4.12.しっかりとした食事
あれからずっと狩りをしているが、その後も二回程動物が水を飲みに来た。
それを全て同じ方法で狩り、俺たちが休んでいる場所まで運ぶ、
もう狩る必要がない程獲物を狩ってはいたが、食べれる時に食べておきたい。
だからこうしてずっと狩りを行っている。
待機してると、また動物が水を飲みに来た。
今回は魔物と言うにふさわしい禍々しい奴だ。
どす黒い体で、体中に棘がある。
口は無く、ストローの様な舌が伸びていた。
どうやら血を吸う生物なのだろう。
いや不味そ~~……。
美味しくないかもしれんよなぁこれ。
放置でいいかなこいつは。
あ、でもここから俺たちのいる場所近いしな。
明らかに肉食っぽいから、討伐だけしておくか。
という事で、土狼の近くに来た瞬間に喉元に噛みつく。
その肉は随分と脆かったようで、噛みついたと同時に首がちょん切れてしまった。
骨もしっかりとあるようだったのだが、柔らかい。
呆気なさに驚いてしまったが、とりあえずこいつは違う場所に置いておく。
他の動物が食べてくれるだろう。
あ。
この近くで血の匂いを出すのはまずかったな……。
んー……失敗。
お?
どうやら子供たちが起きて来たらしい。
もうそんなに時間が経っていたのか……。
雨脚も弱くなってきているし、あと少しすれば雨は上がるだろう。
皆がご飯を食べたら出発だな。
土狼を崩し、視界を本体に戻す。
すると、俺の体に寄り添って寝ていた小さな子供たちが目を覚ましていた。
まだ寝ぼけまなこではあるが、周囲の様子を確認している。
次にベンツとガンマが起きた。
大きな欠伸をしたと同時に、スンスンと匂いを嗅いでいる。
『? 兄さん、なんか狩ってきた?』
『おう。外に置いてあるぞ。全員起こしてくれ』
『け、結構な量狩って来たんだね……』
どうやら匂いで獲物を察知した様だ。
話が早くて助かるな。
全員を起こし、俺たちは外へと向かった。
家を出る事には雨は完全に止んでおり、薄暗い青い空が見て取れる。
太陽は昇り始めたばかりの様で、西の空はまだ暗い。
時間的には五時くらいだろう。
用意してあった獲物をとりあえず全員に分けていく。
今日はしっかりと食べることが出来そうだ。
一日ぶりの食事。
ガンマとベンツには大きいのをやろう。
俺ももちろん大きいのを食べる。
子供たちだけではまだ食べれそうにはないからな。
『よくこんなに狩って来たね』
『運が良かったんだよ』
水場がなかったら、こんなに多くの獲物は狩れなかっただろう。
能力にも恵まれた感じはするしな。
土狼に使った魔力を他の魔法を使うために消費できるなんて、昔はできなかったことだし。
『ねーねー! ここに住むのはダメなの?』
ニアが興奮した様子でそう問いかけてきた。
その意見を聞いて、確かにと思う子供たちは多くいたらしい。
全員が頷きながら、俺の返答を待つ。
確かに獲れた獲物の量は本当に申し分のない量だ。
待ち伏せだけでこれだけ獲れたのだから、この周囲には溜まってはいないが相当な量の動物がいるはずである。
だが……。
『ここはダメだな』
『ええー! なんでぇ!?』
『危険なんだ。お前たちは知らないだろうが、土魔法を使って捕食する魔物がいた。それに、ここには敵が多い。俺とベンツとガンマであれば問題ないだろうが、まだお前たちにはまず無理だ』
子供たちの安全性を考えてみれば、ここの土地は危険すぎる。
俺ですら感知できない敵がいるのだ。
他の子たちが気づくのは無理だろう。
それに、狩りをしてみて分かったが、明らかに肉食である生物が多い。
まだ戦いも経験していない子供たちがそいつらと対峙すれば、確実に負けてしまう。
猪だって危険な動物だ。
明らかに相手を殺すために伸びた牙。
喧嘩する気満々である。
『そっかぁ……』
『すまんな。後、ここの地形が俺は好かんのだ。できれば森がいい』
山は天候も変わりやすいし、風もよく吹く。
鼻を頼りにしている俺には少し厄介な気候なのだ。
他の子たちもそうかもしれないがな。
ついでに言ってしまえば、水場があそこにしかないというのも問題だ。
この辺に川は無いようだし、あの池は雨水が溜まってできている物だろう。
なので、夏になれば無くなってしまうかもしれないという懸念があった。
一年を通して過ごすには、危険と不確定な要素が多すぎる。
なので、この土地に永住するというのは無しだ。
『俺も兄さんに賛成だ。あの場所から逃げてきて来て、距離もあまり稼いではいない。人間共が絶対に追いつけない程に離れるのがいいはずだ』
『そうだね。まだ時間はあるし、これだけ食べれば一週間くらいは乗り越えられるよ』
それは少し無理し過ぎな感じがするが……。
そうならないように獲物はどんどん勝って行こう。
『さ、皆しっかり食べてくれ? 途中でお腹が空いても食べれないかもしれないからな?』
そう言うと、子供たちは目の前に置かれた獲物を食べ始める。
小さい子供たちは、まだ肉を引き裂く力がないので、ベンツが千切って与えていく。
俺たちはやっと腹いっぱいになるまで肉を食べることが出来た。
食べれたのは良かったのだが、やはり少しばかり狩り過ぎてしまっていたらしい。
獲物が二体ほど残ってしまった。
これをどうしようかなと少し考えたのだが、いいアイデアが思いついた。
捨てるのは勿体ない。
しかし、持っていくのは不可能……かに思われたのだが、ここで俺の光魔法、無限箱の出番である。
この魔法が時間を止めて保存できるかは分からないが、これを使えば持ち運びが可能である。
何でも入る無限箱。
俺はそれに残った獲物を入れて小さくした。
箱の大きさは自由自在に変えることが出来るので、結構便利なのだ。
因みに、毛の中には地図の入っている無限箱を置いている。
もう使う必要のないものかもしれないが、まぁ持っておいて損はないだろう。
貧乏性なんですごめんなさい。
この無限箱も出したいときに出せればなぁとは思うけど、そこまで優秀ではないらしい。
残念。
全員が食べ終わったことを確認して、空の様子を見る。
太陽は完全に昇った様だ。
周囲も明るくなり、見やすくなっている。
土で作った家を壊し、俺たちがここに来た証拠を残さないようにしておく。
こんな物があっても俺たちが来たなんて思わないだろうけどな。
『っし、行くか』
俺たちはまたいつもの編成で、旅を続けるのだった。
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