5.18.殲滅開始


 敵はまだ休憩中で、俺たちの存在には気が付いていないらしい。

 気付かれる前に作戦を立てよう。


『とりあえずー……。俺が前に出てドガン! でいいな!』

『間違ってはないんだけど、その後のこと考えようか……』


 先手はガンマで問題ない。

 それで大多数の敵が沈むはずだ。

 しかし、今回は子供たちにも参戦させたいので、地面の殴り方には注意してもらいたい。


 ガンマは単独行動。

 俺はシャロとレインを連れて、メイラムにはデルタを一緒に連れてもらう。

 これで何かあった時でも対処が可能。


 ガンマは敵に一撃をお見舞いしたら速攻で退散。

 メイラムに合流して二匹を守るように動いてもらう。


 後は……敵が来るか来ないか。

 ガンマに攻撃されて戦意があるのであれば、それを殲滅。

 逃げる奴がいればそれはそれで良い。

 逃がして情報を伝えてもらい、本丸をおびき寄せる作戦だ。


 だが、逃げる奴らも注意を払う。

 俺たちの住処の方へと走っていく奴はしっかりと始末する。

 行かれちゃ困るからな。


『ってな感じでどうだ?』

『俺はそれで良いぞ』

『俺も……問題ありません……』


 よし……じゃあ作戦開始!



 ◆



 配置についた。

 ガンマを先頭にして、俺とメイラムはその左右に展開している。

 攻撃するタイミングは、全てガンマに任せているので、ガンマが動いてから俺たちは注意を払う。


 ガンマがぐっと足に力を入れ、身体能力強化の魔法を使用。

 そして、空高くに跳躍した。

 一度の跳躍で敵前線の目の前に着地する予定らしい。


 その間にも、腕に力を籠めて狙いを定めている。


『あー! ガンマ兄ちゃん俺より高く飛んでんじゃん!』

『……当たり前でしょ? あんたよりずっとすごいわよ』

『ぐぬぅ……』


 まぁ、まだシャロは体も大きくないしな。

 だがそれはまだ伸びしろがあるという事だ。

 自信を無くさないで欲しい。


『来るぞ』


 ガンマが重力に従って落ちてくる。

 手を地面に叩きつける力を利用して、落下の衝撃を完全に無効化するつもりなのだろう。

 それに何体かの魔物は気が付いたようだが、時すでに遅し。

 ガンマが思いっきり地面を殴る。


『せーのっ!!』


 ドンッ! という音がここまで響いてきた。

 それから地面が割れ、その場が崩壊していく。


 相変わらずの威力だ。

 地面が割れて地震が起き、魔物はその場に立っていられなくなっている。

 だがガンマは別だ。

 一度攻撃をしてすぐに跳躍。

 空中に避難した。

 これで地震の被害にあう事はまずないだろう。


 急な攻撃により、魔物は混乱している。

 地割れの中に落ちて潰される魔物や、必死に逃げようとして仲間を傷つけてしまうものまで様々だ。

 俺たちはそこに追い打ちをかける。


『遠距離攻撃を叩き込め!』

『『了解!』』


 俺は風刃をとにかく投げまくる。

 飛距離は全く申し分ない攻撃の為、岩も斬って直線状に魔物を切断していく。


 レインは水刃だ。

 用意していた水の玉から水圧カッターを飛ばしていった。


 シャロは炎上牢獄。

 威力はまだ小さいものの、それを何個も任意の場所に設置できるのだ。

 魔物たちは何体か焼かれていくだろう。


 隣からも毒の玉が飛んでいっているのが分かる。

 メイラムは、シャロの作った炎上牢獄に向けてその毒の玉を発射しているようだ。

 それは蒸発して無くなるのだが、その周囲では魔物が苦し気に倒れていく。

 恐らく毒が蒸発して霧状になっているのだろう。

 おっそろし。


 デルタも何かをしているようだが、土魔法なのでよくわからない。

 向こうではもう岩や地面が飛び出し放題だからな……。

 把握することはできません。


『兄さーん! こんなもんかー!?』

『上出来だ!』


 後は、逃げていく魔物を選別して殺していくだけだ!


 ……あれ?

 俺、また暴れられなかった……。

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