5.43.深淵魔法
冥は俺の背中から降りて、穴を掘る。
何で穴を掘るのか全く分からなかったが、自分の体の半分が埋まったところで、俺に向きなおった。
何か意味のある行動なのだろう。
『では説明します。深淵魔法は闇魔法を二つ複合した暗黒魔法を二つ使って使用する魔法です。そして、一番簡単な魔法はこれです』
そう言って、冥は何かを発動させた。
だが、それが何か全く分からない。
首を傾げている俺に、冥は声をかける。
『オール様。私はこの穴から抜いてみてください』
『? 分かった』
言われた通り、俺は冥を闇の糸で絡めて持ち上げる。
狐たちは見た目に反してとても軽い。
闇の糸で簡単に持ち上げれるので、何も気にせずにくいっと冥を引っ張った。
が、ピクリとも動かない。
何故だと思って、力を入れて引き抜こうとするも全く抜けないのだ。
『グヌヌヌヌヌヌヌ……!?』
『
『『あはははははははは!!』』
どうして天と界が笑っているのか分からず、冥を見てみると、知らない間に冥の顔がとんでもない事になっていた。
まるで顔芸だ。
だが結構な力で引っ張っているというのに、冥は全く痛がる素振りすら見せない。
この状況をなんとなく楽しんでいるかのようにも思えた。
なんだこいつ……。
Mなのか……?
とりあえず闇の糸を解除して、話を聞くことにしよう。
『で、なんだこれ……』
『深淵魔法は重力を操ります』
『こっわ!!』
重力かよ!
怖いもんなしじゃねぇか!
ていうか今のは自分に重力を掛けたのか……?
それはそれで問題ないの?
いやまぁめっちゃ元気そうなんだけどさ。
『持ちあがらなかったってことは、お前自分に重力掛けてたんだよな。大丈夫なのか?』
『あ、いえいえ。私には掛けていません。掛けたのはオール様の闇の糸です』
ああ……なるほどね。
あれ?
でも重力がかかっているようには思えなかったぞ?
『あ、もしかしてこれも重力を掛ける場所を指定できるのか』
『おお! ご明察です!』
闇の糸の一部だけに重力を掛けてたから、他の場所は普通に動いていたんだな。
おそらく掛けたのは冥の下にくぐらせた闇の糸だろう。
そこにだけ重力を掛けておけば、持ち上がるという事は無いからな。
だが重力か……。
なかなか面白い魔法だな。
結構怖いけど。
これ俺がやったらどうなるんだ?
そんなに大きな魔法じゃないから、難しいという事はなさそうだが……。
物は試しだやってみよう!
ターゲットは……まぁその辺の石でいいや。
闇魔法を二つ複合して暗黒魔法。
それをもう一つ作り、暗黒魔法を二つ使用して……深淵魔法を……つく……えう……。
『難しいなおい!!』
暗黒魔法の媒体となる闇魔法二つの複合は簡単だ。
だから暗黒魔法の魔力を作るのも簡単だった。
難しいのは次だ!
その暗黒魔法を二つ合成するのが難しすぎる!
作ったばかりの物をまたくっつけるとかやったことないわ!
『そう簡単にできる物ではありませんよー。まずは暗黒魔法を習得なさってください』
ああ、そういや暗黒魔法俺やったことねぇや。
てかなんだ暗黒魔法って。
『冥。暗黒魔法って何ができるんだ?』
『む、そうですね。こんなことが出来ます』
すると、冥の体が豹変した。
小さな狐だったのだが、ズォッと大きくなって俺と同じ背丈にまでなる。
その姿はかっこいい狐で、色はとても黒い。
尻尾は一本から九本になっており、薄く開けられた口からは牙が見え隠れしている。
一瞬の事でとても驚いてしまい、数歩身を引いて構えを取ってしまった。
なんだその魔法は……。
『あ、すいません。驚かせちゃいました?』
『やめろお前その姿の状態でいつもの声で喋んな、気持ち悪い』
『とは言っても私これ以外の声でませーん』
『う、うぬぅ……』
違和感。
とんでもない違和感がそこにいる。
どうなってんだよマジで。
『冥、その暗黒魔法ってのは結局何なんだ?』
『暗黒魔法は自分の体を変形、もしくは毛や爪を変形させることが出来る魔法です、今の私は毛を変形させて体を作っているので、腕を落とされても本体は無害です!』
『……ああ。バルガンの……』
『スルースナー様も暗黒魔法を知らず知らず使っておられますよ』
確か名前クッソダサかったけど、結構いい能力持ってたんだよな。
そうか、これだったのか。
『『? オール様、いかがなさいました?』』
『いや、何でもない』
思い出すと駄目だな。
よし、とりあえず暗黒魔法習得してみるか!
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