3.33.魔法の光
ナックのお陰で、あの大きな獲物を仲間の待つ拠点まで持って帰ってくることが出来た。
俺はあそこまでの長距離移動はできないので、普通にすごいと思う。
子供たちは俺たちの動きや魔法をしっかりと見ていたようだ。
魔法の重要性や必要性を見出したらしく、ペペペペペペッと地面にお手をして、子供全員で魔法の特訓をしている。
狩りを見学させたので、仕事は終わりだなと思っていたのだが、またオートから追加の仕事を投げられてしまった。
それは、子供たちの魔法適正の確認と、ある程度の魔法の使い方の講習だ。
俺たちばかりがそんな役を受け持って良いのだろうかとも思ったが、俺は全属性を持っているし、ガンマは身体能力強化の魔法に長けているという理由で、子供たちに教えてやって欲しいと言われたのである。
因みにベンツはおまけ。
雷魔法の使える子供がいたら、教えてやってくれという感じだ。
こういうことも経験しておけ、という言葉がオートから伝わってきた。
まぁ確かに必要なことなんでしょうけどね。
でも俺としては? この可愛い子供たちが見れたのでもうもう大満足ですよもうもう。
「わふー!」
「クォー!」
子供たちは一生懸命地面にお手をして、風刃を放とう放とうと努力している。
まだ全然形にはなっていないが、こうしていればいずれ見えてくる物があるだろう。
ていうか有難う御座います。
いや本当に神様有難う御座います。
バリッ。
『お』
その時、一匹の子供の体に、赤い稲妻が走った。
これは身体能力強化の魔法の稲妻である。
どうやら無意識のうちに発動しているようで、自身は気が付いていない様ではあるが、お手をする速度は他の子供たちよりも早くなっているようだ。
『あの子はガンマだな』
『だな。任せとけ』
一番初めに発現する魔法というのは、その子の適正魔法である可能性が極めて高い。
風刃より身体強化の魔法が先に発現したのなら、ガンマと同じ才能があるだろう。
『でもまだ風刃できてないから、後でね?』
『わかってるよ』
風刃ができなければ、あの光は見ることが出来ないはずだ。
風刃って俺たち種族の基礎中の基礎の魔法なんだもんな。
ベンツもガンマも、それが一回発動できてから、光を見たというのだ。
今のは恐らくまぐれだろう。
『あ、あの子雷魔法使えるね』
『え? そうなん?』
そう言うベンツは、一番端っこで練習をしている子供を見ていた。
おそらくあの子が雷魔法を使えるのだろう。
だが俺はそんなこと全く気が付かなかった。
『どうしてわかったんだ?』
『ん? 雷魔法って時々バチバチッて弱い電撃が走るんだよね。それが見えたんだ』
んー、静電気みたいなものだろうか。
何か見たのだろうか?
まぁベンツの得意な雷魔法なんだから、同じ魔法同士何かわかる物があるんだろうな。
すると、身体能力強化の魔法の稲妻を出した子供が、何かに気が付いたようで首を傾げた。
目を閉じて静かになる。
だがすぐに目を開けてまた首を傾げた。
どうやら、体の中にある光が見えたようだ。
『なんか見えた?』
「わふ!」
『おお、赤とオレンジか』
赤色は身体能力強化の魔法。
オレンジ色は炎魔法だ。
完全にガンマと同じ魔法だな。
じゃあこの子はガンマに任せることにしよう。
炎魔法は使わないみたいだから、それだけは俺が教えるか……。
よし、この子には絶対に炎魔法を使えるようになってもらおう。
肉が焼きたいんだよっ!!
だが、まずは風刃を完璧に扱えるようになってもらう。
そうじゃないと他の魔法なんて使わせるのは危ないからな。
まぁ風刃も危ないけどな!?
一匹が体の中にある光を見れるようになると、呼応するように他の子たちも見えたようで、各々が俺たちに見えた光を報告してくる。
この子たちには全員に名前があるので、使える魔法と同時に教えていこう。
生後五か月の子たちは全部で五匹。
まず一匹目は、始めに身体能力強化の魔法を発動させ、一番初めに風刃を放った子供。
名前をシャロ。
身体能力強化の魔法と炎魔法の適性があるようだ。
シャロは黒と灰色の毛が混じっている狼だ。
炎魔法を使えたら、とってもかっこいんだろうなと思う。
二匹目の狼の名前はデルタだ。
茶色という珍しい毛並みの狼なのだが、その色のせいか、適正魔法もそれに近い。
土魔法と闇魔法。
ロード爺ちゃんと同じ適正魔法だ。
難しい魔法ではあるが、これは先生がいるので何とかなるだろう。
三匹目はニア。
灰色の毛並みをしており、面白いことに光魔法と闇魔法が使える様だ。
光魔法が使えるのは、全属性を持つ俺とお父さんしか使うことが出来ないので、この子は俺が見ることになるだろう。
とは言っても、光魔法とかあんまり使えないんだよね~……。
ていうか光魔法一回しか実戦できてないんだよ。
それに……アンデットも一回しか出会ってないし、何ならあいつ自滅したし、碌に実験出来てません。
まぁ……うん……俺も練習しないとな……。
次の四匹目の名前はライン。
雷魔法と水魔法が適正といった、なんとも相性のよさそうな魔法の適性を持っている。
毛の色は大きくなって少し変わり、黒色が目立つ灰色のような色になっていた。
しかし、一本だけ小さい頃と変わらない白い線が入っている。
他の狼に比べて体は小さいが、すばしっこい。
まさにベンツに近い狼だ。
最後の五匹目はレイン。
その名に似合う水魔法に適性のある狼だ。
灰色で毛が長い。
レインはルインお婆ちゃんに教えてもらうのがいいだろう。
にしても……この子たちは俺たちと同じように、ほとんどが二つの適正魔法を持っている。
普通は一つらしいのだが……こんなにいるとは。
いやぁー若い子たちは優秀ですねぇ! うんうん!
まぁ……教えるのめっちゃ大変そうだけどね……。
だって知らないことだらけだもんな~。
俺より子供たちの方が良い魔法とか使いそうだら、俺はそれを真似させてもらおうかな!
全属性の特権だよね!
「わふわふ!」
「くぉー! くぉー!!」
『ああはいはい! よく頑張りましたねー! でもまだだ! 風刃を完璧にできるようになってから、適正魔法の特訓をしようね!』
「がふー!」
子供たちが褒めろ褒めろと俺に迫ってくる。
勿論褒めるが、本当に褒めるのはもう少し後だ。
『はい! 風刃!』
「「「「「がぅー!」」」」」
『ちょちょちょちょちょまって兄ちゃーーーーん!!!!』
的があるないでの練習では、その成長速度は全く違う。
ベンツなら子供たちの攻撃など当たらないだろうから、とりあえず的になってもらった。
これであれば偏差射撃の練習にもなるし、魔法の精度も上がる。
まさに一石二鳥の練習方法だ。
しかし、子供とは言えその風刃にはそれなりの威力がある。
初めて発動できた時でさえ、地面を削ったのだ。
当たれば怪我くらい普通にする。
『ベンツ頑張れー』
『ガンマこらぁ! 自分が標的でないからって!』
『いいかーシャロ。風刃を撃つときは少し前を狙うんだ』
「わふ!」
『教えんな!!』
ベンツは子供たちの放つ風刃を尽く避けていく。
子供たちはそれに躍起になっているようで、一生懸命ベンツに攻撃を当てようとしているようだ。
だが、連続で続けると魔力が枯渇してしまう。
子供なのでまだ魔力の生成が得意ではないのだ。
一定数攻撃を撃たせたら一度休憩。
それからまた攻撃をするといったサイクルで練習を積み重ねていく。
連続で風刃を放っているおかげか、威力も少しづつ上がるようになっていた。
これであれば、すぐに適正魔法の練習に移行できそうだ。
『よし! じゃあ風刃の練習は終了! 今度は適正魔法の練習に入るぞ!』
「わふ!」
という事で、今度は適正魔法の練習をするため、それぞれに合う先生を探しに行った。
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