第5話
定時まで仕事をして、帰りに彼女のアパートへ寄ってみた。
あまり部屋数の多くない、二階建てのアパート。二階の左端が彼女の部屋らしい。
階段を上がって部屋の前まで行き、ドアに手をかける。
当然、鍵がかかっている。
なんだろう……
なんだか嫌な感じがする。
言葉で言い表せないが、なんとなく不安になる。
もう一度ドアノブを握り、数回まわしてその場を離れた。
階段を下り、外から部屋を見上げる。きっちりと閉められたカーテン。
「あいつは几帳面だからな……」
几帳面――他に俺は、彼女の何を知っているのだろう。
考えてみたら同期というだけで、個人的な付き合いは何もない。
月に一回、会社の同僚やそれぞれの友達を連れて一緒に飲み会をするくらいだ。
彼女はとびきり美人ではないが、いつも笑顔で愛嬌があり気配りもさりげなくできる人で、飲みの席でもいつも人気者だった。
そして、とにかく仕事ができる。
頼まれた仕事はもちろん、そうでなくても進んでこなし、今では彼女にしか任せられない仕事もあるようだ。
「……俺とは大違いだな」
車に乗り込み、自分のアパートに帰る。
帰り道に買ったコンビニの弁当を食べながら考える。
明日から彼女を捜すことになる。しかし、どこをどうやって捜せばいいのか全く見当がつかない。
「まっ、いいか」
とりあえず寝よう
起きたら何か分かるかも……
起きたら何か分かる。そんなはずはないが、いつものように気楽に考えて眠った。そして、その夜も普段見ない夢を見た。
それは、玲の姉が川にうつぶせで浮いている夢だった。
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