聞きに行く時間はなさそうだけどね……。


 三狐は封印魔法について何か知ってるかな?


『その辺どうだ?』

『『『知らないです』』』

『はっきり言うねぇ……』

『私たちの魔法は特殊特化みたいな感じですから』

『それは分かる』


 天候に、空間に、重力……。

 うん、普通じゃ絶対に使わなさそうな魔法ばっかだもんな。

 自然現象を魔法で引き起こそうって言うのが凄いのよね。


 ……ん?

 そうなってくると俺の風魔法結構自然現象起こせるぞ。

 敵側の本拠地が分かったらぶっ壊してやろうか。

 まぁそれはおいおいやるとして……。


 封印魔法がないのであれば、光魔法で動きを制限し続けるしかないか。

 太陽の杭とか聖槍とかであれば何とかなりそうだしな。

 見つけたらそれで固定することにするか。


 で、ダークエルフはアンデットになってる可能性が高いんだったな。

 そうであれば聖水や光魔法での攻撃が有効か。


『……ヒラがやられたのは痛手だな……』


 俺の次に光魔法を操るのが上手いからな……。

 回復魔法も持ってるし。

 でも攻撃魔法はあんまり持っていないんだったな。


 てなるとニアだな。

 シャロの奥さん。

 子供たちがいるからできれば前線には出てもらいたくなかったが、俺だけだとどうしてもできないこともあるかもしれない。

 子供たちはシャロに任せて、俺と一緒に来てもらうとするか。


『兄ちゃん!!』

『うおびっくりした。ベンツか……』


 一瞬で俺の隣りに来たベンツに、その場にいた誰もが驚いた。

 だがいつものことなので、ベンツだということが分かった瞬間、全員が気を抜く。


 しかしずいぶん血相を変えて走ってきたみたいだな……。

 どうした。


『ルースが起きた!!』

『まじか!! セレナ! 後は頼んだって伝えておいてくれ!』

『分かったの!』


 ルースが起きてくれたのは大きいぞ!

 当時の状況を聞きに行こう!


 ベンツと共に第三拠点に走って戻る。

 子供たちはシグマとラムダが先輩風を吹かせてくれているおかげで、こっちの様子には気づいていないみたいだな。

 それならそれでいい。

 あとでなんかあげよう。


 第三拠点まで突っ走っていくと、ルースは外に出て木の側に座っていた。

 その隣にはヴェイルガがいるようだ。

 メイラムは中でまだ様子を見てくれているのだろう。


『大丈夫かルース』

『一番、離れていましたから……』

『うーむ、やはり魔力総量が減っているな……。話せそうか?』

『ええ、今であれば』


 んっ?

 なんか変な声だなって思ったら、こいつ木霊を使って俺と話しているのか。

 ていうことは……まだ喉は本調子じゃないんだな。

 あんまり喋れないから、木の側で待っていてくれたのね。


『無理はするなよ』

『はい。ダークエルフが本拠地に来た、ということは知っていますか?』

『バッシュが教えてくれた。お前が見ていたと言っていたな。……何が起こったか、教えてくれ』


 ルースは小さく頷いて、あの時起こったことを振り返るようにして話始める。


『私は土魔法で周囲を常に警戒していました。その時……オール様たちが本拠地から離れて少し経った後でしょうか。一人のダークエルフがヴェイルガと同じくらいの速度で、こちらに接近してきていたんです』

『……ということは、他の仲間たちに伝えるのが間に合わなかったのか』

『はい……。本拠地には木があまりないので……』


 本拠地の洞窟の前は小川だからな。

 そこを越えたら木はあるが……近くにはない。

 バッシュとヒラが倒れていたのが川の近くで、他の二匹は洞窟だった。

 ルースの足じゃ伝えに行くことはできなかったんだろう。

 ヴェイルガ並みの速度で走ってくるんだから間に合うはずがない。


『バルガン様がヒラを助けようとしましたが、根に絡まれて……』

『で、そのダークエルフは一体何をおしたんだ?』

『種を、本拠地に投げ込んだんです』

『……それだけ?』

『それだけです。小さな種でしたが……まさかあんなものが……』

『一つ聞きたい。臭いはどんな感じだった?』

『腐っていてよく分かりませんでした。目視と土魔法での監視でダークエルフだと分かっただけなので……』


 腐っていた、か。

 てなるとやっぱり……。


『……復活してんな、あの野郎』

『『『そう考えるのが妥当かと』』』


 だよな。

 次あったら今度こそ消しとかないと……。

 復活できないくらいに。


 あとの問題は悪魔か。


『よし、調査するぞ』

『『『了解です』』』

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