第7話

 頭が混乱していて、夢と気付くまでしばらくかかった。

「夢……なのか」


 それにしても……

 昨日といい今日といい、何だってこんな不気味な夢を見るんだ

 おまけに俺は、悪役じゃないか


 しかし、それだけではなく今日の夢は何か気になる。

 同じように気持ち悪い夢だったが、昨日の夢とは違う何かが――。

「ふぅ……」

 台所へ行き、冷たい水で顔を洗う。

 何にしても夢だ。

 現実ではない。現実――

「あっ! 捜さなきゃ」

 今日から彼女を捜すため仕事を休んでいることを忘れて出勤しそうになる。このまま忘れて会社に行ってたら、また課長にため息つかれるところだった。

「さてと……でも、どこへ行ったらいいのやら」

 こんなことなら、昨夜考えておけばよかった。しかし、寝て起きたら何とかなるのではないかと思って寝てしまった。

「寝て起きて……夢、か」

 夢で見たのは、彼女の姉が川に浮かんでいた情景。

「行ってみるか」

 俺はまず、玲の姉の家に行くことにした。


 課長の話によると、玲の姉は実家のすぐ近くに住んでいるらしい。ここからはそう遠くないようだ。

 やるべきことが決まれば、行動は素早い。

 早速身支度を整え、出掛けることにした。

「ここか」

 国道から少し入った団地の一角に、比較的新しい家があった。

 俺は、インターホンを鳴らすのを少しだけためらった。

 玲の姉とは会ったことがない。

 それどころか昨夜、今から会う本人が死んだ夢を見てしまった。


 うつぶせで、顔見てないのがちょっと救いだよな……


 迷った挙句に、意を決してインターホンを鳴らす。

「はい」

 彼女とよく似た声が聞こえてきた。

「あ、えっと、玲さんの同僚の中川といいます。少しお話を――」

 すぐにカチャリと音がしてドアが開いた。

「中川さんね、いらっしゃい。なんでも玲を捜してくださるそうで、お世話になりますね」

「あ……えっ?」

「昨日、課長さんから連絡をいただいてたんですよ。さあ、中へどうぞ」

 さすがにあの人は抜け目がない。

「おじゃまします」

 挨拶をして靴を脱ぎ、綺麗に片付けられた家の和室へ通される。

 その様子を、階段の上から小さい女の子がじっと見つめていた。

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