不調の外科医
アリエッティ
メスは片手に
父からの虐待で顔の殆どが醜く潰れた。お金が余り無かったのと不気味な出で立ちで街の医者は意地悪く治療をしてくれなかった。治安は酷く、常に空気は汚かったから無理もない。
「外に出たら危険だけど仕方ない。」
別の街に行って、別の医者を探さないと。私は普通を求めてた。
「君、その顔..!」「……」
また大人がからかいにきたのか、そう思った。だけどその人は白衣を着ていて、瞳には鬼気迫る雰囲気があった。
「アナタ、お医者さん?」
「誰にやられたんだ。」「..父。」
大人の男は驚嘆していた。そりゃそうだ、こんな顔だ。驚くに決まってる。
だけど違う、醜いと蔑む訳じゃない。
「治してくれる?」
私はこれが希望なのだと悟った。
「直ぐに取り掛かる、病院に行こう」
「……!」
久々に広角が緩んだ。崩れた顔でしっかりと笑えた。
「それよりもっと面白い事しようぜ」
「なんだ君達は⁉︎」「人身売買..」
しかしその光は闇に閉ざされた。
「へっへ、まいど。」
私の身を必死に医者が守ってくれた。
だけど医者の利き腕が、私の代わりに持っていかれた。
「ごめんね...」謝ったって無駄。
「僕も君と同じだな。箇所が違うだけ、だけど君は必ず治す」
「どうやって?」
無理な話だ。片腕で、しかも利き手と逆では何も出来ない。
「知り合いにメカニックがいる。
彼に義手を造ってもらって、元の技術を取り戻すよ。」
「めちゃくちゃだね、私の顔みたい」
「それも..今だけだよ。」
希望の光は、消えずに隣で煌めいてた
「だといいけど。」
私の顔は、やっぱり広角を上げていた
不調の外科医 アリエッティ @56513
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