4.11.食料調達


 土狼による周辺の調査の結果、特に危険な物はもうないという事が分かった。

 それで、少しだけ南の方角を見て来たのだが、あと何個か山を越えれば森に繋がるようだ。

 そこまで行ければ、いい場所が見つかるかもしれないな。

 残っている土狼には帰ってきてもらって、警護に当たってもらうことにする。

 何かあれば知らせてくれるだろう。

 多分。


 あんまり自動的には動いてくれないからな……。

 簡単な操作であれば、勝手に動いてくれるんだけどね。

 例えば歩けとか、走れとかそんな所だけど。


 よし、じゃあ待機させていた水場の土狼に視界を写そう!

 これで水を飲みに来ている動物がいればいいんだけどな。

 ていうか、動物ってずっと言ってるけど、この世界だと魔物という括りになるのではないか?

 ……まぁどっちにしろ食料だから深く考えなくてもいいか……。


 隠れて待機している土狼に視界を移すと、先程まで見ていた風景が写った。

 草木に遮られて前はあまり見えないが、どうやらまだ動物は来ていないらしい。

 待つ狩りはとても時間のかかるものだ。

 そう都合よく獲物はいないか。


 じゃ、とりあえずここで待ちましょうかね~。

 …………。

 さっき俺、土狼で結構な範囲を捜索したよな。

 てことは暫く来なくね?



 ◆



 ー二時間後ー


 待つのって結構大変ですね。

 暇すぎる……。

 まぁこれが普通だよねーー。


 土狼だと目だけでしか判断できないからなぁ。

 匂いで判断できないというのはやっぱり不便だね。

 でも音は聞こえるんだよなぁ。

 なんで聞こえるんだろう。


 ガサガサガサ……。


 そんなことを考えていると、草をかき分ける様な音が聞こえてきた。

 息を止め、目だけを動かして周囲の状況を確認する。

 今は土の塊。

 匂いも土だと思うので、そうそう警戒はされないだろう。


 目を凝らして、何処から獲物が出てくるかを注意深く見る。

 すると、草むらから七匹ほどの猪みたいな動物が現れた。

 どうやらこの猪たちは親子の様だ。


 ていうかこいつらの牙でっけぇな。

 絵で描かれる猪みたいに牙が上に伸びてない。

 前に伸びてる……。

 殺傷能力高そうだなぁ。


 ま、俺は今土狼だから問題ないんだけどな。

 しかし、こいつら結構でっかい。

 これ全部狩ったら全員が食べれる食料が手に入りそうだ。

 土狼の攻撃を使えば一発で回収はできるだろうが……それだとこの辺の地形が変わってしまう。

 水もなくなっちゃうかもしれないし、白い泥もなくなるかもしれない。

 それはちょっと望んだことではないので、土狼だけで何とかしてみたいと思います。


 確実に七匹の猪を討伐する方法はある。

 あいつらはどうやら水を飲みに来ている様だ。

 そうであれば……。


 子供は親の行動を真似する。

 親が水を飲めば、他の子たちも揃って水を飲みに来るのだ。

 全員が池に口を付けた時に……。


 水狼!!

 土狼に使った魔力を水狼に使う。

 池の水を使っていることもあって、土狼より水狼の方が魔力消費は少ない。

 土狼は魔力を失って少し崩れてしまっただけに留まる。


 池から急に出てきた水狼に対処することが出来ず、猪たちは水狼に飲み込まれた。

 結構大きめの水狼を作ったので、七匹全部が水狼の中に閉じ込められる。


 すまんな猪たちよ……。

 これも俺らが生きる為なのだ。

 許してくれ。


 暫く水の中に猪たちを入れておくと、全員が動かなくなった。

 死んだようだ。

 もう動物の死を見て感じることはあまりないのだが、溺死は苦しいよなぁ。

 すまん。


 だがこの狩り方であれば、水場も荒らさないのでまた動物たちが来てくれることだろう。

 とりあえず水狼に猪を入れたまま、持って帰ることにしよう。

 まだ皆は起きていないからゆっくり静かにな。


 土狼と一緒に水狼を持って帰る。

 その道中では特に何かが起きるという事もなかった。

 家の前に置いておき、土魔法で屋根をかぶせる。

 雨は降り続いているので、出来るだけ濡らさないように。

 とは言っても水狼で濡れてしまっているから、意味ないかもしれないけどな。


 水狼と土狼を一度解除し、土狼だけをもう一度作り出す。

 作り出した土狼は先程の狩場にまた持っていく。

 次の獲物が来たらまた狩る為に。


 恐らく俺の大きさだと、先程狩った猪を全て食べてお腹いっぱいくらいの量だ。

 本当に、体がでかいというのはちょっと不便ですね。

 強くはなったけど、消費エネルギーも多いんだから……。


 永住するのであれば、皆が食べれる分だけの食料が確保できる場所で、出来るだけデカい獲物がいる場所がいいな。

 我儘かもしれないけど、理想をたてるくらいは許して欲しい。


 よし、じゃあもう一度狩りに行きますか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る