【完】転生したら狼だったけど仲間を信じて生き抜きます～これは従魔契約の礎になった物語～

4.10.土喰いの土

　土が土狼を挟み込むように持ち上がっていた。

　力が一気に加わり、一瞬で真っ二つになる。

　すると、土に戻った土狼を取り込む為、土は大きな口を開く。

　ガボッっという音と共に、土狼は土に吸収された。

　明らかに土魔法による攻撃だという事は分かったのだが、その主が何処に居るのかわからない。

　とりあえず残っている土狼をその場から離れさせて、様子を見ることにする。

　俺だったら絶対に今の一撃でやられてたな……。

　音も何のないんだもん。

　分かるわけがない。

　とりあえず後二匹程、向こうに援軍に行かせよう。

　一匹だけで対処はできないだろうからな……。

　しかしこれはまた面倒な敵が現れたなおい。

　何処に居るんだよ本体。

　あれ絶対土使って獲物捕らえて捕食するタイプの敵だろ。

　……ん？

　てことはもしかして土の中に本体がいるのか？

　よし、とりあえず敵は地面の中にいると仮定しよう。

　となると、どうやって獲物の位置を把握してるのか。

　まぁ大体は振動、もしくは違う所で見ているかのどっちかかな？

　違う所で見てる場合は……後で回収しに来るのか……？

　とりあえず歩かせてみるか。

　今度はしっかりと攻撃を見ておきたい。

　場所的にはあまり離れていないので、先ほど俺が新たに出現させた土狼二体はすぐに合流した。

　この一匹を、出来るだけ足音をたてさせながら歩かせてみよう。

　すると、ある一定の所まで行ったところで、土がまた土狼を捕食した。

　予備動作などは一切なし。

　土が盛り上がるそぶりもなく、ほぼ一瞬で土狼は破壊されてしまう。

　あれだけ速い速度で魔法を発動させるのは相当難しい。

　土魔法を使ってる俺にはわかる。

　だけど……。

　今の土、移動してたな。

　真下から土が盛り上がって土狼を食ったのだが、その位置が少し違っていた。

　だけど、その周辺でしかあの魔法は発動していない様だ。

　いるとしたら……あの下かな？

　今あるのは土狼二匹分の魔力のみ。

　とは言え、一匹は視界共有の為に残しておかなければならないので、実際使えるのは一匹だ。

　土狼や水狼は、作った時に使用した魔力を他の魔法に還元することが出来る様だ。

　これは、今さっき土狼を使って直感的に感じ取った事である。

　これが本能による理解という奴か……。

　結構スンって頭の中に入ってくるんですね。

　以前の俺ではわからなかったよ。

　まぁ出来るのであれば、やってみよう。

　とりあえず、土狼一匹に使用する魔力で出来る事と言えば……。

　…………。

　土狼を作る事ですかね。

　いや、すいません！

　ごめんなさい！

　だって分かんねぇよ！

　魔力の量とかあんまり分かんないんだもん！

　まぁ、土の波を起こすことが出来るのだ。

　それくらいの魔力は籠っているのだろう。

　ふふふ……。

　そうであれば、あの土の捕食を止めることなど簡単ではないか。

　うし！

　やってみよう！

　一匹の土狼を前に歩かせる。

　恐らく後十歩辺りからが、奴の攻撃範囲内。

　そこに到着した瞬間に、土狼の中にある魔力で土を固める！

　敵も魔法を使う時は魔力を使って土を動かすはずだ。

　それを阻止するようにすれば、相手はこの土を動かせなくなるはず。

　さぁどうだ！

　土狼は魔力を使い切ってボロボロと崩れてしまう。

　だが、しっかりと魔法は発動したようだ。

　その瞬間、土狼のいた足元が少しだけ動く。

　これは今までに見なかった光景だ。

　恐らく捕食しようと土魔法を発動させたのだろう。

　だが、俺が土を固めたので、上手く動かすことが出来ていない様だ。

　とりあえずもう一回魔力使って固めてみるか？

　それとも様子見をしようかな……。

　うん、様子見にしよう！

　さて……どうなる？

　暫くは何も起こらなかったが、急に地面が盛り上がり始めた。

　それは先ほどの攻撃の様に素早くはない。

　ボゴゴッ……と地面が持ちあがり、そこからは何かが出てきた。

　白い姿の動物の様だ。

　それは一言で言うと……芋虫。

　白い芋虫の体の大きさは非常に大きく、三メートルある土狼の大きさを優に超えている。

　大きさは土狼の倍とはいかないので、恐らく五メートル程度だろう。

　その芋虫には目は無く、五つに割れた口をグチグチと言わせながら噛み合わせている。

　はっきり言おう。

　あり得ないくらい気持ち悪い。

　その姿を見てしまった俺は、何の躊躇もなく土狼に声なき遠吠えをさせた。

　土狼の後ろから狼の波が押し寄せ、その芋虫を飲み込んでいく。

　確実に殺すように土狼一匹一匹に噛みつかせ、その肉を引き千切っていった。

　飲み込めれば確実に相手を殺すことのできる土狼。

　優秀です有難う御座います。

　だけど……。

　こういう敵が出てくるのが普通になってくるのか……。

　少し怖いな。

　見えない敵程、怖い敵はいない。

　感知能力が欲しいですね。

　嗅覚以外の感知能力……。

　何かの魔法で、そう言うのがあったらいいんだけど、思いつかないなぁ。

　それこそ振動とか？

　何魔法ですか？

　土魔法ですかね？

　今度ちょっと模索してみたいと思います。

　さて、とりあえず安全になったと思うので、また土狼で調査を開始しよう。