第4話
「――ということで、よろしく頼んだよ」
「はっ?」
桜の木を見てボーっとしていた俺は、課長の声で我に返った。
「聞いてなかったのかね……まったく。みんなには、彼女は体調を崩して長期休暇を取ったことにしている」
無断欠勤してもクビにはならないのか。俺なら確実に二日でクビになる自信がある。
「それから、君は明日から九州へ出張ということになっている」
「出張? それなら捜せないじゃないですか。それとも彼女は九州に?」
「……はぁー」
課長は大きくため息をついた。
「彼女の行方が分かるまで、君には出勤せずに捜してもらいたい。君まで欠勤だとおかしなことになるから、出張ということにしておくんだよ」
「なるほど!」
「いいかね」
急に真顔になった課長が、俺の肩をつかんだ。
「必ず君自身で見つけだすんだ。途中つらいことがあるかもしれないが、決して逃げ出さないことだ」
「……はい」
なんだかよく分からなかったが、とりあえずうなずいた。
課長から彼女のアパートの住所と実家の地図を手渡された俺は、休みの準備をするため自分の席に戻ることにした。
「…………」
課長が窓の外を見て何か言ったが、俺には聞こえなかった。
「これで、いいんだな……玲」
窓から見える桜に向かって、彼はそうつぶやいていた。
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