5.55.ショボン
デルタはすぐに俺が治癒魔法で治癒してあげた。
だが電撃を喰らって受けた時に貰った痺れは取れなかったようだ。
今はそれに苦しめられている。
『さ、触るな……。ぜ、ぜ、絶対にささ触らないで……』
『うずうず』
『うずうず』
『止めてやれ馬鹿垂れ』
放っておいたらすぐにでもこいつらは弄りにかかるだろう。
とりあえず止めておく。
まぁこうなったのってラインのせいというのもあるだろうけど、俺が多対戦なんてさせたからっていうのも大きいんだよな。
それに電撃回避してしまったし。
うん、すまんかった。
『デルタ、大丈夫か?』
『い、痛みはななっいけど……喋るだけでもきききっつい……』
『うん、ちょっと寝てろ』
んー、こうして見てみるとラインの雷魔法って結構強力なんだな。
だって一撃だろ?
それでこれだけの後遺症っていうか……相手を動けなくさせるだけの痺れを体に引き起こさせるんだから、結構すごいよな。
俺の攻撃も多少はそれに付随する能力を持っているだろうけど、ここまでではない。
いいなぁ属性攻撃。
俺も欲しい。
『えーっと、今回の戦闘だけど……』
参加したのは、ラインとデルタとレイン。
最初の動きとしては完璧だったように思うが、結局は各個撃破されてしまった。
動きとしては良かったが、連携としてはあまり良くなかった気がする。
俺も大層な口叩けるほどの死線を潜り抜けたわけでもないし、そんな知識もないけど、負けたっていう事実があるから仕方がない。
『何が悪かったんだろう……』
『あー……。お前ら、助け合いとかしないの?』
『え?』
まずレインだ。
ラインが閉じ込められた時、レインはずっと準備を整えていた。
中断しようとは思わなかったのだろうか?
あの位置からだったら前線で何が起こっているか理解できたはずだから、行動することはできたはずである。
自分の魔法を発動させるのに、どれだけ集中しなければならないかは知らないが、味方をサポートできない遠距離部隊って本当に要らない。
流石にそれくらいは俺でもわかる。
『ショボーン……』
『お前は二匹をサポートできた。自分ばかりに準備を費やしては意味がない……。強い魔法を使うのは良いが、もう少し考えないとな』
近距離、中距離、遠距離の三体が揃ってんのに、流石にこの結果はなぁ……。
ぶっちゃけ俺殆ど動かなかったし。
弱い魔法でも使い方次第で優秀な魔法になる。
もう少し魔法の種類を増やしてもらわないとな。
『次にライン』
『うっ……!』
『言わなくても分かってると思うが……仲間を誤射など言語道断』
俺の体が大きくて邪魔だったとはいえ、接近しているはずのデルタがいる事は知っていたはずだ。
なのに強力な雷魔法とは……。
『俺のことも考えとけよ!!』
『ごめんなさぁあい!!』
あれは俺でも痺れて動けなくなるほどの電力があるだろう。
そんなもん普通にぶっ放すんじゃないよ恐ろしい。
でも足の速さを活かして撹乱に回ったのは良いと思った。
結局閉じ込められて動きを封じられ、デルタの援護に行けなくなったのは問題ではあったが、動きとしては悪くなかったと思う。
あれだと俺はラインに注意を向けておかないといけないからな。
『だけどもう少し周りは見ろ』
『ショボン……』
またベンツにしごいてもらうことにしよう。
次にデルタ。
デルタは純粋に……。
『接近戦としての能力が低い』
『うぐぐ……』
デルタが得意なのは中距離からの遠隔攻撃。
これが土魔法を使う奴が一番得意とする戦闘方法だ。
今回は接近して戦うのが得意な奴がいなかったから、闇魔法と土魔法の複合魔法の練習としてデルタが接近戦を担ったのだろう。
判断としては良いとおもった。
だけど……。
『俺相手に数で戦うなよ……』
『たたっ確かに……』
俺の戦い方はここ数年を通して皆が知っている事だ。
ただでさえ魔力総量も多いのだから、出せる魔法も多くなる。
それが水狼や土狼であれば尚更だ。
まぁデルタのお陰で、土魔法の対処法は分かったからな。
その辺はありがたいと感謝している。
ていうか……。
『俺にぶつける土魔法の規模が小さすぎる。言ってしまえば雑魚』
『……』
俺相手にネズミて。
『舐めとんのか!!』
『ごめんなささっい……』
ま、本当の闘いなら相手の使う魔法なんて分からないんだから、こうした間違った戦い方をしてしまうのは無理もない事だ。
結果としてあえて不利な状況を作り出して戦ってみるという、デルタの行動も間違ってはいないだろう。
今回の模擬戦で何がいけなかったのかを確認してくれたら、今回は満点だ。
『全員が全員、この経験を次に活かすように。シャロとニアはまた今度ペアを組んで俺にかかってこい』
『おう!』
『うん!』
よーし、今日は帰るぞー。
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