5.57.北散策


 周囲散策二日目。

 今回は北の方に向かって歩いているのだが、こちらの方向はリューサーがいる竜の住処がある方向だ。

 とは言っても森を抜けなければそこに辿り着くことは無い。

 あの場所は普通に遠いのだ。


 ま、あの辺まで散策しようとは思わないし、また行って襲われても敵わないからな。

 リューサーはしっかりとリーダー争いに参加しているのだろうか?

 やっているとは思うけど、なんとなく心配である。


 まぁここは信じてやっておかないとな。

 あいつなら何とかしてくれる事だろう。


 と、それは良いのだけど……。


『なんか……息苦しいな。気のせいか?』

『『『私たちには分かりません』』』

『あ、そうなん』


 という事はやっぱり気のせいなのだろうか。

 なんか鼻が詰まるというか……そんな感じがするんだけどなぁ。


 えっと、とりあえずこの辺りは西と同じで普通の森だ。

 起伏もそんなに激しくはないが、木自体はそんなに大きいものではない。


 うーん、普通に狩りとかでは使えそうではあるな。

 でも獲物の姿は一回も見てないなぁ……。

 何でだろう。


 その事が気になりつつも、とりあえず前に進んでいく。

 暫くは森が続いていたのだが、どうにも息苦しさがはっきりとわかるようになってきた。

 やはりこれは気のせいではないだろう。


 だが原因は調べておいた方が良い。

 さて……何が原因なんだ?


『スンスン……。んー、匂いでは分からんなぁ……』

『『『そんなに苦しいですか?』』』

『いや、苦しくはないが……違和感がすごい』


 ここに来てから急にだもんな。

 何か原因があるはずだ。


『あ。そうだ』

『『『?』』』

『…………天でいいか』

『はい?』


 風魔法を使って天の周囲に風を起こす。

 そして少しだけ浮かせて、その下に空間魔法で透明な床を作る。

 そこに天を乗っけた。


『……あの、これは?』

『見てこい』

『え?』


 小さなつむじ風を起こし、その中に天を放り投げる。

 風を天に向かって強く吹かせ、爆発力のある風を引き起こす。

 これだけでも普通に攻撃に使えそうなのだが、殺傷力は低くして、天の体を打ち上げるだけの威力を保持する。


『ぬにゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………』

『おー、飛んだ飛んだ』

『『てーーーーん!!?』』


 意外と上手くいくものだ。

 こういうのは空から観察した方が良いからな。

 天には悪い事をしたが、たまには仕事しろ。


 落下してくる天を闇の糸で捕まえて、そっと地面に下ろしてやる。

 人形みたいに固まってしまっているが、大丈夫だろうか?


『は、はひ……ま、また飛んだ……また……』

『あ、そう言えばお前リューサーの背中から落ちそうになってたもんな』


 どうしよう。

 トラウマ植え付けてしまったかもしれないな。

 すまんかった。


『で、どうだった?』

『『オール様容赦なさすぎです! 反省して!』』

『な、なんか黒いのがあった……あっち……』

『『天も答えるな!』』


 あっちかぁ……。

 西から歩いてきてるから……まぁとりあえず住処から北の方向に何かあるっぽいな。

 黒いのってことは……。

 んー、黒い土地でもあるのだろうか。


 あ、火山かもしれないな。

 いやそれはないな。

 合ったら普通見えるだろうし……。


 兎にも角にも行ってみないと何にもわからないな。

 よし、行ってみるか。

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