5.54.多対戦
『ニア~。大丈夫か~』
『…………動けない』
『まぁそういう魔法だからな』
ニアは縮こまって固まっている。
回避し続けてたけど、諦めて小さくなってしまったんだよな。
二本の槍が体に突き刺さっている。
『ニア。なんで空間魔法で防がなかったんだ?』
『私はオール兄ちゃんみたいにパッと作り出すことが出来ないのよ……。まだ発動に時間がかかるの』
『? でもさっきは構えた時にはすぐに発動できてたじゃないか』
『始まる前から準備してたの』
『それずるくないか!?』
フライングだー!
まぁ勝ったからいいけどね……。
よし、じゃあ次だ。
『次はどいつだ?』
『『『はい!』』』
デルタとライン、そしてレインが一斉に声を上げた。
その後、それぞれが目線を向け合って火花を散らす。
いやぁ……そんなに盛んにならないで?
それはそれで怖いから。
あ、でも三匹一斉に来てもらえれば、俺も訓練になるかもしれないな。
一匹一匹だと結構すぐ終わっちゃうし、たまにはそういうのもいいだろう。
連携の練習にもなるだろうしな。
『よっしゃ、お前ら三匹まとまってこい』
『え? 大丈夫なの?』
『問題ないぞ。負けないからな』
『さ、流石にこれでは負けてられないね……』
『よーしやるわよーっ!』
話はまとまったので、とりあえずまた距離を取る。
これで負けたらやばいなぁーとは思うけど、それならそれでこの子たちの自信に繋がるからいいか。
全力で行くけどなっ!
相手はデルタとラインとレイン。
デルタは土魔法と闇魔法を使う。
前にも説明した通り、デルタは闇魔法を複合して土魔法を使用するので、俺はデルタの土魔法を阻止することはできない。
続いてライン。
雷魔法という発動速度の速い魔法を持っているので注意が必要。
水魔法との複合はあまり上手くいっていない様だが、中距離攻撃を得意としているので間合いの取り方も気を付けなければならない。
一度でも攻撃を喰らってしまうと暫くは動けなくなる程の威力がある。
今回は多対戦という事なので、ラインの雷攻撃だけには当たらないようにしておかないと、他二匹から集中砲火が来そうだ。
マジで気を付けておこう。
最後にレイン。
高火力の水魔法を連発する。
ただ、昔と同じ様に発動までに時間がかかるので、それさえ阻止してしまえばそんなに脅威ではない。
準備を整えさせてしまった場合、俺は全力の防衛に入らなければならなくなるだろうが……。
さて、相手はこんな感じだ。
この三匹がどのように連携をしてくるのかがとても楽しみである。
うむ、俺も気合入れて行かないとな。
負ける気はないもんね!
『オール兄ちゃん! 準備は良いー!?』
『おーう! いつでも来い!』
今回は三匹を相手にするという事なので、少し広く間合いを取っている。
どうやって攻めてくるかも気になるしな。
だが今までまともな団体戦などしたことがないはずだ。
どうなるかな?
まず初めに動いたのはレイン。
早速水魔法を使って準備をしている。
これは早急に止めておかなければならないのだが……。
流石にさせてはくれない。
デルタとラインが前に出てきて各々の得意な魔法を使用する。
デルタは土魔法と闇魔法の複合魔法、『人形遊び』。
土の塊を様々な形に変えて戦力にする魔法だ。
狼の形より、鳥やネズミといった小動物を作るのが得意らしい。
今回は十匹程の大型のネズミを作り出して一緒に突撃してきている。
一方、ラインは纏雷を使用して速度を上げ、デルタとは全く違う方向に走って水弾を俺に向かって放ってきていた。
それ自体は簡単に防ぐことが出来るのだが、これは俺を惑わせるための物だろう。
攻撃を与えることをメインにして考えている行動ではない。
『中距離のラインは囮。デルタは数で接近戦で時間を稼ぐ。その間にルインの魔法の準備が整うって事ね』
中々考えているではないか。
自分の役割をしっかりと理解しているというのは良い事だ。
さて、では俺はそれを崩していこう。
『まずはお前だライン!』
『ガッ!? 痛ああ!!』
ラインが走る速度と距離を予測し、空間魔法で閉じ込める。
簡単な箱だ。
即興で作ったので脆くなっているのだが、一時凌ぎにはなる筈だ。
思いっきり頭をぶつけてもんどりをうっているが……。
まぁ戦闘なので許せ。
『次はデルタ! 数で俺に勝てると思うなよ!』
『ゲッ!?』
水狼を二十体ほど出現させる。
土魔法は水魔法に意外と弱いのだ。
土が水に溶けて崩れてしまうからな。
水狼はネズミを集中的に狙いに行き、ばっくりと食べてしまう。
体の中でネズミが溶けたと同時に、水狼も解除された。
残るはデルタだけだが、一匹になって慌てている様だ。
それは駄目ですねっ!
『太陽の杭』
『あがっ!? う……うわああやられたああ!!』
とりあえず二匹。
最後はレイン。
『無限箱』
『よし! 準備完了! いっけー!!』
お前今デルタが前でやられてるんだぞ!?
普通に放つとか何考えてんだ!
無限箱で魔法を収納しておいてよかったぜ。
『え!? あれ!?』
『残念』
太陽の杭を俺の目の前に出現させ、ワープを使ってルインに突き刺す。
これで三匹だ。
だが、まだラインの方は完全に止まっていない。
ふとそちらを見てみると、既に閉じ込めた箱は破壊して外に出てきていた様で、俺に向けて何かをやろうとしていた。
腕を振り上げ、その腕には雷が纏われている。
『雷線陣!!』
『えっ』
この技はよく見ていたので知っている。
俺の隙をついて放とうとしていたようなのだが、それを今やられるとちょっとマズい。
今ラインが放った魔法は雷魔法で、一方こうに一線の雷を走らせることが出来る魔法だ。
言ってしまえば雷円陣の一点集中バージョン。
遠距離まで届く良い魔法だ。
だが今は良くない!
俺は問題ないのは確かだ!
見えてるから回避するなんて容易い!
しかし!!
先ほど俺は水狼を使ってデルタの攻撃を無力化した!
それもデルタの周囲でだ!
つまり!!
水に電気が走ってデルタが感電する。
『…………』
すまんデルタ。
ひょいっと避けてラインの攻撃を回避する。
そして、電気が水に触れた。
『あばばばばばばばばばば!!?』
『あっ!! で、デルタァアア!!』
『ええ……』
『『ええぇ……』』
…………俺は無実だ。
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