6.34.獲物がいっぱい


 土狼の視界共有を切ると、なんだか外が騒がしい。

 なんだと思って見てみると、どうやらレイたちが大量の獲物を持って帰ってきてくれたようだ。


 俺の無限箱と似たような魔法を持つヒラが、光魔法で作り出した箱に獲物を入れている。

 小さい箱だが、それでも獲物を入れるには十分な大きさだったようだ。


 今はワープ魔法を使えるバッシュが、第二拠点とここを繋いで獲物の入った箱をどんどんこちらに持ってきている最中だ。

 一体どれだけ狩ったのだろうかと思い暫く見ていたのだが、どうにも止まる気配がない。

 量が多いに越したことはないのだが……そんなに獲物が居たのだろうか。


『レイ』

『あ、オール兄ちゃん! 見るの! これ全部皆で狩った奴なの!』

『そうか。向こうをお前たちに任せて正解だったな』

『フフン!』

『で……随分な量があるようだが……』


 もう既にレイたちの背を越える程に積まれている光魔法の箱。

 ヒラはこの魔法を光箱と名付けた様なのでこれからはそう呼ぶが、まだ運ばれてくる。

 一体向こうで何があったというのだろうか。


『え? んー、いっぱいいたの。魔物っぽかったけど、けちょんけちょんにしてやったの』

『群れで移動でもしてたのか?』

『あ、それならドロが詳しいと思うの。今から呼ぶから待つの』


 ワープ先にバッシュの許可を取ってから入り込み、また許可を取ってドロを連れて戻って来た。

 話は向こうで付けてくれたようなので、来るや否やすぐに話をしてくれる。


『魔物の事だよね?』

『ああ。これだけの量を短期間で用意するのは難しいだろうからな』

『うん、魔物の群れみたいなのが来たからそれを倒したんだ。前にオール兄ちゃんとベンツ兄ちゃん、あとガンマ兄ちゃんで対峙した時の魔物みたいだったよ?』

『……なに?』


 あれは随分前の事だったはずだ。

 悪魔が来てからは一切群れ……というか魔物の軍だな。

 それを送り込むようなことはしなくなっていたはずなんだが……それがレイたちにあてがった第二拠点に来たのか。


 実際には見ていないから、それが本当に俺たちが対峙した時の魔物かどうかは定かではないが……警戒はしておいた方がよさそうだな。

 難癖付けて攻めてこられたりでもしたら敵わん。


 でも、それをこいつらだけで始末してしまったのか。

 その時第二拠点に置いている土狼に視界を移していなかったから、全く分からなかった。

 教えてはくれないからな、俺の土狼。


『怪我は無かったか?』

『うん、それは大丈夫。僕が泥魔法で足止めして、リッツとウェイスとレイが遠距離で全部倒したから』

『おお、いい連携ができるようになっているじゃないか。実際に見たかったなぁ』

『へへっ』


 怪我無くこれだけの魔物を討伐できれば上等だ。

 暫くは任せておいても本当に良さそうだな。

 魔物の軍が来たって事だったから少し不安だったけど、問題ないのであればそのまま向こうでの活動を続行してもらおう。

 その方がこいつらの力にもなるだろうしな。


 この辺の魔物や動物では勝負にならなくなるほどに皆強くなっている。

 個体差はあるが、極めている魔法だけであれば俺にも引けを取らない程に強くなっていると思う。

 こいつらはその事を気が付いていないって言うか、謙遜しているみたいだけど十分な戦力になっている。

 もう少し自信を持ってもらいたいものだな。


 ま、俺が模擬戦でその魔法全部対策しちゃうのが問題なんだろうけどね。

 でも自分の弱点を知っておくというのは非常に大切な事だ。

 だから俺は絶対に容赦はしないぞ。


『今度様子を見に行く。その時にでも全員で模擬戦をするか?』

『本当!? じゃあ皆に伝えとくね!』

『ああ。それと、皆に話がある。今日はこっちに帰ってこれるか?』

『大丈夫だと思うよ。それも伝えとくよ。運び終わったら洞窟に行けばいい?』

『おう。じゃあそれで頼む』


 俺からの指示を仰いだドロは、バッシュに許可を取ってからワープの中へと入って行った。

 もう暫くは運搬作業が続く様だ。

 本当にどれだけの魔物を狩ったのだろうか……。


 よし、じゃああとやることは……っつでもベンツに頼めば済むことだ。


『ベンツー。いるかー?』

『いるよ』

『皆を集めてくれ。全部だ』

『……えーと、いつものじゃなくて、群れ全部?』

『そうだ』


 今から俺が話そうとしている事は、全員に聞いておいてもらいたい事なのだ。

 様々な反応があるだろうが、俺はそれを全て受け入れよう。

 群れを守る為の策だからな。


『凄い重要な事なんだね』

『批判もあるだろうが……な』

『……分かった。子供たちは?』

『ああ、そうだな……。可能であれば連れてきてくれ。子を持っている奴の所で話そうか。場所は洞窟の中だ』

『了解』


 パリッという音を立て、ベンツは皆を呼びに行く。

 俺はゆったりとした歩調で洞窟の中へと戻り、一番初めに席についておいた。

 とは言えいつもの指定席なのだが、体が大きすぎるためここまでしか俺は入れない。

 後は全員が来るのを待つばかりだ。

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