第19話
「夢見がち……」
「そう。ここに座ろうか」
公園に着いた俺たちは、池の見える位置にあるベンチに並んで腰を下ろした。
平日の公園は人影もまばらで、何だか寂しい。正面を向いたまま、彼女の父親が口を開いた。
「なんと言ったらいいのかな。そう、夢を見るならこんな夢がいい、と。例えば空を飛んだり、運動会で誰よりも早く走るところを想像したりしていなかったかな?」
「あ……」
覚えている限り俺は全く夢を見ないので、夢を見てみたかった。友達や家族から見た夢の話を聞いては、自分も見てみたいと思った。
そんなとき、いつも夢の話を自分で作って一人で楽しんでいた。
「そうですね。誰にも話したりはしなかったけど、結構そんなところはありました」
「何だか楽しそうだね」
少しも楽しそうではない顔で父親が言った。
「想像の中の君は、そのままの君だったのかな?」
「いえ。空想の中の俺は、実際とは全然違うんですよ」
「ほう……。どんな感じなのか聞かせてくれないか」
俺はこの人がなぜそんなことを聞くのかなど少しも疑わず、話し始めた。
「夢の中の俺は――本当は夢じゃないけど、その中の自分はこんな俺とは全く逆の人間で、何でもできるんです」
そう、夢――と呼んでいた――中で、俺は完璧な人間だった。
「こんな自分だったらよかったのにっていう理想のままの自分なんです。物静かで頭がよくて、おまけに顔まで俺とは違ってすっきりとした感じで。いつも冷静であまり笑わず――」
「ん? どうかしたのかね?」
玲の父親がゆっくりと聞いた。
「あ……いえ……」
俺が――作っていたのか?
最近の、本当の夢の中の俺……
「――冷静であまり笑わず、自分のことを僕と……」
俺――僕……なんだ、この感覚は
夢――僕……
俺――は……一体誰なんだ
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