5.19.回収


 割りと早く敵を倒すことができた。

 俺は結局風刃しか使わなかったけど、また今度来てくれると信じてここは大人しくしておこう。

 今回は子供たちがメインだからな。

 うん、仕方がないのだ。


 さて、では倒した敵を無限箱に収納していきましょう。

 大切な食料になるのだ。

 残してはいけません。


 だが、ガンマが無茶苦茶してしまった為に、何体かは見るも無惨な姿へと成り果てていた。

 規制が入るほどのグロさだ。

 俺も長時間見てはいられない。


『ガンマー。ちょっとやりすぎだ』

『はははは……。これでも加減したんだけどな……』

『これでかよ……。お前本気でやったらどうなるんだ。壊れるのこの辺だけじゃ済まなくなるぞ』

『もうちょい加減覚えるわ……』


 是非そうしてほしい。

 敵は確かに殲滅できたが、これでは回収ができない。

 ずいぶん多くの敵が地割れの中に落ちていった。

 回収も危険だし、あれは諦めよう。


 メイラムの攻撃で毒を吸った敵は、焼けば食べることができるだろう。

 狩りではあまり役にたちそうにはないな。

 今度からは周囲の警戒を任せよう。


『ガンマ兄ちゃーん……! これー! 持ってー!』

『あー、はいはい』


 子供たち三匹は、一生懸命大きな獲物を一か所に集めようとしてくれていた。

 自分より大きな獲物は二匹以上で引きずっている。

 俺もちょっと仕事しようかな。


 地割れで危なくなった場所にいる獲物は、水狼で回収していく。

 体の中に納めてしまえば、自由に持ち運びができるので、こいつも結構便利である。

 魔力の消耗も気にならないくらいだし、十匹までなら俺と同じ速度で操れる。

 大きさは昔の俺なんだけどね。


 デカくすることも出来るが、そうすると水狼の王がどうしても発動してしまうのだ。

 勝手に水狼達を動かしてくれるのはありがたいが、どんどん魔力を持って行ってしまうので、出来るだけ使うのは避けたい。

 回収で体力消耗したら意味ないしね……。


 暫くの間、皆で獲物を回収していく。

 獲物の殆どは子供たちより大きな魔物なので、子供たちは運ぶのに随分苦労しているようだった。

 だが、デルタだけは効率よく運んでいたように思う。

 土魔法と闇魔法の複合魔法で、土を大きな狼の口に変えて、バケツリレーの要領で運んでいたのだ。

 動きはぎこちなかったが、それでも一匹一匹が運ぶよりは断然に早い。

 よく考え付いたものだ。


 他の皆は普通に咥えて持ってきてくれた。

 随分と沢山回収できたな。

 殆どが地面に潰されてしまったみたいだったから、あんまり回収できないかもと思っていたが、そんなことは無かったようだ。

 だが……。


『ナニコレ』

『魔物……?』

『ナマコ……?』

『オール兄ちゃん、なまこってなぁに』


 なんかナマコみたいなのが転がってる。

 こんなのいたか?

 いや、でもいたんだろうなぁ……。

 死んではいるようだけど、あんまり食欲をそそらない姿をしている。


 こいつどんな攻撃するんだろう……。

 あの軍? うん、軍隊の中にいたから、何かしらの攻撃手段は持っていると思うんだけど……。


『なぁデルタ』

『なに?』

『これ食べたい?』

『……い、要らない……』


 だよねー。

 捨てよう。


『では……これは俺が……いただきますね』

『え? こんなんでいいのか?』

『はい。毒を持っているようなので……』

『『『毒ゥ!?』』』


 先に言えよ馬鹿野郎!

 って、メイラムは大丈夫なのか!?


『俺は、大丈夫です。毒を食うと……新しい毒が作れます』

『へ、へー……。成長する魔法なのかなぁ……?』


 毒にも種類があるのは知ってるけどさ……。

 まぁ、毒持ちの魔物に同じ毒撃ち込んでも死なないだろうしね。

 種類は多ければ多い程いいんだろう。


 だけど毒があるんだったら先に言ってほしい。

 見た目が気持ち悪かったから俺は食わなかったけど、もし食ったら死ぬかもしれないんだぞ……。


『今度から毒があったら教えてくれ』

『……? 分かりませんか?』

『分からんよ』

『『『わかるー』』』

『何でだよ!?』


 これもあれか!

 本能的な奴かちくしょう!!

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