3.34.適正魔法練習


 全員の適正魔法を把握できたので、今度はそれを練習させることにする。

 とは言え、俺だけでその全員を見るのは不可能だ。

 なので、仲間に協力してもらうことにした。


 まず俺は、光魔法と闇魔法を使用できるニアの先生になることになった。

 闇魔法はロード爺ちゃんやナック、バルガンが使えるのだが、光魔法を使えるのは俺だけなので、両方を教えるついでという事になったのだ。


 そして、ベンツは雷魔法と水魔法が使えるラインの先生に。

 水魔法は使えないが、雷魔法が使えればそれを応用して水魔法も使えるかもしれないので、とりあえず初めに雷魔法を重点的に教えてあげることになった。

 雷魔法でベンツの右に並ぶものはいないので、教えるのはベンツというのが群れの総意だ。


 ガンマは勿論、炎魔法と身体能力強化の魔法が使えるシャロを教える。

 だがガンマは炎魔法は使わない。

 身体能力強化の魔法だけを教え込むつもりだろう。

 なので、時々シャロの所にも俺が行くことになった。

 炎魔法を使わないなんてもったいないことはさせない。


 残っているデルタとレインだが、デルタは土魔法と闇魔法が使えるのでロード爺ちゃんの所に。

 レインは水魔法が使えるので、水魔法を得意とするルインお婆ちゃんの所に行ってもらうことになった。

 これで全員の先生が決まったわけだ。


 因みにだが……おそらく複合魔法は俺だけしか教えれないので、最終的には俺が全員の先生になる。

 小さい頃からこれを知っておけば、大人になった時には使いこなせるようになっているだろう。

 それでもベンツは時間がかかってしまったようだが。


 ま、いきなりそんなことは教えない。

 まずは一個一個出来るようになっていって、もう魔法の扱いは完璧そうだと俺が判断するまでは教えるつもりはない。

 結構危険だし暴発する可能性もあるのだ。

 ここは厳しく見ていく。


 そんなわけで、今俺はニアと一緒に適正魔法の練習をしている最中だ。

 まずは闇魔法でどんなことが出来るのかを教えていく。


『ワープ』


 目の前に一つと、少し離れた場所に一つ黒いゲートを作り出す。

 場所を正確に捉えて発動させれば、こんなものはすぐにできる。

 実際にそれをくぐって、これがどのようなものかをニアに教えた。


 とは言っても、闇魔法だけで何かしようと思っても、俺はこれくらいしかできないのが現状。

 闇魔法で何が出来るのかわからないのだ。

 参考資料がないので、魔法を増やそうにも増やせない。

 魔力吸収と魔力譲渡は、子供が使うにはちょっと危険なので、教えないことにしている。


 闇魔法はどちらかというと、複合魔法での使い道が多い気がする。

 土狼の時もそうだったし、寄生された狼が使っていた魔法もそうだった。


 まぁ闇魔法は他にも使える狼がいる。

 ワープが使えるようになった後は、ナックやバルガンに教えてもらうのがいいだろう。

 どんな魔法を使うのかは知らないが……。


『ま、とりあえずこんな感じ。俺は闇魔法これだけしか使えないから、もしできるようになったら他の仲間の所にってできたんかい!!』


 説明しながらニアの方を見てみると、既にワープゲートを作り出しており、その場を通り抜け続けていた。

 

 な、何と言う習得の速さ……!

 こ、こ、これが野生の……本能の力だというのか……!

 見ただけで一瞬でできるって、何この子たち天才?


 ニアはどや顔でこちらに顔を向ける。

 憎めない可愛さなので許す。


『じゃあ光魔法ね』


 俺は光魔法・太陽の杭を発動させて周囲に刺していく。

 これは結構イメージが難しい……というか、非殺傷の魔法なので、狩りをする狼たちにはなかなかできない魔法なのだ。

 これはオートもできなかった。


 ニアも光魔法を使ってそれとない物は作り出しているようだったが、すぐに霧散してしまう。

 俺は苦戦しているニアに助言を渡した。


『ニア。光魔法ってのは邪を払う物だ。だから、生きている・・・・・生物に対してはその効果は現れない』

「?」

『まぁなんだ。それは狩りに使うような魔法じゃないってことかな』


 光魔法は、聖属性を持つ。

 アンデットなどには有効なのではあるが、まだ生きている生物などに対しては無力だ。

 その代わり、この太陽の杭のように非殺傷で相手を拘束したり、その場を浄化できたり、呪いを解いたりする効果があるらしい。

 言ってしまえば、アンデット以外では補助のような魔法になる。


 その事を小さな子供が理解するのはちょっと難しいかもしれないが、これを理解しなければ次のステップには進めない。


 あ、因みに……。

 以前、無限箱で地雷電を閉じ込めてマジモンの地雷を作成いたしましたが、あれは雷魔法が攻撃をしているので、この光魔法・無限箱は補助の役割をしています。

 断じて攻撃魔法ではない。


 あれ? でもお父さんの聖槍って……がっつり攻撃してなかったっけ……。

 あ、違う違う。

 確かアンデット狼だったからだ。

 アンデットにはがっつり攻撃が入るんだもんね。


「フルルル……」

『まぁ、ゆっくりでいいさ』


 どうしてもできないようで、少しいじけているようだ。

 先程の闇魔法はすぐにできたのに、光魔法がこんなにも難しいのだから、少し焦っているのだろう。


 これは慣れと言うか、どちらかと言えば考え方の問題だ。

 ニアがそれに気が付けば、簡単にできるようになるだろう。

 可能な限りの助言はしたので、後はニア次第だ。

 ここはゆっくりと眺めるに留める。

 自分で気が付いたほうが、理解が深まるからだ。


「ガルルルル……」

『力んでもできないよー』


 案の定、また光が霧散する。

 どうやらこれは、時間がかかりそうだ。

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