5.41.三狐の契約
夜になり、へとへとになった狐たちがコロンコロンと転がりながら俺の所にやって来た。
俺は昼からずっと寝ていたので、今は眠くない。
昼寝はとても気持ちが良い物だ。
ていうか子供たちあれからずっとこいつらおもちゃにしてたのか。
体力凄いな……。
流石狼っていうかイヌ科。
『大丈夫か?』
『『『疲れましたぁ……』』』
『お疲れ』
三匹の狐は丸くなっていた体をぺしゃっと潰し、地面に倒れた。
相当疲れてたっぽいな。
さて、それはそうと聞かなければならない事がある。
こいつらは三狐という狐で、俺に憑依している。
そして魔力を吸われるという話だったが、それは本当なのだろうか。
『俺の仲間から聞いたんだが、お前らって俺に憑依しているのか?』
『『『そうですよ』』』
『……言えよ先に』
『『『言うタイミングがなかったんですー』』』
『いやあったろ! 竜の所に行くときに余るほどあったろ!』
結構な時間をかけて行ったんだ。
説明する時間は十二分にあったはずである。
まぁこいつらの場合、それを話すと竜の所に行ってもらえないんじゃないかっていう懸念はあったんだろうけどな。
それはなんとなくわかる。
とりあえず詳しい話は聞いておかないとな。
魔力吸われて殺されるなんて敵わん。
『えーと、で? お前らは何で俺に憑りついたんだ?』
『『『魔力がおいしそうだったので……』』』
『おう、そろそろいい加減にまじめな返答しないとひっぱたくぞ』
『『『ぴ!? え、えっと! 魔力が多い生物に憑りつかないと、私たちは存在できないのです』』』
存在が出来ない?
なんか魔力で動いているみたいな言い方だな。
つっても、俺たちも魔力が体から全部なくなると死に至ると聞いた。
それと同じことなのだろうか?
『もう少し詳しく』
『『『私たちは魔素を吸うことが出来ません。なので、魔力を直接貰わなければ死んでしまうのです。以前、オール様が討伐した魔物の軍の中に、魔力を供給して貰っていた魔物がおりましたが、オール様が殺してしまったので、やむなくオール様に憑りつかせていただいたのです』』』
『……あ、もしかしなくても俺のせいか?』
『『『はい』』』
おうふ。
それだったら仕方がないな……。
俺が宿主殺しちゃったんだもん。
『じゃあ、お前たちは俺からどれくらいの魔力を吸っているんだ?』
『『『一匹当たりの重さ分、一日に吸っています』』』
『……それ、どれくらい?』
『『『? 重さ分です』』』
いや、わかんねーよ……。
重さ分とか言われても、魔力に重さなんてないんだからさ。
まぁこいつら小さいし、特に大量の魔力を吸っているという事はなさそうだけどな。
一匹の多さも、せいぜい八キロか十キロ程度だろう。
丸っこいからもう少しあるかな?
『ま、それなら問題ないか……』
『『『後はオール様が死ななければ万事解決でございます! 私たちは常にオール様に憑りつかせていただいておりますので、必要の時はお呼びくださいませ!』』』
『え? 声かけたら出てくるの?』
『『『はい! 馳せ参じます!』』』
結構便利なのね。
これだったら本当に俺一匹で何とかなっちまうかもしれないなぁ。
それはそれで、皆が楽できるからいいだろうけど。
『『『あ、それともう一つ』』』
『お、なんだ』
『『『私たちが魔法を使う場合は、オール様の魔力をお借りして発動させることになります。そして私たちの魔法は基本的に魔力を大量に消費する物がほとんどです。ご使用の場合はお気を付けください』』』
『あー。じゃあ今度調べておいた方が良いかもしれないな。明日にでも調べてみるか。魔法も教えてもらいたいしな』
『『『了解です! では、私たちは寝ますっ!』』』
そう言って、狐たちは一つにまとまって眠りにつき始めた。
やはり疲労していたのか、すぐに寝てしまったようだ。
だがあれだな。
俺は界から空間魔法を教えてもらって、実施したのだが……。
別に魔力の消費が激しいという事は無かった。
水狼と同じくらいなので、連発が可能だ。
まぁ実際の所、数字で魔力を見ることが出来ないので、どれくらいの消費なのか分からん。
他にもいろいろ魔法を知っていそうだし、それを教えてもらうことにするか。
個人的には、冥の持っている闇魔法の深淵魔法というのが非常に気になる。
天の持っているのは気候魔法だったか。
想像がつかん。
……魔法の事を考えるのは、やはり楽しいな。
明日までが待ち遠しい。
今は眠くないけど、明日の為にもうひと眠りするかぁ……。
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