5.56.周囲散策
朝起きてふと思ったことがある。
そう言えば、周辺の散策はあまりしていなかった。
いや、実際には皆が周辺を歩き回って狩りに困らない程度の縄張りを得てはいるのだが、それ以外の所は全く持って見に行ったことがない。
それは俺だけではなく他の皆も同じだろう。
ちょっと今の縄張りを整理してみたいと思う。
まず住処から東方向。
この方向には魔法の練習場として使っている草原が広がっている。
近くには川も流れているので、疲れたり喉が渇いたりしたらそこで水分補給ができる。
川は随分と遠くまで流れているようなので、下って行けば大きな川か海に辿り着くかもしれない。
その周囲には森が広がっている。
そこでよく狩りをする為、一番皆がよく知っている場所は東側である。
次に南方向。
南には山が三つ連なっている。
その一つの山には湧き水が湧き出ている様で、そこから周辺の山に水が供給されている様だ。
山の起伏が少し激しいので、滅多な事がない限りは近寄ることは無い場所である。
西方向には渓谷が続いている。
絶壁の真下には少し大きな川が流れており、少し上がっていくと滝が何個か続いていた。
渓谷は大きな山一つがぶつかる所辺りで途切れている。
それでも随分と長い渓谷だ。
秋になったら綺麗な紅葉が見られるだろう。
北の方向は緩やかな山……というか丘が続いている。
とは言ってもしっかりと木も生えているので、丘というより森という方が正しいかもしれない。
まぁ少し起伏のある森……?
のような場所である。
ここまでが大体の縄張りの範囲である。
俺たちは南西から来たので、その方向は少し知っているのだが……他の場所は殆ど知らない。
何があるのかは把握しておいた方が良いかもしれないからな。
そろそろ周辺の探索もしておこう。
『んー、俺と三狐たちだけで行くか』
『『『はい?』』』
あんまり遠くに行くなって皆に言ってたの俺だしな。
俺が安全を確かめてから行動することを許すことにしよう。
さて、こっそり行くぞ。
どうせまた見られたら俺も行くー、僕も行くーとか言い出すだろうからな……。
皆は各々が任せられたことをしておいてもらいたい。
まぁ匂いでバレるかもしれないけど……。
流石に俺に着いてこれるのはベンツくらいだろうし、放っておいてもいいだろう。
『じゃ行きますかね……』
まずは西に行ってみようか。
◆
誰にもバレずに来ることはできたのだが……。
『西何にもねぇな……』
『『『森ばかりですねー』』』
意外と普通の土地だ。
周囲は森に囲まれており、人が入ったような形跡は一切ない。
その為か、大樹がそこら中に生えており、根っこが地面を突き破っている。
何処かの映画で見たような光景だ。
こういうところは住みやすくて良いかもしれないな。
だがどうしても守る物があるとこれをどう戦術的に使えるかを考えてしまう。
これは悪い癖だろうか?
まぁ、今のとこはこれといった脅威もないし、特に気にすることは無いだろう。
しっかし綺麗な場所だな。
これだけの大樹……。
一個くらい枯れている木があってもおかしくはないと思うのだけど、地面にもしっかりと日の光が差し込んでいるので、地面も緑で一杯だ。
なんだろう。
この場所こそが俺にとって相応しいような場所のような気がしてならない。
ほら、俺白色だし。
毛並みとかめっちゃ綺麗やろ?
そう言う事やで。
『『『何を考えているんですか?』』』
『何でもないぞ。そう言えばお前らはこの辺とか来たことあるか?』
『『『私たちは無いですね。この辺で来たことがあるといえば、それこそ竜の土地くらいです』』』
色んな宿主に憑りついているのに、この辺には来たことが無いのか。
まぁ悪魔に憑りついていた時期があるとか言ってたしな。
辺境の地にいた事の方が多いのだろう。
こいつらはあんまり当てになりそうにないな……。
『『『オール様ぁ。どれくらいの期間散策をされる予定ですか?』』』
『あ、そう言えば決めてなかったな。とりあえず東西南北全て見て回る予定だったけど……』
ちょっとでも把握しておいた方が良いからな。
んーだけどどうしようか。
一々帰るのも面倒くさいんだよなぁ……。
『まぁ四日くらいかけて散策するかな』
一つの方角に一日を掛ける感じで丁度いいだろう。
西は特に何もなかったけど……。
いや、何もないってことは無かったか。
綺麗な場所だからな。
ここはできる限り綺麗に保っていきたいな。
俺とりあえず森のヌシだし。
管理くらいしておかないとな!
って、気が付いたらもう夕暮れか……。
今日はこの辺で寝泊まりしますかね。
次は北に行ってみようか。
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