第一章 転生
1.1.転生
気が付くと、真っ暗な空間が広がっていた。
無駄にはっきりと意識がある。
ここは……?
周囲を見渡そうとして見るが、上手い事首が持ち上がらない。
どうやら自分は今地べたにうつ伏せになっているようだ。
手に力を入れようとして見るが、これまた上手く動かすことが出来ない。
一体どういう事だろうか。
自分の身に何があったかを思い出そうと思考を巡らせてみるが……。
……あれ!? なんにも思い出せない!?
え、ちょっとまって?
俺は……確か家に帰って……それから……それ……から……。
家に帰えった所までは記憶がある。
だが、自分がどうしてこうなってしまったという、経緯は一切思い出すことが出来なかった。
あれ?
……俺の名前……なんだっけ……。
家族っていたっけ?
でも家はあったし……あれ?
頭に強い衝撃を与えてしまったのだろうか。
混乱していてよく整理することが出来ない。
よ、よし。こういうときは少し落ち着いて整理をするんだ。
ま、まず……俺は多分記憶喪失だ。
名前が思い出せないわけだから、これは間違いない……。
で、俺の親は多分いるとおもう。
……俺何歳だったけ。
いやっほう! 重症じゃねぇか!
でも、自分が記憶喪失だってわかってるから……まだいい方なのかな。
……んな訳ねぇだろ阿呆!
暗い空間の中で自問自答を続けていく。
そうしなければ、この空間に押しつぶされそうな感覚が近づいてくる気がする。
要するに、怖いからその怖さを紛らわしているのだ。
このような暗い空間に閉じ込められて、平常心を保てる人などいない。
どれだけ手を近づけても、全く見えない空間だ。
長時間この場所に閉じ込められていれば、気が狂ってしまいそうだった。
てか体動かしくいな!?
どうした俺の体!
大丈夫!? 俺の体大丈夫なの!?
急に自分の体が心配になり、体を細かくチェックしていく。
まず顔。
口は動かせるし、耳も動かせた。
鼻も問題なさそうで、息をすることが出来ている。
何か心地よい匂いがするが……。
しかし……目が開けれなかった。
もしかしたら目隠しか何かされているのかもしれない。
それに気が付くと、少し気が楽になった気がした。
どうやらどこかに閉じ込められているという事はなさそうだ。
落ち着きを取り戻したので、体をもう少し詳しく調べていく。
手。
開かねぇだと!!?
あ、足……足も!!?
でも辛うじて動かせ……いやこれ手が動いてるだけだわ。
ええええええええええ!?
待って待って待って!!
俺の体どうなってんのぉおおおお!?
ぺちっ、ぺちっ。
…………ぺち?
何か尻尾みたいなのが尻にくっついてる気がする。
え? しっ……ぽ?
意識して動かしてみると、それは安定こそしない物の、しっかりと振れる何かがあった。
そして思い出す。
何故耳が動いたのかと。
それに気が付き、動かしにくくて仕方がない腕を何とか持ち上げ、自分の頭に持ってくる。
すると、手が耳に触れた感触が伝わってきた。
耳はペタンと一度垂れ下がってから、またピンと伸びる。
その時に顔を触るのだが……異様に鼻が高いという事に気が付く。
手が顔に当たったためか、光が飛び込んでくる。
うわぁっ!
眩しくて反射的に目を閉じてしまう。
だが目が少し開いたことで、外が明るい空間であるという事が理解できた。
眩しさに慣れてきたところで、ゆっくりと目を開けて周囲を確認する。
目は片目しか開かなかったが、今はそれでも十分だ。
少しだけ開いた片目で前を見る。
……え?
目を向けた先には……大きな狼がいた。
色の真っ白な狼で、目は青色だ。
これは俗にいうアルビノの狼なのではないかと思うほどに美しく、優しい目つきでこちらを見ていた。
他の場所も見るために体を捻って方向を変える。
隣には、小さな子供の狼らしき動物が、二匹寝転がっていた。
どちらも色は黒に近い灰色だ。
まだ目が開いていない。
生まれて間もない子供なのだろう。
そこで、自分の体を見てみる。
見れる部分は非常に少ないが……手だけはしっかりと見ることが出来た。
そこにあったのは……隣で寝転がっている狼の子供と同じ形をした、手だ。
そして、自分の色は白色だった。
状況を速攻で飲み込んだ俺は、きゅーというかわいい声でそう叫んだ。
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