4.9.調査狼、土狼


 周囲を警戒する土狼と、獲物を狩りに行く土狼の二つに分ける。

 周囲を警戒する土狼はついでにこれから行く道中も確認しておく。

 方角は南。

 とにかく南下し続けていくことにする。


 とりあえず今は獲物を狩る土狼に視界を合わせよう。

 周囲には獲物がいないという事はわかっているので、まずはとにかく遠くに土狼を走らせる。


 そう言えば、動物って一体何処に居るんだろう……。

 今まで鼻に頼ってばかりの狩りだったから、そう言う事はよくわかっていないな。

 んー、ここに来て雨が邪魔するのか……。

 ま、仕方がない。

 今回は目だけで探してみよう。


 風向きは……分からん。

 流石に土狼に感覚なんてものはありません。

 まぁ、草木の動きを見れば、大体の風向きの方向は分かる。

 それに、今は雨も降っているので、雨が降ってくる方向を見れば確実だ。


 雨はどうやら西から振ってきている。

 なので風向きは西から東に吹いているはずだ。

 山の中なので谷に降りる風が混じっていそうだが、とりあえずこれを信じて進んでいこう。

 まぁ動物が何処に居るかとか見当もついていないんですけどね!


 雨だから大体の動物は隠れてるよなぁ。

 俺だけでは探せそうにない気がする。

 とは言っても、火の番とか基本的に暇だから朝になるまで探し続けようとは思うけどな。


 という事で、とりあえず谷まで降りてきた。

 この辺は山が連なっているので谷が多い様だ。

 だが渓谷らしき場所は無いな。

 とりあえず谷を重点的に探してみるか。


 ここで出来る限り大きな獲物を狩っておきたい所だな。

 ていうかここちょっと動物少なすぎない?

 ……これが普通なの……?


 まぁ嘆いていたって始まらないので、土狼をゆっくり走らせていく。

 周囲をキョロキョロと見てもらって獲物を探す。

 流石に簡単には見つからないと思うので、長丁場になるなとは考えていたのだが、そこで池を発見した。

 あまり大きくはない池ではあったが、それでも動物たちが水を飲むのには十分な大きさだ。

 よく周囲を確認してみると、動物の足跡だったり、動物が穴を掘った形跡がいくつもあった。


 おおん?

 なんでこんなに穴掘りまくってんだ……?


 その場所を見てみると、基本的には白っぽい泥だ。

 隣の池と、池に流れてくる水の影響から、少しぬかるんでいる。

 だがそれも気になる程のものではない。


 しかし、どうしてこんな穴を掘りまくっているのだろうか。

 それに白い場所ばかり。

 んーーと考えた結果、俺は一つの答えに辿り着く。


 あ。

 そう言えば……塩分を摂取するために泥を口に入れる動物っていたよな……。

 塩分だっけ……ミネラルだったっけ……。

 どっちか忘れたけど、もしかしてこの穴って、泥を食べる為に動物たちが掘った穴じゃない?

 いやもしかしたら猪みたいなのが掘っただけの可能性はあるけど……。


 なんにせよ、ここに動物は来るはずだ!

 水場もあるし、泥もある。

 待ち伏せしていたら結構な量の動物を狩ることが出来るかもしれないな!


 そしてこの土狼は匂いなど全く発しておりません。

 なんせ土ですから!

 堂々と座っていても、動かない限りはなんとも思われないだろう!

 いやまぁ隠れるんですけどね。


 その辺の草むらに隠しておけばいいか。

 それなりにでっかい奴が来てくれたら嬉しいな。

 絶対に狩ってやるから。


 よし、じゃあこの土狼はここに置いておいて……。

 もう一匹の土狼に目線を映しますか。


 視界を共有した瞬間、その土狼は死んだ。


 ワッツ!!?

 ちょい待て待て待て!!

 どういうことだ!?

 くそう……一瞬過ぎて何が起こったかわからなかった……。


 んーー……。

 流石に一匹にしか視界を移せないってのは難点だよなぁ。

 まぁ仕方のない事なんだけどさ。

 二匹も三匹もいっぺんに見ても分かんないし。


 ってそんなこと考えている場合じゃない!

 早くさっきいた場所に土狼を送り込め!

 水場の奴はあのままでいいな!


 場所だけは分かっているので、すぐに土狼二匹を向かわせることはできた。

 だが……そこには何もいない。

 壊されたはずの土狼もいなかった。


 えー……どういうことー……。

 何もいねー……。

 いや、壊されたんだからいないわけがないんだよ。

 何処だ何処に居る出てこいこの野郎。

 俺が安心して狩りができないじゃないか!

 えーちょっと待って……。

 マジで探そう。


 土狼を一撃で沈めるような生物がここにいるとしたら、休み続けるのは少し危ない。

 土狼二匹だけで敵を探せるかどうかは分からないが、まぁ何とかなるだろう。

 ここで普通に歩いていて壊されたっぽいからな。

 同じように歩いていれば……もしかしたら……。


 バゴッという音がした。

 俺はすぐにそちらの方向を見てみるが、そこにはあり得ない光景が広がっていた。

 一匹の土狼が……土に食われていたのだ。


 ファ!?


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