5.51.変化
悪魔が去って一ヵ月。
俺たちの周りでは変化が起き始めていた。
まぁ端的に言うと番ができ始めたって言ったらいいですかね。
皆が皆パートナーを見つけては寄り添っている姿を最近よく見かけます。
随分前からその傾向はあった様に思ったけどね。
ここ最近になって目立ってきたって感じだ。
え? 俺ですか?
いやちょっと考えてみてくださいよ。
俺元人間だぜ?
流石に犬に発情はしない。
なので最近生まれた一角狼の子供を愛でてます。
可愛いなぁおいマジでなぁあああ!!
一角狼の子供は小さくて丸い角が頭にちょこっと生えていた。
やはり全員明るい灰色だ。
一角狼はこの色合いしか生まれないらしいからな。
今は俺がリーダーなので、何不自由なく子供たちとスキンシップが取れます。
かぁわいいぃ~!
新しい子供たちは何故か知らないけど、もう既に俺の事を理解しているらしい。
拙いけど会話ができる。
『いーあ』
『いーだー』
『ふふふ、そうそう。リーダーだぞ~』
いやぁ……でも小さいなぁ……。
本当に小さい。
まぁ俺がデカすぎるだけなんだけどね……。
昔みたいにモフモフできなくなったんだよね~。
触る時も結構気を使わないといけない。
体が小さい時は気にせずに遊べたんだけどなぁ……。
でもこれは流石に仕方がない事だ。
この子たちの親は一角狼のディーナとデンザだ。
子供は全部で三匹で全員メス。
狼にしては少ないなと思ったけど、そう言えば俺たちも同じ数だったわ。
ディーナが少し小柄だからかな。
名前はベリー、ベナ、リーベ。
一角狼は名前の何処かに絶対濁音が入るようだ。
ヴェイルガもそうだし、ガルザもそうだからな。
この三匹の中で一番角が長いのはベリーだ。
角が長ければ長い程いいらしいから、是非ともヴェイルガの代わりをやってもらいたい。
今はあいつも俺に従順だから扱いには困ってないんだけどね。
『オール様は子供がお好きなんですね』
『可愛いからなぁ……』
俺から触りに行けないというのが本当に辛いけどな……!
潰しちゃいそうだもん。
『なんか皆いい感じになってるみたいだし、子供がまたできるのも遠くはないかもな』
『かもしれないですね。オール様は?』
『俺にゃ無理だ』
『そうかもしれないですね』
ディーナはそう言ってくすくすと笑う。
俺もその気はないのだが、狼に無理って言われるとは思わなかった。
という事は物理的に無理なのだろうね。
まぁ別にいいけど。
いや~。
なんかとっても平和だなぁ。
もう完全に暖かくなってきて、外での日向ぼっこが気持ちがいい。
悪魔が帰ってからは魔物の軍も来なくなったし、心なしか周辺の動物も多くなってきた気がする。
暖かくなってきたからだろうか。
まぁそれならそれで食料に困らなくなるからいいんだけどね。
とは言え……。
あの時に狩った魔物、まだめっちゃいるんだよなぁ……。
本当に俺の無限箱が時間を止めて保存できる魔法でよかったぜ。
これがないと結構大変だっただろうしな。
…………。
そういえば……魔法使い始めてから結構経つけど……。
あんまり強敵っていう強敵が出て来てないから、魔法の成長止まってる気がするなぁ……。
仲間たちの魔法を見て、それを完全に真似できるようにまではなって来たが、作ったりするという事は出来なくなった気がする。
新しい発見がないのだ。
まぁ真似できるとは言え、出来ない物も少なからずあるわけなんだけどな。
この一ヵ月は暗黒魔法の変毛をめっちゃ練習していたわけだし。
あれ本当に習得大変だったぜ……。
なんせ狐共が笑うから集中できないったらありはしない。
マジで。
まぁ何とか修得出来たけどな!
大変だったぜ!!
『いてっ』
『いー!』
おお、凄いな。
一角狼の子供ってこの段階で既に魔法使えるのか。
この子はベナかな?
体に雷を微弱ながらに纏っている。
纏雷とまではまだ行かないが、もうそれに近い出力は出せているな。
『わああ! オール様大丈夫ですか!?』
『ああ、問題ない。静電気みたいなもんだ』
『そ、そうですか……。ごめんなさいね』
ディーナはそう言って、ベナに鼻を当てる。
すると、ベナから雷の魔力がちょっと吸われたようで、雷の放出は無くなった。
『お? 今のは?』
『あ、そうでした。私たち一角狼は、子供の内は雷魔法を制御できないのです。なので、こうして雷魔法の魔力を少し吸い取るんですよ』
『へー。大体どれくらい続けるんだ?』
『長い子だと二か月くらい続けないと駄目ですね。私の場合は一ヵ月でしたが、角の長い子は制御できない期間が長く続くと思います』
『となると……ベリーがそうなるのか』
『多分ですけどね』
そんな生態があったのか……。
まぁこういう事は分かっている奴らに任せておいた方がよさそうだな。
だけど長くて二ヵ月か。
その間だと、雷の出力も随分と上がっているはずだ。
少し危ないかもしれないなぁ。
今はまだ体が小さいから、体に籠められる魔力が少なく、微弱な雷しか発動できていない様だから問題はないけどな。
『『『いーだー』』』
『……んー可愛い』
ま、その時の事はその時考えるかぁ!!
『オール兄ちゃーん!』
『お、シャロか。どうした』
『いつもの行こう!!』
『いいだろう』
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