5.42.三狐の魔法


 今日は狐三兄弟と一緒に、平原で魔法の特訓です。

 まぁお勉強会みたいなものですね。


 そして、今日はニアを連れてきています。

 空間魔法は光魔法と闇魔法の複合魔法だという事を知ったので、是非ともニアには習得してもらいたい。

 今まで教えることが出来なかったからな……。


『っしゃ始めるか!』

『狐さんよろしくねー』

『『『宜しくお願いします!』』』


 そうだな、やはりここは空間魔法を教えてもらいたいな。

 ニアもいる事だし、俺も一個しか覚えてないし。


 という事で、狭間狐の界に降りてきてもらって、空間魔法の説明をしてもらう。

 空間魔法は光魔法で空間を把握し、闇魔法でその間を歪ませる。

 前に受けた説明と同じだな。

 ワープができるのであれば、そんなに難しい複合魔法ではない。


 今は界がニアに説明をしている所だ。

 俺はとりあえずできるからな。


『あの場所から、この場所までの空間を把握します。出来ましたか?』

『……多分』

『では、その空間に闇魔法を使ってみてください普通に使う場合は、壁が出来上がります』

『えーと、こうかな?』


 すると、指定された空間が一瞬光った。

 界がそこにぴょんと乗ってみると、まるで浮遊しているかのような錯覚を受ける。

 どうやら成功したようだ。


『成功ですね!』

『お、おお! 意外と簡単なのね!』

『初歩ですからね。まずはこれを意識しなくても出来るようになってください』

『わかったわ!』


 そう言って、ニアは少し離れたところに走っていき、空間魔法の練習を始めた様だ。

 良いこと良い事。


 じゃ、俺も他の魔法を教えてもらうとしましょうかね。


『天か冥か……。どっちからがいいかな』

『では私が!』


 そう言って、天が降りてきた。

 界は自分の仕事はとりあえず終わったので、また俺の背中に戻ってくる。


 天は気候魔法だったな。

 でも気候って言うけど……実際何ができるんだ?

 雲を発生させたり雨を降らせたりとかそんな感じかな。

 イメージ全然湧かないけど。


『では説明いたします! まずオール様は炎魔法で温度を調整できますか?』

『それはできるぞ』

『ふふふふやはりそうでしょう。出来ないのが当たり前……え!? 今なんて言いました!?』

『ん? 炎魔法で温度の調整はできるぞ。冬はそれで洞窟を暖かくしていたしな』

『なんですと……っ!?』


 え、なに?

 何かマズい事した?

 全然そんな気は無かったんだけど、何でそんなに驚いてるの。

 逆に心配になってくるからちゃんと話してくれないかな。


『普通だったらここでいい反応を貰えるのにぃー!』


 いや知らんがな。

 出来るって事知っちゃったんだからそれは仕方がないだろう。

 リアクションを求めるんじゃないよ。


 暫くコロコロと転がっていたが、落ち着いたのか、それとも諦めが付いたのか、すっと静かに座って今度こそ俺に気候魔法の説明をしてくれた。


『気候魔法はその名の通り、気候を操る魔法です。風魔法に近しい魔法がありますが、それは魔法で引き起こした物。気候魔法は自然に災害を発生させる魔法なのです』

『例えば台風とか竜巻とか、大雨や大寒波……要するに異常気象って奴か』

『その通りでございます!』


 意図的に自然の天候を操ることが出来るって訳ね。

 でもあんまり使えそうな感じはしないなぁ……。


 台風とか竜巻とかは俺が作ればいいし、雨とかも水魔法があれば必要ない。

 できる事が地味って言えば地味だし、それを実行させるのにも結構な時間がかかると思う。

 やっぱり必要性があんまり感じられないのだが……。

 どういう時に使うんだ?


『え、決まってるじゃないですか』

『まじで?』

『敵を倒すためです』

『うん、まじで?』


 ごめん全然分からない。

 どういう事?


『もうちょい詳しく』

『相手が炎魔法を得意とする魔物の場合は雨を降らせます。相手が雷魔法を得意とする場合は雷雨を発生させます。相手が水魔法を得意とする場合は晴天にしてやります。魔法って結構自然に影響されることが多いので、それだけで優位に立てるか立てないかが変わってくるのですよ』


 へ、へー。

 それは知らなかった。


 ていうか策士っぽいなお前。

 ちょっとカッコよかったぞ。

 でもこれあれだよな。

 俺たちが何もしないでも、これだけ発動させとけば勝手に相手は自滅するっていうことも出来るんだよね。


 この気候魔法が範囲を指定できればの話だが……。


『出来ますよ』


 出来るんかい!!

 末恐ろしいな!?

 まぁできるのであれば、味方に被害を与えてしまうという事はないだろう。

 その辺は少し安心した。


 とは言え、恐ろしいことに変わりはないなぁ。

 あんまり使いたくない魔法である。


『敵本陣の場所だけ雨続きにすれば、それだけで戦意は削がれますし、時間を掛ければ食料なども滞らなくなってきますよ!』

『なんかそれだけ聞いてると嫌がらせの為の魔法っぽいな……』

『ちょっと』


 だってそうじゃん。

 そこだけに雨降らせるとか……陰湿。

 名前のわりに結構えぐいことするんだもんなぁ。


 この気候魔法は、炎魔法と水魔法、そして空間魔法を使用して発動させるらしい。

 空間魔法で範囲を指定。

 炎魔法と水魔法を複合して、その場の気象を改ざんするのだという。


 俺は気象に詳しいわけじゃないので、雲がどうやってできるとかはよく分からん。

 だけど、この範囲に雨を降らせたいと考えれば、その通りにしてくれるのだとか。

 結構簡単。

 

『説明はこんなものです。後は実践あるのみですね!』

『使う時になったらまた教えてくれ……』

『まさかの試してもくれない!?』


 いや、怖いじゃん。

 俺この大きさになってから魔法の制御上手くいかないこと結構あるんだよ……。

 まだ暴発とかはしたことないけど、前回発生させた竜巻とかあれ加減できなかったもん。

 ベンツとガンマを引かせておいてよかったよまじで。


 まだ試せてない魔法とか結構あるんだよなぁ~。

 でも今まで使った殆どの魔法はそれなりに制御できてるな。

 できてないのは大きな魔法くらいか。


 多分この気候魔法も結構大きい魔法だから、絶対に加減を間違えるだろう。

 それは怖いからな。

 やるときは人間の拠点に仕掛けるときにしよう。


『よし、じゃあ次は冥。お前の使える魔法を教えてくれ』

『あいさー!』


 冥は確か……。

 深淵魔法だったな。

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